「AKB48時代も、女優の夢を忘れたことはない」北原里英、初主演舞台までの道のり

2008年にAKB48でデビューし、中心メンバーとして48グループの人気を支えてきた北原里英。今年の春、10年のアイドル人生にピリオドを打ち、卒業後、最初の大仕事として取り組むのが舞台『「新・幕末純情伝」FAKE NEWS』となる。つかこうへい作品という看板を背負っての初主演舞台。どれほどのプレッシャーと戦っているのだろうか。6月初旬、舞台の稽古場を訪ねた。

撮影/アライテツヤ 取材・文/江尻亜由子
スタイリング/有本祐輔(7回の裏) ヘアメイク/大西麻理子(A and ON Atelier)

衣装協力/ニットワンピース \23,000(トミー ヒルフィガー/ピーヴィーエイチジャパン tel. 0120-266-416)、イヤカフ \28,000(シリシリ tel. 03-6821-7771)、ブレスレット \17,000(ラティア/MASTARD Inc. tel. 03-6455-3546)、リング \16,000(オーロラグラン 表参道 ショップ tel. 03-6432-9761)、その他スタイリスト私物

AKB48に合格したのは偶然だけど、“正解”だった

4月18日の卒業公演からおよそ2ヶ月。現在の心境はいかがですか?
もう2ヶ月というか、まだ2ヶ月というか……自分の気持ちとしては、すっかりひとりに慣れている感じ。目の前のことに集中しているからか、グループにいたことを忘れかけているくらいです(笑)。
切り替えが早い!(笑)
そう、早いんです私。自分では、順応性が高いと前向きに捉えているんですけど。その場にいたら、そこにいるのが当たり前になっちゃいます。
でも先日、秋元康先生の還暦のお祝いがあって。そこで卒業してから初めて、たくさんのAKB48のメンバーに会ったんです。卒業生も多かったんですけど。そのときに改めて「あぁ、自分はAKB48のメンバーだったんだな」と実感しました。でも、もう踊れないなって(笑)。
えっ!? 振りは覚えているけれど、ということですか?
振りもほとんど覚えていないです(笑)。忘れるのが、とても早いんです……。AKB48にいるときから、1コ前のシングルの振りとかは、終わったらすぐに忘れちゃうタイプでした。
今は殺陣を覚えている最中ですしね。稽古が始まって数日、というところでの記者会見で披露されていた殺陣の姿が決まっていたので、覚えが早いんだなと。
覚えるのは得意なんですけど、忘れるのも早いです(笑)。すっと入って、すっと抜けていく。
北原さんは、もともと女優になるためにいろいろなオーディションを受ける中で、合格したのがAKB48だったと伺いました。それが国民的アイドルとして人気が出て、在籍中は「自分の人生、どうなっちゃうんだろう……」と戸惑ったりしませんでしたか?
2008年の加入当時はちょうど、こんなに大きなグループになるとは思っていなかったです。やりたいことも他にあったから、自分が10年もいるとは思わなかったですね。当時のAKB48は、メンバーそれぞれの次の夢へのステップとして存在している、という定義だったというか。
後輩たちと自分とでは、そこがすごく違うと思ったとお話されてますよね。
違うと思います。私が入った頃は、歌手や女優になりたい子が入るグループだったので、今みたいに「AKB48になりたい」っていう子が入ってくるグループになるとは思わなかったですね。
北原さんご自身は、女優の夢はいったん忘れて、アイドルとしての仕事をまっとうしようという気持ちだったんでしょうか?
女優の夢を忘れたことはありません。AKB48にいたらいろんなことが経験できるから、すべてを経験値にしようという気持ちでずっとやっていました。そしてバラエティ番組やラジオにも挑戦させていただいて、「私ってしゃべることが好きなんだ」、「ラジオって楽しい!」と自分自身を知ることができました。それって、普通に芝居しかやっていなかったら、気づけなかったことだと思うんです。
だから、AKB48に合格したのは偶然だったけど、正解だったんだなと思っています。

