来年稼働予定のフィリピン工場の新棟(イメージ)

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 ロームは2022年3月期までに300億円超を投じ、トランジスタやダイオードの生産能力を30%程度増やす。後工程を担うフィリピン工場に新棟を建設するほか、国内外の生産設備を更新する。自動車の電装化が進む中、制御回路などに使う1ワット以下の電力を扱う小信号半導体のトランジスタやダイオードの需要が拡大しており、対応を急ぐ。20年代前半までに同半導体の売上高を現状と比べ約50%増の1000億円に引き上げる。

 フィリピン工場の新棟は4階建てで、延べ床面積は3万2000平方メートル。約50億円を投資する。抵抗器やトランジスタなどを仕上げる後工程ラインを導入し、19年に稼働する予定。一方、半導体ウエハーに回路を形成するといった前工程を担当する国内4拠点と、後工程の海外5拠点は順次、新規ラインの導入や既存設備を更新する。

 車載向けは高い品質が求められることから、品質管理を徹底するため設備にセンサーを備え付け、生産情報を収集。自動化も進め、安定して大量生産できるようにする。3年後には小信号半導体を生産する最新設備の導入率を、現状の約22%から43%程度に高める。

 車載向けやIoT(モノのインターネット)化が進む産業機器向けは、大電力を扱うパワー半導体とともに、制御回路に使う小信号半導体の需要が高まっている。競合他社が小信号半導体の生産を縮小したこともあり、ロームへの置き換えも進む。同社は小信号半導体の世界シェア首位。現在は約17%を占めるが、早期に30%を目指す。