新宿西署のベテラン刑事“モーさん”こと牛尾正直(うしお・まさなお)が、森村誠一氏の原作に登場して今年で30周年――。テレビ朝日では、“牛尾刑事30周年記念作”の第2弾として、『森村誠一ミステリースペシャル ガラスの密室』を6月24日(日)に放送する。

 同作品では『終着駅シリーズ』史上初めて、タブレットやスマートフォンなど現代社会に欠かせないアイテムがストーリーに濃密に絡んで描かれている。約22年に渡って牛尾刑事を演じ続けてきた片岡鶴太郎が、その衝撃を明かした。

 『ガラスの密室』は、公園で銀座の高級クラブのボーイの刺殺死体が発見されたところからはじまるミステリー。捜査をはじめた牛尾刑事は、被害者の交際相手が住むアパートでも、8カ月前に殺人事件が起きていたことを知る。

 殺されたボーイの口座に大金が入っていたことから、「彼は8カ月前の殺人事件の真犯人を恐喝していたのではないか」と直感した牛尾。2つの事件をつなぐ”糸”を執念で探っていくうち、なんと真犯人を告発する動画がネット上で公開されたり、岡江久美子演じる牛尾の妻・澄枝がスマホデビューを果たしたりと、さまざまな場面で現代を象徴するアイテムが登場する。

 牛尾は靴底をすり減らして捜査に当たる昔ながらの刑事だけに、片岡も「彼がタブレットを手に取るなんてシリーズ史上初!」と、驚いたことを告白。「『終着駅シリーズ』はこれだけ本数を積み重ねてきても毎回新鮮さを感じますが、今回は澄枝さんもスマホを持ったり、動画サイトが事件に絡んできたりと、特に“時代性”を感じました。でも牛尾刑事が使っているのは、あくまでガラケーです。やはり、彼にはガラケーが似合いますよね(笑)」と語っている。

 また、同作では八ヶ岳ロケも敢行。「ロケ中は素晴らしい天気で、八ヶ岳は空気がおいしくて、ヨガをやっても気持ちよかった!」と撮影秘話を明かした。

■日本映画界の重鎮・池広一夫監督からの“無茶ぶり”とは?

 同作では現代の人間関係を浮き彫りにするものとして、スマホなどデジタルアイテムが描かれるが、時代を反映するものを取り入れながらも、牛尾の“足で稼ぐ”捜査の姿勢は変わらない。

 もちろん、シリーズを通して一貫して見つめてきた“人間ドラマ”も然り。そして、“変わらない”といえば、シリーズ第1作から演出を手掛けてきた巨匠・池広一夫監督(88歳)が、同作でもメガホンを取っている。池広監督は昭和の大スター・市川雷蔵主演『眠狂四郎』シリーズや、海外でもファンの多い“怪優”勝新太郎主演の『座頭市』シリーズなどで知られる、邦画界の重鎮だ。

 片岡は「最初、監督から“寡黙な刑事でいくから”と言われたのですが、台本を読んでみたらものすごいセリフ量。“これのいったいどこが寡黙なんですか?”と聞いたら、“これだけセリフがあっても、寡黙に見えるように芝居をしてくれ”と無茶なことを言われました(笑)」と、監督との出会いを振り返る。また、「台本には“カット割り”が詳細に書きこんであって、衣装合わせの段階で監督のアタマにはその台本がすべて入っているんです。本当にスゴイ!」と、88歳にしてなお作品に情熱を注ぐ池広監督の姿勢に敬服している。

 さらに、最新作でも『終着駅シリーズ』に欠かせない牛尾家での夫婦のシーンは健在。「元来、岡江さんも私も明るい性格ですから、牛尾家のあのしっとりしたムードは、普段の我々とは違う“湿度”で演じています」と、片岡も長年築き上げてきたコンビネーションに自信をのぞかせた。

 常に新たな進化を遂げながらも、“人間”を見つめ続け、決してブレることのない魅力を放つ『終着駅シリーズ』。最新作『ガラスの密室』の放送をお楽しみに。


■主演・片岡鶴太郎コメント


――このシリーズで長くタッグを組まれてきた名匠・池広一夫監督のエピソードを教えてください。

 僕が牛尾刑事を演じることになったとき、監督から「寡黙な刑事でいくから」と言われました。セリフが少ないのかと思っていて、台本を読んでみたらものすごいセリフ量! 「これのいったいどこが寡黙なんですか?」と聞いたら、「これだけセリフがあっても、寡黙に見えるように芝居をしてくれ」と無茶なことを言われました(笑)。22年前のことですが、今でもよく覚えています。

 そして、監督の台本が、これまたスゴイんですよ! 台本には“カット割り”が詳細に書きこんであって、衣装合わせの段階で監督のアタマにはその台本がすべて入っているんです。「このシーンの小道具はこれで、このシーンの衣装はこれで…」と完璧に把握しているから、本当にスゴイ! それだけこの作品に情熱を傾けていただいているということで大変ありがたいですし、すでにプランができあがっているため、現場でも迷わないので演じる我々もノーストレスです。

――長く夫婦役を演じてきた岡江久美子さんのエピソードは?

 元来、岡江さんも私も明るい性格ですから、牛尾家のあのしっとりしたムードは、普段の我々とは違う“湿度”で演じています。岡江さんはとても明るいから“晴れ女”のように思えるかもしれませんが、実はものすごい“雨女”なんですよ。いつだったか、ロケ3日間すべて雨が降り、岡江さんが帰られたとたんに晴れたんです(笑)。それ以来、澄枝さんは基本、牛尾家のセットでの撮影になったんです。まあ、それはジョークですが(笑)、本当に岡江さんは雨雲と一緒にやって来る、という印象ですね。

――最新作『ガラスの密室』では八ヶ岳でロケをされたそうですが、訪れた感想は?

 八ヶ岳は最高の天気でした。梅雨の時期だというのに素晴らしい天気で、空気がおいしくてヨガをやっても気持ちよかったですね。田んぼや畦道があって、久々におたまじゃくしと糸トンボを見ました!

――最新作ではスマホやタブレットなどが登場しますが、『ガラスの密室』のみどころは?

 『終着駅シリーズ』はこれだけ本数を積み重ねてきても毎回、新鮮さを感じるのですが、牛尾がタブレットを手に取るなんてシリーズ史上初! さらに、今回は澄枝さんもスマホを持ったり、動画サイトが事件に絡んできたりと、特に“時代性”を感じました。でも、牛尾刑事が使っているのはガラケーです。やはり、彼にはガラケーが似合いますよね(笑)。僕自身はスマホを使っていますが、あまり詳しくない(笑)。牛尾がいつかどんなタイミングでスマホになるのか、それもまた楽しみですね(笑)。

 本作には多彩な登場人物が出てきますので、犯人は誰かという推理も楽しみなのですが、このシリーズのテーマは、やはり“人間”。登場人物の過去や生い立ちが折り重なって事件へとつながっていく、その人間ドラマがいちばんの魅力だと思います。今回はそこにタブレットやスマホ、インターネットなど現代的なものが絡んできますので、『終着駅シリーズ』のまた新たな一面を感じていただければうれしいですね。