いつか自分も……テレビの世界に憧れていた子ども時代

そもそも、北原さんが女優になりたいと思ったのは、どういう理由からですか?
テレビっ子だったので、テレビの世界に憧れがあって。当時、モーニング娘。さんが人気だったので、最初に浮かんだのは歌手だったんですけど。でも、小5くらいからカラオケに行き出してすぐに、歌が下手だっていうことに気づきました(笑)。
そんなことは(笑)。
歌手は無理だって思ったんです。それで、私は自分のことを可愛いと思わないでずっと生きてきたので、それでもなれる職業……って考えたときに、女優さんだと子どもながらに思いました。当時の私は、とにかく演技力さえあれば女優になれるに違いない、と思っていたんですね。
お芝居に興味はあったんですか?
中学生のときは、すごく明るくて……今も明るいんですけど(笑)。友だちとふざけて、ドラマのワンシーンを再現したり、芸人さんのネタの完コピをやって遊ぶのが好きだったんです。当時、『不信のとき〜ウーマン・ウォーズ〜』(フジテレビ系)という米倉涼子さんのドラマにすごくハマっていたんです。
中学生にして大人向けのドラマにハマっていたんですか(笑)。
ミホっていう友だちと、そのドラマの再現をして、他の子に見せたりするのが好きだったんです。「こんなに楽しいんだから、これを職業にできたら最高だな」って(笑)。本気になっちゃったんですよね、ドラマの再現ごっこに。
AKB48としての活動中も、ドラマや映画に出演されてきましたが、自ら「芝居をやりたい!」と秋元さんに伝えていたんですか?
秋元先生に直接伝えたことはないんですけど、生誕祭など自分の夢を語る場面で「女優になりたくてAKB48に入っています」とは言っていました。
本格的に芝居を始めたのは、太田プロダクションに移籍してからです。きっと秋元先生も、私が女優になりたいことを知っていたから、同じグループ内で女優として活動しているメンバーがいるという理由で、太田プロを勧めてくださったんだと思います。
初めてのドラマ出演は、『マジすか学園』(テレビ東京系)ですか?
たぶん『マジすか』が初めてだったと思います。そのときは“チームホルモン”という名前のグループの一員を演じたんですけど、そのグループを演じたAKB48メンバーの5人がほぼ同期で仲がよくて。
チームホルモンは、指原莉乃さん、仁藤萌乃さん、高城亜樹さん、小森美果さんと北原さん、というメンバーで。
はい。それで、クランクアップのときに、わけもわからずみんなで泣いたんですよ(笑)。それがすごく思い出に残っています。最初の経験が楽しかったから、やっぱり芝居をやりたいって思えたんだと思います。

低迷していた時期に舞い込んだ、園子温監督との初仕事

「AKB48卒業後も、私は女優としてやっていける!」と自信になった作品はありますか?
自信とは少し違うかもしれませんが、絶対に女優としてやっていきたいと思ったのは、(2015年の)『みんな!エスパーだよ!番外編〜エスパー、都へ行く〜』(テレビ東京)という、園子温監督の人気ドラマシリーズに出演したときです。
そのお話をいただいた時期は、選抜に入れていなかったですし、総選挙でも上位にランクインできませんでした。芝居の現場も久しぶりですし、個人での仕事も久しぶりでしたね(笑)。
卒業という言葉も頭をかすめていて……。女優の夢も諦めて、結婚して、幸せになれればいいや、と考えていた時期もあります(笑)。
そんなときに突然、大きな仕事が入ってきた。
本当に嬉しかったです。しかも私、園子温監督が大好きで、一番お仕事をご一緒したい監督さんだったんです。監督の作品は過激だから、まさか卒業前に出演できるとも思っていなかったんですけどね(笑)。
憧れの監督の前でお芝居をするわけですよね。緊張したり怖いと思ったりしませんでした?
ものすごく緊張しましたし、怖かったんですけど、それよりも監督の世界観が好きで楽しい、という気持ちのほうが大きくて。
監督は女の子の撮影にとことんこだわって、男組のほうを撮り忘れる、みたいな感じでした(笑)。「さぁこのアングルで、よしっ、撮り終えたな!」と監督が言って、「まだ俺たちのほう、撮ってません!」って染谷(将太)くんたちが言う、みたいなやり取りをずっとやっていました(笑)。
楽しそうな現場ですね。
エンディングの撮影で、みんなで踊ったんですけど、一緒にダンスをしたことでキャストのみなさんとの距離が一気に縮まって。その後、休憩に入ったときに、現場が学校だったので、みんなで机を班みたいにくっつけて、給食みたいな感じでご飯を食べたんです。そのときに、自分が一番幸せを感じるのはこういう瞬間なんだなと感じました。
撮影は4〜5日だったんですけど、一流の役者さんたちと一緒に、憧れてる監督の現場でお仕事していることが、もう楽しすぎました! この撮影がクランクアップしたときに、こういう現場で芝居だけできていればそれで満足!って思いました(笑)。
そこから卒業に向けて動き始めたんですか?
そうはなりませんでした(笑)。私はポジティブなきっかけで卒業したいと思っていたので、「大好きな園子温監督をきっかけに卒業できるなんて最高だ、今しかない!!」とも思っていたんですが、そのタイミングでNGT48への移籍のお話をいただいたんです。その状況でNGT48に行くか卒業するか選択するのはとても難しかったですが、NGT48に行く決心をしました。
そこで卒業はせず新潟に行って、AKB48の在籍期間がトータルで10年間になった。
そうなんです。だから正直、芝居の経験や技術は同年代の女優さんに比べて劣っていると思います。でもその代わり、ほかの女優さんがやっていない経験をしてきた。東京ドームやレコード大賞のステージに立ったこと。それは、自分にしかない武器だと思ってます。

