「鯛らーめん」(1,000円)。黄金スープには上品な鯛の旨味が溶け出している。ほどよく鯛油が効き、コクもしっかり。さわやかなユズ皮がアクセントに

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2018年4月10日、東京・銀座にオープンした「麺屋 ま石」。近年、銀座はラーメン店が急増して激戦区になっているが、この店は他のラーメン店とは一線を画している。なぜなら手掛けているのが日本橋の高級寿司店「日本橋 ま石」。銀座の立地にふさわしい、ワンランク上の上質のラーメンを提案する。

【写真を見る】1つの寸胴で水12Lに対し、6kgの真鯛のアラと中骨を使用。それを長時間かけて、黄金色になるまでじっくりと煮出している

■ スープに用いるのは高級魚の真鯛。素材に自信があるからこそのシンプルな一杯に

「『寿司屋が作るラーメン』を考えた時、やはりこれしかないと思いました」と店主の松橋辰矢さん。“これ”とは近年ブームとなっている鯛だ。

スープに用いるのは真鯛のアラと中骨。真鯛は高級寿司店や料亭が扱うのと同じ愛媛産で、毎日築地から仕入れている。そしてそのポテンシャルを最大限に引き出すための下処理も抜かりはない。

まずは水洗いして血抜きをし、塩水に漬け込む。その後に干すことで、鯛の旨味を閉じ込めている。そして仕上げに香ばしくオーブンで焼き上げ、下処理が完了。これを水のみで弱火でじっくりと炊き上げ、仕上げに利尻昆布を加えてさらにもう数時間炊いてようやく完成する。

スープに自信があるからこそ、味付けはいたってシンプル。石垣島、高知、淡路島の3種の天日塩のみを合わせている。ひと口飲むと、鯛の上品な風味が広がり、のどを通ったあともその余韻がしばらく離れない。そして気づくともうひと口、ふた口と飲みたくなる、あと引く味わいだ。

【ラーメンデータ】<麺>細/角/ストレート <スープ>タレ:塩 仕上油:鯛油 種類:魚介(鮮魚)

■ 決して鯛スープの邪魔をしない。それでいてキラリと光る麺と具にも注目

麺は細ストレートで、北海道産の高級小麦「きたほなみ」100%で作っている。歯切れがよく、モチっとした弾力が特徴。卵や着色料を一切使用していないので、「きたほなみ」本来のほんのりと甘い風味が堪能できる。

そして具は水郷赤鶏の鶏ハム、国産メンマ、三つ葉のみといたってシンプル。鯛の風味を損なわないよう、鶏ハム・極太メンマとも味付けは控えめに。それでいて鶏ハムはしっとり、極太メンマはコリッとそれぞれ食感がよく、麺とスープの箸休めの役割を担っている。

高級寿司店が“本気”で作った鯛ラーメン。その上品で奥深い一杯を銀座の路地裏で味わってみてはどうだろう。(東京ウォーカー・取材・文=河合哲治郎/撮影=岩堀和彦)