小柄な容姿はどこか頼りなさげにも見えるのに、ドラマや舞台で、思わず注視してしまうほどの大きな存在感を放つ、女優の趣里さん。ピュアさとミステリアスな雰囲気とが同居する“旬な女優”の素顔とは。

ドラマ『ブラックペアン』で、二宮和也さん演じる主人公・渡海をサポートするオペ看(手術室看護師)の猫田を演じていた趣里さん。ドラマの無愛想でクールなキャラクターの印象が強いけれど、素顔のご本人は、朗らかによく笑い、どこか素朴さも感じさせる可愛らしい人。

――猫田のイメージが強かっただけに、お会いして驚きました。

趣里:よく言われます(笑)。『リバース』というドラマで、狂気的な妻の役をやった時には、ヤバい人だと思われていたりもして…。

――それだけ、演技に違和感がないということです。猫田役も、かなり反響があったのでは?

趣里:医療指導に来てくださっていたオペ看の方に、「猫田がいいねって言われて嬉しかった」とおっしゃっていただけたのは、とくに励みになりました。猫田は原作でもちょっと風変わりな人として描かれているんですが、ドラマではよりシャープな役にしたんです。ただ、それは自分だけのアイデアではなくて、第1話の福澤(克雄)監督に導いてもらったり、周りの共演者の方々のお芝居に反応するうちに出来上がった役柄です。

――次に控えているのは、NYのアイルランド演劇祭で複数の賞を受賞して話題であり、問題作ともいわれる舞台『マクガワン・トリロジー』です。演出は、いま演劇界で注目を集めている小川絵梨子さん。趣里さんは、小川さんの舞台に出てみたかったとか。

趣里:絵梨子さんの舞台を拝見すると、登場人物たちの気持ちに寄り添いながらも、ちゃんとエンターテインメントになっているんです。演劇をやるならば、一度はご一緒させていただきたいと思っていた演出家の方です。絵梨子さんはNYで演劇を学ばれていますが、私が最初に通った塩屋俊さんの「アクターズクリニック」という演劇の学校も海外の演技メソッドを取り入れていたので、どんな稽古場なのかも興味がありました。

――実際に稽古が始まって、いかがですか?

趣里:いまは、一緒に役をのんびりゆっくり探っていきましょうとおっしゃってくださっています。この人が、なぜこう動いたのか、なぜこんな言葉を発したのか…そういう部分をちゃんと見てくださっているんだなと感じます。

――そもそも、以前から演劇には興味を持たれていたんですか。

趣里:バレリーナを目指して海外留学していた16歳の頃、夏休みか何かで帰国した時に、岩松了さんの『シェイクスピア・ソナタ』という舞台にハマって6回も観に行ったんです。その後、ケガをしてバレエを断念せざるを得なくなって、これからどうやって生きていこうって悩んでいた時に、その時のことを思い出したんです。

――岩松作品というと、ストーリーに明確な起承転結がなく、登場人物も単純なキャラクターではありませんよね。どこが当時の趣里さんに響いたんでしょう?

趣里:ひと言では説明できないようないろいろな気持ちが、岩松さんのセリフではすごく詩的に書かれていて美しいなぁと思いました。バレエは、セリフをしゃべらないぶん、観ていて想像を掻き立てられるところがあるんですが、岩松さんの作品もそうなんです。観終わった後に、考える余韻を残してくれるのが好きです。

――アクターズクリニックに入られたのはどんな経緯で?

趣里:芝居に興味を持ち始めた時に勧められて受けた演技レッスンが全然馴染めなかったんです。やはり私には無理だったのかなって思っていた時に、勧められたのがそこでした。当時の私は、いまよりもコンプレックスを抱えていたんですが、塩屋さんが「自分のままでやればいいんだよ」と言ってくださって、楽になったし、芝居が面白くなって、もっと学びたいと思うようになりました。

――コンプレックス…とは?

趣里:自分という人間が何者なのか、わからなくなっていた時期があったんです。それまではバレエがあって、そこに向かっていけばよかったけれど、ケガをしてやめなきゃいけなくなった時に、自分には何にもないなって思いました。当時のことは、正直、あまり覚えていないくらいです。でもそこから、いままで接してこなかったようなたくさんの人と出会って、予備校に通って、大学受験して、だんだん日常を取り戻していった時、やはり自分は表現することが好きなんだなって思ったんです。

――そしていま、築き上げてきたキャリアが評価されてきています。

趣里:そう言ってくださるのは嬉しいですけれど、自分としてはまだまだです。私は、性格的に自分は自分だからって強く思えないタイプなんです。こう見えてよく悩むし、ビビリだし…。ただ、頑張ろうっていう気持ちはあって、いっつも揺れています。でも最近は、そんな自分でもいいのかなって思えるようになってきました。誰にでも悩みはありますし、私はそういう方々に少しでも寄り添えるような人になれたらなと思っています。

――人に寄り添おうとする姿勢は、役作りにも表れている気がします。どんな癖のある役も、ステレオタイプにせずに、心の襞を掬い取ろうとされているように見えて…。

趣里:そうありたいですよね。塩屋さんの学校のレッスンで、シーンに描かれている前に、その人は何をしていたのか、その直後に何をするのかを感じ取る、というようなことをやっていましたから、その経験が生かされているのかもしれないですね。なおかつ、役を自分に引き寄せて考えたり、重ね合わせたりする作業が好きなんです。

――演じている時は、役に入り込んでしまうタイプですか?