初の主演舞台。話を聞いた瞬間は、不安しかなかった

舞台『新・幕末純情伝』は、日本近代演劇の一時代を築いた劇作家、故・つかこうへい代表作のひとつ。1989年の初演以来、熱い支持を受け、幾度となく再上演されてきた。「新撰組の沖田総司は女だった」という大胆な設定で、広末涼子や石原さとみなど、そうそうたる主演女優を迎えてきた本作。つか作品ならではの重層的な意味を演じる技量、膨大なセリフ量、殺陣など、演じる側に求められるハードルの高さには定評がある。
舞台『新・幕末純情伝』のオファーが来たときは、どう思いましたか?
「そういえばあと3ヶ月くらいで卒業するけど、卒業後ってどうなるんだろう」と思い始めていたときに、マネージャーさんからこの話をされて。初めて卒業を実感したのが、このオファーでした。
お話を聞いただけで、緊張しませんでした?
もちろんしました! こんなに大きいタイトルでいきなり初座長なので。うれしい気持ちはもちろんありましたけど、それよりも不安のほうが大きかった。でも、やらないという選択肢はありませんでした。
つかさんの作品については、どんな印象ですか?
つかさんご自身が演出された舞台は観たことがなくて、あまり詳しくは知りませんでした。もちろんお名前は存じ上げていましたし、一昨年、松井玲奈ちゃんが出演していたことも知ってたんですけど。
でもちょうど、このオファーをいただいたときに、元AKB48の木崎ゆりあちゃんが(つかこうへい作品の)『熱海殺人事件』の舞台稽古をやっていたんです。なので、すぐに相談しました!(笑)
どういうアドバイスをもらいました?
ゆりあがそのとき言ってたのは、セリフがストレートな意味ではなくて、そのセリフの中に込められた意味が違うものだったりするから難しい、と。それで、私は「この子は何を言ってるんだろう?」と思ったんですよ(笑)。
たしかに(笑)。
ですけど、実際に稽古が始まって、つい2日前くらいに(プロデューサーの)岡村(俊一)さんに同じことを言われたんです。「ひとつのセリフの中に、2つくらい気持ちが入ってるんだよ。本当はそう思っていないのに、言葉では別のことを言っているセリフがあったり。……ってことを表現していかなきゃいけない」と。やっと、ゆりあの言葉の意味がわかりましたね。
セリフの難しさもありながら、本作は殺陣を含めたアクションシーンも見どころですね。
まだまだ全然できてないんですけど、すっごく楽しいです。やっぱり沖田総司なので、強いんですよ。決まるとすごく気持ちいいですね(笑)。連続で殺陣を行うシーンもあるので、一連の動きを覚えられた快感も得られます。
過酷だなと思ったりは?
難しいとは思います。姿勢が全然ダメだったりとか、足が全然開かなかったりとか。1コ気をつけると、その前に注意されたことができなくなったりもします。しかもセリフを言いながらなので、全部に注意を払うのがすごく大変なんです。でも楽しいです!

