水曜日のカンパネラの新作は『ガラパゴス』と名付けられたEP。これは独自の生態系を持つガラパゴス諸島のことではなく、「日本の環境や文化を表すのに、いちばん適した言葉」として命名したそう。いままでの彼らの作品群にはあまりないスローテンポの美しいナンバーからはじまり、ここから広がるであろう新しい世界に、身を委ねながら聴きたくなるアルバムだ。

聴いている間、自分が人間であることやいろんなことを忘れてほしい。

すべての楽曲を手掛けるケンモチヒデフミさん曰く、「このアルバムでは、いままでと違うことにチャレンジしたかったんですね。チルアウト、スピリチュアル、オーガニックをテーマにテンポを落としたサウンドになりました」とのこと。

一方、コムアイさんは「私はいままでの中でいちばん踊れるアルバムだと思います。もちろん今もテクノやドラムンベースのようにビートが立っているものも好きですが、ちょっとツボをついて踊らせることができないかな、って。最近よくケンモチさんと、太鼓と歌だけで演奏される《gwoka》という南米の音楽を聴いていたんですが、シンプルでプリミティブなサウンドなのに、すごく気持ちいいグルーヴを感じるんです。リズムではなく、ループで踊るみたいな音楽にいますごく興味があって。そんなグルーヴをこのアルバムで感じてもらえたらいいな」

アルバム全体のトーンはゆったりとしていて、コムアイさんのボーカルはひたすらに美しい。ビートに乗って踊るのではなく、音楽の心地よさに心と体がふわふわと浮遊するような、そんな不思議なアルバムだ。

歌詞面もかなりユニークな作品が並ぶ。複数の女性たちを愛したピカソを題材にした曲「ピカソ」は、「歌っていて私の言葉なんじゃないかと思った」とコムアイさん。というのも、制作当時、3人の男性と同時に交際していたそうで…。

「人生でできる実験は、すべてやろうと思っていて。そのころ心のゆとりもあって、3人とも超大好きで、誰も削りたくないから、訳を話して同時に並行恋愛する、ということをやっていました。でも相手も同じ状況じゃないと成り立たないということがわかってやめました。そんなことは全然知らずにケンモチさんは曲を作っているんですけど、この曲は歌っていて歌詞がしっくりきました。カンパネラはそういう《同期》がけっこうよく起こりますね」

彼女自身が作詞し、作曲に参加した叙情的なラブソング「キイロのうた」のモチーフは、愛する人と離れなければならなかった体験から生まれた歌。ただし、単なる失恋の歌で終わるのではなく、別れてしまってもいつかふたりは惑星の軌道に乗ってどこかで再会できるだろう、というメッセージがこめられ、心打たれるナンバーになっている。

「曲を聴いてくれたとき、感想がどうとかより、自分自身のことを思い出してくれたらうれしい。これをあの人に言っておこうとか、自分の人生はもっとこうしたほうがいいなとか感じてほしい。あとは、自分が人間であることとか、いろんなことを忘れてほしいですね」

EP『ガラパゴス』CD¥2,500 アナログ盤¥3,500 コムアイさんが猫役で出演する映画『猫は抱くもの』劇中歌「キイロのうた」など全8曲収録。(WARNER MUSIC JAPAN)

すいようびのかんぱねら 主演・歌唱担当のコムアイと、作曲・編曲担当のケンモチヒデフミ、それ以外担当のDir.Fからなる音楽ユニット。一昨年EP『UMA』でメジャーデビュー。6月30日、7月1日に河口湖ステラシアター野外音楽堂でライブを行う。

※『anan』2018年6月27日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・北條尚子

(by anan編集部)