行きたくない飲み会、どうやって断ればいいか? (写真:Fast&Slow / PIXTA)

社会人になって、まず痛感するのは、プライベートの時間がめっきり少なくなったことだろう。働いている時間はもちろん、遊んでいる時も、飲んでいる時も「寝坊したらどうしよう」「明日中に仕事が終わるかな?」といった具合に、いつも頭の片隅に会社や仕事のことがひっかかる。


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だからこそ、学生時代の友人と会ったり、デートをしたり、家族と過ごしたり、勉強したり、一人でゆっくりのんびりできるプライベートな時間がより大切に感じられるわけだ。

そんなプライベートの時間に食い込んでくるのが、上司や先輩、取引先からの飲みの誘い。すでに約束がある時、あまり気が進まない時、どのように断ればいいのだろうか。今回は、新入社員のために、「上手に飲み会のお誘いを断る方法」をまとめた。

飲み会に優先順位をつける

貴重な時間とおカネを使って参加する飲み会や宴席。できれば参加したくないと考える人は少なくない。しかし「100杯のお茶より1杯の酒」といわれるように、飲み会には、それなりのメリットもある。そこで、まずは、「出席すべき会」と「それ以外の会」に分けて考えてみよう。

「歓送迎会、忘年会、新年会、総決起集会など、ほぼ全員が出席する行事的な要素が強い宴席は、よほどの事情がない限り、参加できるよう調整しましょう」と話すのは、人材派遣・紹介サービスや教育事業を手掛けるキャプランの教育・研修部門、Jプレゼンスアカデミー事業部の伊東絹子チーフインストラクターだ。

いいかえれば、行事的な飲み会にきっちり参加しておけば、そのほかの飲み会は、適度に断っても失礼にはあたらない。時代の空気も、行きたくなければ誘いを断ってもいいという雰囲気に変わってきた。子育てや介護に忙しい社員の増加も、そうした傾向に拍車をかけている。

「だからといってやみくもに断るのではなく、宴席の場に出ることのメリットを考えてみましょう。たとえば、別の部署の先輩や普段は口をきく機会の少ない上司などが参加していれば、新しいチャンスが広がるかもしれません。新たな出会いや可能性を考える。誘いをお断りするのはそれからでも遅くはありません」(伊東氏)

それでは、どうやって断ればいいのだろうか。

「断り方が分からない」「断ることは失礼かもしれない」「断ったら上司や先輩の印象が悪くなるかもしれない」……。そうした理由で、いやいやながら出席する人も少なくない。それは自分にとっても相手にとってもよくないことだ。そうした人は、まず、「断ることは決して悪いことではない」という認識に改めるとよい。

断り方には「方程式」がある。この形をしっかり覚えれば、スムーズに断れるようになる。それは(1)声をかけてくれたことへの謝意、(2)参加できない理由、(3)お詫びの言葉、だ。

(1)まずは、「お声をかけてくださってありがとうございます」「お誘いくださってありがとうございます」と言って、誘ってくれたことに対する感謝の気持ちを伝える。

(2)次は参加できない理由だ。ポイントは相手が納得できる理由を言うこと。「先約がある」「体調がすぐれない」「用事がある」「資格取得のための勉強をしている」などが典型だろう。

(3)そして最後が、「残念ですが」「大変申し訳ありませんが」「心苦しいのですが」といった相手に対するお詫びの言葉で結ぶ。これが、断り方の方程式で、メールのときでも、口頭のときでもどちらでも使える。

お誘いへの謝意を入れ、理由を述べて断る

難しいのが「断る理由」だ。

もちろん先約がある場合は、「先約がある」と、そのまま伝えればいい。「約束を守ることは、ビジネスの基本。先約を優先させるのは、その人の信頼性にもつながります」(伊東氏)。たとえば取引先の場合。先約の内容までは言わなくてもいいが、可能であれば、「この頃なら空いている」というように、次回につながる一言を加えておいた方がいい。

「家庭の事情」をあげるのも悪くない。家庭を大事にしてこそいい仕事ができるといった考え方が広がっているからだ。たとえば「その日は両親とレストランでご飯を食べる予約している」、当日の誘いなら「今日は家でご飯の用意がある」といったように、家庭を絡めた理由であれば、誰でも納得しやすい。

一方、こんな断り方をする若手への評価は芳しくないようだ。

「『会場どこですか? あっ、そこ昨日行ったからやめときます』『女子の参加者はいないんですか? 女子がいる時に誘ってください』。気持ちが良いほど、自分都合でびっくりした」(運輸業勤務・43歳)