AKB48を卒業してから、センター願望が出てきました(笑)

坂本龍馬役の味方良介さん(1歳下)、土方歳三役の小松準弥さん(2歳下)、桂小五郎役の田中涼星さん(3歳下)など、同世代のイケメン俳優に囲まれての現場ですよね。女性だらけだった環境から激変したと思うんですけど。
座長として、みんなとコミュニケーションをとらなきゃと思うんですけど、何を話していいかわからない……。「いい天気ですね」みたいな感じです(笑)。
えーっ(笑)。
しかもその3名はみんな年下だから、余計に何を話したらいいかわからなくて。私、今26歳なんですけど、AKB48ではほぼ最年長だったので、自分をオバちゃんだと思ってるんですよ。こんなオバちゃんと若いイケメンたちはしゃべってくれないだろう……と思ってしまいます(笑)。
記者会見では、みなさんに「はらちゃん」と呼ばれそうになって抵抗しているとのことでしたが(笑)。
もう、完全に定着してます(笑)。すごく抵抗してるんですけどね。
今回は、全共演者と関係があるという設定だったり、キスシーンや胸をわしづかみにされるシーンなどもありますが、不安はないですか?
もともと抵抗はないです。『エスパー』のときも、映画『サニー/32』でも。だから、不安は全然ないです。
アイドル時代からそういうシーンを引き受けていらっしゃいますが、アイドルはそういうことをやらなくていいのでは、という考え方もありますよね。
AKB48の中で、自分に個性がないことに悩んでいたので、他の人がやらないことを、という気持ちはありました。『テラスハウス』(フジテレビ系)に出演したことが、たぶん一番のきっかけだと思うんですけど。でも、テラスハウスに住むことになって、そこで離れていってしまったファンの方もいるんじゃないかな……(笑)。
同じ屋根の下、男女が共同で暮らす恋愛バラエティでしたから……。
それをきっかけに、いい意味で気にしなくなったんです。ドラマ『家族ゲーム』(フジテレビ系)や『AKBラブナイト 恋工場』(テレビ朝日系)でも、キスシーンを演じました(笑)。ドラマの設定がそうであれば当たり前ではあるのですが、アイドルとしてそういうことにチャレンジしていくということが、私の中では個性と呼べるもののひとつだったような気はします。
そうなんですね。でも今はAKB48関係なく、女優・北原里英としての活動ですよね。
今は、前ほど「人と違うことをやりたい」という気持ちはなくなりました。過激なシーンも自ら進んでやりたいと思うわけではないですが、舞台の上でやるのは平気ですね。でもドラマや映画と違って、何回もやることになるからなぁ……(笑)。
以前、北原さんは「脇役として主役を支えていくような女優になりたい」とおっしゃっていましたが、今回はそうそうたる女優さんたちが演じてきた、大タイトルの主演ですよね。そこにプレッシャーを感じたりしますか?
AKB48に入る前からなぜかずっと、主演ではなく助演に憧れがあったんですが、NGT48のキャプテンをやって、映画『サニー/32』の主演を経て、だいぶその気持ちが変わってきました。先頭に立ったり、真ん中に立つことを経験してみたら、それはそれですごい責任感と達成感があるんだなと知ってしまったので(笑)。
では今は、堂々と主役を受けて立つぞと。
そうですね。AKB48グループを卒業してから、ようやくセンター願望が出てきました(笑)。
北原里英(きたはら・りえ)
1991年6月24日生まれ。愛知県出身。A型。2007年に5期生としてAKB48に加入。10thシングル『大声ダイヤモンド』で初めて選抜メンバー入りを果たし、2012年から2013年まではSKE48を兼任。2015年からNGT48に移籍してキャプテンを務め、2018年4月に卒業した。女優としては、2010年『マジすか学園』でドラマデビュー、2012年公開の映画『グラッフリーター刀牙』で映画デビュー。以降も話題作に出演。2018年2月には主演映画『サニー/32』が公開された。

出演作品

舞台「新・幕末純情伝」FAKE NEWS
2018年7月7日(土)〜7月30日(月)@紀伊国屋ホール
作:つかこうへい
演出:河毛俊作
出演:沖田総司役:北原里英、坂本龍馬役:味方良介、土方歳三役:小松準弥、桂小五郎役:田中涼星、新撰組隊士二宮役:増子敦貴、岡田以蔵役:松村龍之介、勝海舟役:細貝 圭
久保田創 大石敦士 須藤公一 山田良明 榛葉恵太 大西けんけん 岡元次郎 佐藤賢一

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、北原里英さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年7月6日(金)12:00〜7月12日(木)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/7月13日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから7月13日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき7月17日(火)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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