東京に“ネブミ男”と呼ばれる男がいる。

女性を見る目が厳しく、値踏みすることに長けた“ネブミ男”。

ハイスペックゆえに値踏みしすぎて婚期を逃したネブミ男・龍平は、恋愛相談の相手としてはもってこい。

相手を値踏みするのは女だけではない。男だって当然、女を値踏みしているのだ。

そこで値踏みのプロ・龍平に、男の値踏みポイントを解説してもらおう。

これまでに、姫気質な「ワタシ姫」や、自称サバサバ系の鯖女子、クネ・クネ子やホームへ呼子などを見てきた。

今週、彼の元にやってきたのは...?




『龍平さん、今週土曜は空いてませんか?食事会があるんですが、たまには顔出して下さいよ!』

後輩のマコトからそんな連絡が来たのは、木曜のことだった。

周囲の友人が続々と結婚して羽ばたいていったせいもあり、食事会の誘いは日々減っていく。

そこに加えて食事会に行くこと自体が年々面倒になってきていることもあり、“こうして出会いは無くなっていくんだなぁ”なんて考えていた時の誘いだった。

いつもなら断っていただろう。

しかし、ちょうど今週末は何も予定がなく、見たかったAmazon Primeのドラマをイッキ見するくらいしか予定がない。

-まぁ、たまには出会いがある場に行ってみるか...

そうして重い腰を上げて挑んだ食事会だった。

しかし、そこには龍平がネブミせずにはいられない女性がいたのだ。


呼べばいつでも飛んでくる?食事会によくいる女


「女性陣の皆様!龍平さんが食事会に来るのは、レアですからね〜。出会いに非積極的で、自分の殻にすぐ閉じこもってしまうので」

後輩のマコトから、褒められているのかけなされているのかよく分からない紹介を受け、龍平は愛想笑いを浮かべる。

「それに比べて、女性陣のフットワークの軽さ!菜穂美ちゃんなんて、今日連絡して、今日来てくれたんですよ!」

-当日連絡で食事会に参加してくれるのか!?

「そんなそんな。暇だったので。むしろお誘いありがとうございます!」

明るい菜穂美を見ながら、龍平は何かが引っかかった。

「フットワーク、軽いんだね...見習いたいよ」

素直に感心して菜穂美を褒めると、彼女は満面の笑顔になった。

「私は普通です。龍平さんが、フットワーク重すぎなんですよ」

何も反論できず、龍平は『えびす坂 鳥幸』の個室から見える綺麗な夜景を眺めながら、静かに皆の話の聞き役に徹する。

「菜穂美ちゃんは明るくて、いてくれると場が盛り上がるよね〜」

マコトの言う通り、彼女がいるとパッと場が華やぐ。

しかし、さっきから龍平は喉に何かがひっかかっているような、妙な違和感を覚えずにはいられないのだ。

「そんなことないですよ〜。マコトさんの方こそ優しいし気がきくし、モテますよね。さすがって感じです♡」

二人の会話を聞きながら龍平は、レーズンなどであえられた「白レバームース」を一人でゆっくり味わう。

-ふむ。大人数での食事会よりも、やっぱり美味しい食事をゆっくりと味わう方が好きだなぁ...




そんなことを考えながら皆の会話を聞いている時だった。龍平は、ふと思い出したのだ。

「あれ!?僕さ、どこかで菜穂美ちゃんと会ったことある…?」

「やっと思い出しましたか?そうですよ〜。3年ほど前、食事会でご一緒させて頂きました!」

ニコニコと笑う菜穂美を見て、龍平はようやく思い出した。

「そうだ!あの時に会っているんだ!」

当時よく遊んでいた、派手なスタートアップ系経営者たちの集いに呼ばれたパーティーか何かで、龍平は菜穂美に会っていたのだ。

しかも、その時も菜穂美は途中から飛び入りで参加し、皆を盛り上げていた記憶がある。

-そうか、あの派手な集団と繋がっているのか...

龍平自身、一時期よく遊んでいた仲間ではあるが、遊び方の違いとノリについていけず、最近は会っていない。

そして菜穂美のこの行動にこそ、彼女が結婚できない理由が隠されていたのだ。


24時間365日出動可能。食事会に必ずいる女


いつでもどこでも現れる、“ぬらりひょん”登場!


交友関係が華やかなのは結構だが、あまりにも華やか過ぎるのは嫌なもの。そして、男ならこう思うに違いない。

-あの社長たちを知っているということは、人脈も華やかだし、派手な遊びも散々経験済みなんだろうなぁ...

遊ぶ相手ならば良いが、彼女や妻になる人には派手な遊び人は求めていない。

そしてもう一つ。菜穂美が結婚したいならば、決定的に改善した方が良い点がある。




「そう言えば、来週金曜に赤坂の先輩の家でホムパがあるんだけど...」
「行きます!参加します!」

「あと今月末、先輩経営者の高橋さんの誕生日会があっ...」
「行きます!可愛い子連れて参加します!」

マコトの会話が終わらないうちから、菜穂美は身を乗り出して参加の意思を示してきた。

彼女が結婚できない理由。

それはフットワークが軽すぎて、神出鬼没すぎるところにある。

呼ばれればどんな会にも参加し、ひょっこり顔を出す、まさに“ぬらりひょん”。

その出没率は相当高く、毎回の食事会や派手な経営者系の集いに、振り向けば奴はいる。

フットワークが軽く、人付き合いが良いことは素晴らしいことである。しかしその一方で、本当に結婚したいならば腰を据えて落ち着くことも大事なのではないだろうか。

あまりにも派手な人達と繋がっているのは、自信がない男からすると物怖じしてしまうし、フットワークが軽すぎるのも心配になる。

「なんで?男の人の知り合いが多すぎて嫌ってことですか?それって、自分に自信がないからですか?」

それもあるかもしれない。しかし、東京は広そうに見えて実は狭い。

必ず、どこかで誰かが繋がっている。だからこそ、このように顔が広すぎる女性は時としてマイナスな印象を与えかねない。

“あぁ、またあの子ね”と言われ、本当は違うのに軽い女性だと見られかねないからだ。

「菜穂美ちゃんが良い子なのは話したら分かるんだけど、参加率は5割くらいでいいんじゃない?」

「でも、どこにチャンスと出会いが転がっているのか分からないじゃないですか!東京は、日々素敵な出会いで溢れているんですよ!!」

菜穂美の力説に、龍平は何も言えずにいた。



外へ出ると、梅雨明けの夏の夜の蒸し暑さに体が包まれる。

-1人でも多くの女性が、幸せになってくれれば良いんだけどなぁ...

恵比寿に溢れる幸せそうなカップルを横目に、ふっと微笑みながら、龍平は独りで帰路についた。

ネブミ男。

一見、女性を上から目線でジャッジしているように見える。しかし心の奥では女性たちの幸せを願っている、優しい男なのかもしれない。

そしてきっとまた今夜も東京のどこかで、ネブミ男・龍平は結婚できぬ女性へのアドバイスを兼ねたネブミを続けているのだろう・・・

Fin.