スリリングな展開の終了間際、イランにPKが与えられた。セドリク(21番)の手には確かにボールが触れているが……。(C)Getty Images

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 壮絶な1-1ドローに終わったポルトガルvsイラン戦は、なんと後半だけで3度に渡ってVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が採用される異例の事態となった。
 
 まず1回目は、ポルトガルの1点リードで迎えた50分。クリスチアーノ・ロナウドがエリア内で倒されたがプレーは続行され、しばらく経ってからパラグアイのエンリケ・カセレス主審がVARで協議。差し戻しで、ポルトガルにPKが与えられた。しかしC・ロナウドのショットは、イラン代表の守護神アリレザ・ベイランバンドに阻止されている。
 
 2回目は、またしてもC・ロナウドに関わるプレー。今度はポルトガル代表のエースが相手選手にエルボーを見舞ったか否かで、ジャッジが下された。提示されたのはレッドではなくイエローカード止まり。ファウルだが肘は使っていなかったという判断だ。

 
 そして最大の物議を醸したのが、アディショナルタイムの一件。ポルトガル・ゴール前でイラン代表FWサルダル・アズモンとポルトガル代表DFセドリク・ソアレスがエアバトルを展開し、前者がヘディングで落とした球が後者の手に当たってしまう。PKとするにはかなり微妙なシーンだったが、カセレス主審はイランにゴーサインを出し、ポルトガル側は猛抗議。スタジアム全体が騒然とするなか、スコアは1-1の振り出しに戻ったのだ。
 
 試合はこのまま終了。イランは悲願の決勝トーナメント進出に一歩及ばず、ポルトガルはグループ2位ですり抜けた。
 
 英紙『The Telegraph』は「過去最低のVARジャッジだ」と銘打ち、「ロナウドは明らかに退場であったし、最後のPKは妥当なジャッジではなかった」と指摘。そのうえで「VARを導入してもこのような誤った判断がなされるなら、なんら効果的とは言えないだろう。無駄に試合の時間を止め、両ベンチをヒートアップさせ、スタジアムに不穏な空気を漂わせたのだ」と断じた。
 
 なにかと話題を呼んでいるVAR。その議論に一石を投じるゲームとなった。