趣里:そんなことはないと思います。ただ、少し前に撮っていた『生きてるだけで、愛。』という映画で、精神的に不安定な女の子を演じていたんですが、どうも監督は私のことを本当にそういう子だと思っていたみたいです。これからプロモーションが始まるので、その誤解を少しずつ取り払っていかないと、と思っているんです。

――ちなみに、趣里さん自身は、自分はどんな人だと思います?

趣里:いろいろな面がありすぎて…。いまでもたまに、自分の気持ちに振り回されたり、知らない感情が芽生えてくることがあって、驚くことがあります。27歳になって、少しは落ち着いてきましたけれど、まだまだ気持ちは忙しいですね。

――どうしようもない感情に振り回されている時は、誰かに吐き出したりするんですか。

趣里:家族や友達、親しい人には言うことはあります。ただ、基本的にはあまり出さないタイプです。(マネージャーさんから「周りに気を使って、感情を自分の中に収めちゃうことが多いんです」とのこと)…そうかもしれません。

――あまりイメージにないんですが、女子会とか、されます?

趣里:まったく無縁と言っていいくらいです。たまに仲良くなったヘアメイクさんと話が盛り上がって、「今度女子会しましょう」って言っちゃうんですけれど、後になって、見栄を張ってしまったと反省するんです。“女子会”って口にしてみたいだけなんです。

――パンケーキとか、かき氷とか、食べに行こう、みたいなことも?

趣里:どちらも好きなんですけれど、ひとりで行っちゃうんです。回転寿司も焼き肉も。ディズニーランドも…たぶんひとりで行けちゃう。仲がいい友達も少ないです。

――これまで、癖のある役が多いですけれど、キラキラした恋愛ドラマや映画に出てみたいというような願望はありますか?

趣里:いわゆる壁ドンとかです…よね。以前、昼ドラで私が三宅健さんにやったこととか、妄想シーンのなかでならやったことがあるんですが…。これまでやった役がどれもこじらせすぎていて、まったく想像ができないです。しっとりした大人の恋愛を描いた作品には挑戦してみたいという気持ちはあるんですけれど。思春期の甘酸っぱい恋愛は…(King & Princeが表紙のアンアンを見ながら)こういう方々がやってこそ…ですよね。そろそろ、子持ちの役が来ておかしくない年齢ですし。

――これまで憧れた男性の方とかいらっしゃいますか?

趣里:(しばらく考えていると、マネージャーさんから「織田信成さんじゃない?」との助言)…そう! 体を動かしていたのでスポーツ選手が好きだったんです。とくにフィギュアが好きで、織田さんの演技の膝の柔らかさが好きでした。中学生の頃だったか、夢に織田さんが出てきたんですが、夢で…付き合ってたんです(笑)。周りからは大爆笑されましたけど。

――では、月並みですが、好きな男性のタイプなんて…?

趣里:あまりされたことのない質問で、逆にちょっと嬉しい。でも最近、だんだんわからなくなってきちゃってます。ただ、裏方の方々が必死に走り回っている姿にはトキメキます。出演する『マクガワン・トリロジー』じゃないですが、この世の中、やっぱり笑いって必要ですよね。主人公・マクガワンの人生は、辛いけれどちょっと笑えたりもする。どんなに辛いことがあっても、それをユーモアに変えられる人は素敵だなと思います。

しゅり 1990年9月21日生まれ。東京都出身。2011年デビュー。‘16年のNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で注目を集め、‘17年に出演したドラマ『リバース』、先日最終回を迎えたばかりの『ブラックペアン』への出演が話題に。主演映画『生きてるだけで、愛。』は秋に公開予定。

ブラウス¥43,000 スカート¥25,000(共にカオス/カオス表参道店 TEL:03・6432・9277) シューズ¥75,000(トリッカーズ/バーニッシュ TEL:03・3468・0152) イヤリング¥18,500(ラナスワンズ/ススプレス TEL:03・6821・739) パールリング¥12,000 シルバーリング¥27,000(共にエテ TEL:0120・10・6616)

※『anan』2018年7月4日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・中井綾子(crepe) ヘア&メイク・鈴木節子(資生堂トップヘア&メーキャップアーティスト) インタビュー、文・望月リサ