<妻や愛娘からも詰められたトランプ。大統領令は出したけど、現在少なくとも2342人いる収容中の子供たちをどうやって親元に戻すかは決まっていない>

6月20日、アメリカに不法入国した親子を引き離して拘束する措置を中止し、今後は一緒に収容すると方針転換したドナルド・トランプ米大統領。昨年の10月から徐々に始まっていた親子の隔離だったが、今年の5月頃に突如として正式な書類を持たずに入国した大人を全員刑事訴追する「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)」政策を加速させていた。

ザ・スター誌によると、大統領令に署名したトランプは「家族を一緒にするための措置」と説明し、国内外からの批判に対応した格好だが、すでに離れた家族はどうなるのかなど、具体的な対応は明らかになっていない。

今後の課題は多いが、トランプがゼロ・トレランスを一部緩和したことを多くのメディアが報じている。アメリカで連日トップニュース扱いだったこの話題。諸外国や著名人、さらにはトランプの身内からさえも異例とも言える発言が出るなど、多くのバッシングを受けていた。

クルーニー夫妻

20日に不法移民の子供の権利保護に取り組む団体に寄付を表明したことが明らかになった、俳優ジョージ・クルーニーと人権派弁護士のアマル・クルーニー夫妻。2人の間には昨年双子が誕生しており、子供を持つ親の立場からゼロ・トレランス政策を批判している。

「将来自分たちの子供に『自分の国(アメリカ)が親と子を引き離して収容所に入れたって本当なの?』と聞かれたら、答えは『イエス』。子供たちからは何もしなかったのかと聞かれるだろう」と、夫妻はピープル誌に語った。

夫妻は「私たちはトランプ政権の方針を変えることはできないけれど、犠牲者を守ることはできる」と考えており、2016年に設立した「正義のためのクルーニー基金」を通じ、不法移民の児童の権利保護活動に取り組む団体に10万ドル(約1100万円)を寄付すると表明した。

ローラ・ブッシュ

元ファーストレディのローラ・ブッシュはワシントン・ポストに寄稿したなかで、ゼロ・トレランス政策は「残酷で非人道的」と指摘。さらに、移民が押し込められている施設について、第二次大戦下で日系アメリカ人が強制収容されていたものを連想させると、批判する立場を明確にした。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部