サイドメニューの充実ぶりが受けに受け大人気を誇っていた「くら寿司」ですが、5月の売上高・客数ともに大幅減と、その勢いに陰りが見えてきたようです。一体何が起きているのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、その原因を探っています。

くら寿司で客離れ。サイドメニューが飽きられた!?

くら寿司(運営:くらコーポレーション)に異変が起きています。5月の既存店売上高が前年同月比4.2%減と大幅な減収となりました。客単価が1.6%増となった一方、客数が5.7%減と大幅に減っています。

5月は前年同月と比べ降水量が多く天候に恵まれなかったほか、昨年のゴールデンウィークが5連休(5月3日〜7日)だったのに対し、今年は4連休(5月3日〜6日)と連休日数が1日短かったことが影響し客足が遠のいたという事情があります。しかし、これはどこの回転ずしチェーンや飲食店にも当てはまることであり、くら寿司だけの事象ではありません。好調だった回転ずしチェーンもあります。

スシロー(あきんどスシロー)の5月の既存店売上高は6.0%増と好調でした。客単価が2.4%増、客数が3.5%増となっています。苦戦が伝えられているかっぱ寿司(カッパ・クリエイト)も5月は好調で、既存店売上高は2.0%増となりました。客数が3.8%減ったものの、客単価が5.9%増と大きく上昇しました。かっぱ寿司の5月の客数はマイナスでしたが、17年4月〜18年3月の客数が7.8%減と大幅な減少だったことを考えると、減少幅は縮小しているといえます。

くら寿司が5月に苦戦したのはキャンペーンや商品の売り出しに力強さが見られなかったためです。

くら寿司は5月11日〜17日に「初夏の北海フェア」を開催し、「まるごとあわび」や「あぶり大とろサーモン」などのすしを販売したほか、11日からは魚の骨やアラなどを活用して作られた養殖魚用飼料で育てられた魚のすしを売り出しました。

ただ、「初夏の北海フェア」は期間が短く内容がややありきたりでインパクトに欠けた感が否めず、養殖魚用飼料で育てられた魚のすしの売り出しは画期的な取り組みで企業イメージの向上にはつながるものの、短期的な売り上げ増を狙えるようなものではないといえます。こうしたことから、5月は集客に苦戦したと考えられます。

一方、競合の大手回転ずしチェーンは5月に充実した施策を打ち出しています。

スシローは4月25日からゴールデンウィークに向けて、なくなり次第終了の肉すしを集めた「にく寿司フェア」を開催し、「熟成牛炙りサーロイン」や「熟成牛上カルビ」などのすしを販売しました。5月23日からは夏季限定で、トマトとバジルソースを載せた「生サーモン トマトバジル」や「生ハム トマトバジル」などのすしを売り出したほか、「ぶっかけカレーうどん」や「練乳かき氷パフェ」を販売しています。

ゼンショーホールディングス傘下のはま寿司は4月26日から「博多とんこつラーメン」を販売したほか、同日から5月9日まで「豪華!春のトクねた祭り」を開催し、「中とろ」や「赤貝」などのすしを売り出しました。また、10日からは「特選とろ祭り」を実施し、「びんちょう鮪大とろ」や「炙り虹ずわい」などのすしを販売したほか、24日からは「生本ずわいと初夏の特上撰」を開催し、「生本ずわいがに」や「特盛り!炙りとろサーモン」などのすしを売り出しています。

かっぱ寿司は4月27日から「かっぱのハンバーグ」を販売したほか、5月9日からは「白いスープカレーラーメン」を売り出しました。また、同日から期間限定で「国産生サーモンと極上ネタ祭り」を開催し、「国産 生サーモン」などのすしを販売したほか、27日までは「天然 本鮪中とろ」などのすしを販売し、28日からは「極上生うに」などのすしを売り出しています。

スシローとはま寿司、かっぱ寿司の5月の施策は充実していたといえるでしょう。そのため、集客に成功したと考えられます。

くら寿司は5月の客数が5.7%減となり集客に失敗しました。これが一時的なものであればいいのですが、そうではない可能性もあります。17年11月〜18年4月の客数が前年同期比で2.3%減っているためです。また、16年11月〜17年10月は1.6%減となっています。客離れが止まらない状況にあります。

一方、スシローは客足が回復しています。16年10月〜17年9月の客数が1.3%減と苦戦したものの、17年10月〜18年3月は前年同期とほぼ同じとなり、4月は0.2%増、5月が3.5%増となっています。

かっぱ寿司は客離れに歯止めがかかりつつあります。先述したとおり17年4月〜18年3月の客数が7.8%減と大幅な減少だった一方、3月が3.0%減にとどまったほか、4月が5.6%減、5月が3.8%減となっており、マイナスが続いているものの、最近の減少幅は縮小しています。

スシローとかっぱ寿司は客数が回復傾向にあるのに対し、くら寿司が客数の面で苦戦しているのはなぜなのでしょうか。様々な要因が考えられますが、くら寿司のサイドメニューの優位性が低下したことが大きく影響していると考えられます。

かつて、サイドメニューの充実度においてくら寿司は他を圧倒していました。12年ごろからサイドメニューを強化しており、12年にラーメンを販売したほか、13年には天丼とうな丼を、14年には豚丼、15年にはカレーライス、16年にはカレーうどんや牛丼を売り出しています。

サイドメニューではくら寿司が独走していましたが、次第に競合が追随するようになりました。

スシローは14年4月からラーメンを販売するなどサイドメニューの強化に舵をきりました。14年4月発売の「出汁入り鶏がら醤油ラーメン」は発売1カ月で100万食以上を売り上げたといいます。最近では、17年11月にスイーツ強化の取り組みとして「スシローカフェ部」を発足し、若い女性らの取り込みを図っています。

はま寿司は13年2月からラーメンを売り出しました。はま寿司はサイドメニューでは特にラーメンに注力しており、次々と新ラーメンを投入しています。はま寿司のラーメンは人気を博しており、たとえば、15年8月から販売した「旨だし鶏塩ラーメン」は15年に100万食以上、16年は160万食以上を約2カ月間で売り上げるほどの大ヒットメニューとなっています。

かっぱ寿司もラーメンやうどんなどのサイドメニューを販売しています。ただ、かっぱ寿司のサイドメニューの充実度はそれほどでもなく、充実化はこれからとなりそうです。先述したとおり4月に「カッパのハンバーグ」を販売したほか、5月に「白いスープカレーラーメン」を売り出すなど、サイドメニューの充実化を図っています。5月の既存店売上高がプラスだったのは、これらのサイドメニューが大きく貢献したといえそうです。

このように各回転ずしチェーンがサイドメニューを充実させていったため、くら寿司のサイドメニューの優位性が相対的に低下し、集客に苦戦するようになったと考えられます。

くら寿司を運営するくらコーポレーションの業績は悪くはありません。6月6日に発表した18年10月期第2四半期決算は、売上高が前年比8.5%増の652億円、営業利益が21.7%増の37億円と増収増益でした。しかし、既存店客数の落ち込みが懸念材料で、楽観できる状況ではありません。新機軸を打ち出せるかが問われそうです。

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