トランプ大統領の野望は「北朝鮮の海辺に最高級コンドミニアム」

写真拡大

「やはり」というか「さすが」というべきか、トランプ大統領は根っからの不動産王であることが、改めて明らかになった。

 世界が固唾を飲んで見守った初の米朝首脳会談での一幕。金正恩委員長との合意書への署名を終えて、ホッとしたのであろうか。記者の耳に聞こえるように、わざとらしくつぶやいた。

「おい、みんな、知ってるか。北朝鮮には素晴らしい海岸線が広がっているぜ。俺だったら、世界最高級のコンドミニアムを建てるな。あんな綺麗な場所で戦争のための演習をやらかすなんてバカげた話さ。中国や韓国、それにロシアからも近いから、富裕層の連中をしっかり呼び込める。俺に任せて欲しいね」

 自称「世界一の不動産王」の面目躍如といったところであろう。確かに、トランプ大統領の目の付けどころは鋭い。なぜなら、経済発展は遅れているが、そのぶん、未開発の自然の景観が至るところに残っているからだ。

 実は、金正恩委員長も去る5月、日本海に面した元山(ウォンサン)の海岸線を活かしたリゾート開発計画を指示したばかり。曰く「わが国は世界に誇れるリゾート大国を目指す。世界中から観光客が押し寄せるだろう。その数は500万人から1000万人になる」。

 どうやら、2人きりの首脳会談では、この不動産事業の話で大いに盛り上がったようだ。なにしろ、元山は金委員長の生まれ故郷と言われている。しかも、祖父である金日成がソ連の力を借りて日本軍を追い出した最初の激戦区でもある。

 そのせいか、金委員長の力の入れ方は半端ない。160ページに及ぶ英語の「元山開発特区計画書」を準備。その目玉が「広大なゴルフコースと温泉リゾート建設」だ。2015年には新たな空港も完成させており、まさにトランプ一家のビジネスを呼び込むにはうってつけだ。

 トランプ大統領は会談後「Very, very good !」と繰り返した。朝鮮半島の非核化や米韓合同軍事演習の中止も、これからの不動産開発のためには欠かせない条件整備に違いない。

 トランプ大統領も金委員長も「観光ビジネスは国連の経済制裁の対象にはなっていない」ことを明確に意識しているようだ。

 大統領就任で、自分の不動産会社から一切手を引くと述べてきたトランプ氏。だが、自分のファミリーメンバーが中国を筆頭にアジア、アフリカ、ロシア、中南米など世界各地で不動産開発に邁進していても、一向に気にする様子はない。

 そんなトランプ一家が新たに見出した「宝の山」が北朝鮮というわけだ。人権問題はどこ吹く風といったトランプ流ディールに、金正恩委員長も笑みが絶えない米朝首脳会談であった。(国際政治経済学者・浜田和幸)