「飲もうと誘ったら携帯が鳴ったふり。『あっ。すいません、ちょうど取引先に今からいくことに』……とミエミエの芝居をされて不愉快」(メーカー・49歳)。

「『すいません。今からお通夜なので』。こんな古典的な手を使う人がいまだにいたのか?」(金融・52歳)

「とくにだめなのはウソ。ばれれば信頼を失うし、ウソを重ねているうちに、仕事でもウソをつくことが平気になる。また、まじめな人ならウソをつき続けることがストレスになり体調を崩すこともある」と話すのは、中堅中小IT系企業の顧問や相談役などを兼任するコンサルタントの岡田圭一氏。

勉強や習い事を理由に断る

確かに、ウソの用事を作って断るのは手法としては簡単だが、何度も使っていると「またウソをついて断っている」と見透かされてしまう。また、今の時代、ウソをついて別の仲間と会ったりしていれば、SNSを通じてばれることもある。そうなれば致命的だ。

ウソをつくなと言われても、避けたい飲み会は沢山ある。たとえば、「毎日、飲む相手を探している暇な先輩とのサシ」「二次会、三次会、ラーメン、サウナ……。フルコースを楽しまないと気が済まないとばかりに連れ回す先輩や上司とのお付き合い」「悪口や愚痴を肴にした飲み会」……。

「誘われそうな雰囲気を察知したら、外出するか、トイレに隠れてる」(営業・38歳)。こんな手しかないのだろうか。

「僕は『今日はちょっとやることがあるんですよね』と断ることが多いですね。実際は部屋の片付けだったり、買い物だったり、犬の散歩だったりするのですが、用事の内容まで詮索する人はまずいないので、ウソをつかずにすんでいます」(出版・43歳)。具体的な用事をあえて伝えないというのは一つの手だろう。

「私の場合は、サラリーマン時代から名刺交換をした方を対象にメルマガを発行し続けてきたので、『メルマガ原稿が間に合わないので今日は失礼させていただく』といった方法をとっていますが、コンサルタント仲間の多くは『資格取得試験の勉強』という言い訳を使っていますね」(岡田氏)

メルマガや資格取得に限らず、音楽、スポーツ、勉強会の運営、ボランティアをはじめ、何か打ち込むものをつくっておけば、いざという時の言い訳に使えるし、ウソにもならない。頻度が低ければ、「架空の用事」で断ることもできるが、何度も断るのであれば、こうした習い事や自己啓発を理由にして、断った方がいいだろう。

せっかく楽しい気分で飲み会に行ったのに、帰りずらくなり困るケースもある。典型は、「もう一軒行こうよ!」。酒が入るにつれて、しつこくなる先輩や上司などだ。

「こんな場合は『今日は、ご一緒させていただきありがとうございました。明日の仕事に備えたいので、失礼いたします』と仕事を理由にお断りするのがスマートでしょう」(伊東氏)

「新人だから、適当でいいよ」などといわれれば、「新人で、何もできないからこそ準備したいんです」と、翌日がお休みの場合や、「若いんだから、もっと飲まなくちゃ」などといわれれば、「実はあまり飲めないんですよ。お酒に不調法ですいません」などと、前述した方程式にあてはめ、生真面目に断れば大半の人は解放してくれるはずだ。

しつこい誘いは断るのもOK

もちろん、いつも飲み会をパスすれば角がたつ。

「行事的な飲み会がない月は、最低でも1回は飲みの誘いに応じると決めている」(旅行・35歳)。さらに、「無意味な飲み会になりそうな時は、役立つ情報をもっているような人を誘う。そうすれば、少なくとも自分にとっては有意義な飲み会に変わるのでおすすめです」(岡田氏)というアドバイスもある。

時間を区切って参加するのもひとつの方法です。ただし『何時までだったら参加できるんですけど』は上から目線になるので、『何時まででしたら、ぜひ参加させていただきたい』といった言い方がいいでしょう」(伊東氏)

もっとも理想的なのは、「あの人は、飲み会はあまり好きではない」「あの人は二次会に参加しない」といったイメージを定着させることだ。

逆に、いい顔をして最後までついていけば、「あいつは、付き合いが良い」との共通認識が広まり、いろんな人から誘われるようになる。人脈を広げたい人は、それでいいが、飲み会を避けたい人はたまらない。飲まないキャラクターづくりをするなら、この数カ月が勝負だ。