22日、レフェリーのピッチ上での存在意義が問われる場面があった。

ブラジルvsコスタリカの79分、ドリブルでペナルティエリアに侵入したブラジルのネイマールが切り返すと、コスタリカのDFジャンカルロ・ゴンサレスはバランスを崩す。ゴンサレスはネイマールの腹に手を伸ばし、何とか妨害しようとした。その動きに一瞬ネイマールは次の動作が遅れ、そのまま手を上げるとアピールするかのように後ろに倒れた。

オランダ人のビヨン・カイパーズ主審は一度はPKを宣告する。ところがVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)からの連絡を受け映像を確認。その後、PKを取り消したのだった。

この場面で問題なのは、カイパーズ主審のポジションだった。カイパーズ主審は、ネイマールとゴンサレスがしっかりと見られる位置を取り、ふたりのプレーを確認して笛を吹いていた。それなのに間違った判定を下してしまうのなら、ピッチ上にレフェリーがいる必要がなくなってしまう。

この点について国際審判員の経験者に話を聞くと、「主審はDFがシャツを掴んでいるとの思い込みで吹いてしまったのだろう。だからVARが主審にフィールドオンレビューを勧めたのだと思われる」ということだった。

確かにVARの役割としてレフェリーの誤った判断を防ぐという機能があり、その役割は果たされた。だが、それなら全部VARに判断させたらいいのではないかという考えが出てきてもおかしくない。

この大会では主審のジャッジがVARによって否定されることで、信頼感が揺らいでいる。その後ネイマールに出された警告は、レフェリーへの不信感がなければ生まれなかったのだ。

【森雅史/日本蹴球合同会社】