電車内での居眠りも場合によっては迷惑です(写真:Ushico / PIXTA)

最近、東海道新幹線車内で、豚まんやたこ焼きを食べることに対して、そのにおいの強烈さゆえに迷惑だとの意見をめぐって賛否両論が戦わされたとの話をあちこちで耳にした。一部の鉄道会社は、駅構内で販売されている食品のパッケージに、「車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います」という注意書きシールを張っているという。

それなら、駅構内で売れないようにすればいいのにとも思うのだが、なかなか一筋縄ではいかない問題である。

今回は、こうした列車や電車の車内で、残念だと指摘されている行為を取り上げ、その可否について、考察してみたい。ただし、さまざまな意見があると思われるので、あくまで個人的な感想である。

「おいしそう」が迷惑にも

1)食材のにおい


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強烈なにおいの食材がやり玉に挙げられているものの、駅構内の売店のみならず新幹線などの車内販売で飲食物を容易に入手できることを考えると、ある程度は許容範囲なのではなかろうか? 個人の好き嫌いもあり、酒のにおいが嫌な人もいれば、コーヒーの香りが苦手だという人もいる。長時間の乗車では、飲まず食わずというわけにもいくまい。


おいしい駅弁だが、においが気になるという人もいる(筆者撮影)

車内での飲食を禁止したいのなら、代わりに飲食OKの車両(食堂車が現実的でないのなら、テーブル席のフリースペース)を設置すべきだろうが、効率を優先して一人でも多くの乗客を運びたいという鉄道会社のポリシーがある以上、無理であろう。せいぜい、駅では購入不可能なクサヤあたりを禁止するにとどめるほかないと思われる。

2)香水のにおい

日本人と異なり、外国人の中には強烈なにおいの香水をつけている女性がいる。かつて、ベルギーのブリュッセルからフランスのパリまで高速列車タリスに乗った時、隣に座った女性の香水のにおいがあまりにも強かったので閉口したことがあった。

あくまで海外での事例かと思っていたのだが、先日、タリスで経験したような強烈なにおいの香水をまとった女性にJRの車内で遭遇した。インバウンドの外国人観光客が増えるにつれ、こうした事例も珍しくなくなるのだろう。これもどうしようもない。嫌なら席を移動すればいいのだが、混雑していたり、指定席だったりしたらあきらめるほかなさそうだ。せめて、香水をつけて混雑した列車や電車に乗るときは、周囲への影響を考えてもらいたいものだが……。

3)体臭、汗のにおい

体臭は簡単に消せるものではないし、加齢臭など歳とともに増えるものもある。もっとも、汗などは拭くなり、他人に接近しすぎないようにするなど配慮は必要であろう。汗かきの上に肥満体質の人が、狭いスペースに割り込んで何としても座ろうとすることがよくあるが、両隣の人に迷惑であることは論を待たない。冷静に判断して、ゆったりとした空席を探すなり、狭いスペースに割り込まないよう遠慮するのもマナーであろう。

せめてマナーモードにしましょう

4)携帯電話やスマホの音

携帯電話での通話は他の人の迷惑になりますからご遠慮ください、と再三注意喚起されているにもかかわらず、車内で通話する人は後を絶たない。確信犯である場合、電話に出ないと後が怖いような上司だったりする場合など理由はさまざまであろうが、やはり迷惑だ。マナーモードにしていない人も結構いる。愉快な着メロに笑ってしまう場合もあるけれど、着信音が出ないようにし、メールでやり取りするのが礼儀というものだ。

中には機器の使い方がわからなくて困惑している人もいるけれど、買い換えたばかりなのか、もともと機器の使い方が苦手であるのか、こちらではわからない。ともあれ、機器を持つのなら、責任を持って管理していただきたい。

5)ゲームの音

着信音には気を使っても、ゲームの音は気にしない人もいる。本人は夢中になっていて気づかないのかもしれないが、断続的な音はうるさいものだ。長時間続けば迷惑である。時に子どもが延々とゲームを続けている場合があり、隣に親がいても知らん顔をしていることがある。親もスマホをいじっていて、自分のことで精いっぱいのようだ。音を消せないのなら、イヤホンをしてゲームをするくらいの配慮が欲しい。こんな親子を見ていると日本の将来は暗いと思う。

カメラのシャッター音も気になる?

6)パソコンの操作音など


キーボードを打つ音が気になるという人も(筆者撮影)

新幹線の車内でノートパソコンの操作に夢中になって仕事に励んでいるビジネスパーソンがいる。ただし、いくら仕事とはいえ、キーボードのたたき方が激しすぎると周囲に迷惑だ。タッチを工夫するとか、静音キーボードを使うとか、配慮が必要である。

音と言えば、カメラのシャッター音も気になる人がいるようだ。以前、あまりにも美しい絶景の区間で連写していたら、うるさいと言われたことがあった。その区間が終わればあとはどうでもよかったので、すみませんといってカメラをしまったけれど、気になる人はいるものである。同じ車内では、ほかにもスマホで撮っている人もいたのだけれど、座っていた場所が悪かったのか? 周りを見て判断したいものだ。

7)車内での会話

列車内では、お通夜みたいに「しーん」として発話は一切なし、なんてことは無理だろうし、その必要もあるまい。グループで乗車すれば話も弾むだろうし、時には見知らぬ人との会話も楽しいものである。しかし、何事にも限度というものがある。騒音としか認識されないような甲高い大声での会話や、争っているとしか思えないようなやり取りは、周囲の人にとっては不愉快で迷惑なものとなろう。

爆笑の連続、機関銃のような絶え間ない早口でしかも大声の発話は遠慮願いたい。聞いていて(聞きたくもないのだけれど耳に入ってしまう)こちらが恥ずかしくなるような話題を平然としていると、思わずどんな人なのか顔をまじまじと見たくなる。防音室の中でならいざ知らず、大勢人がいて、みんなの耳に入ると思ったほうがいい。

いつだったか、特急電車の中にもかかわらず、携帯電話で病院の予約を取っているシニアの女性がいた。年齢や住所、病歴などを恥ずかしげもなく周囲に聞こえるのも承知で?復唱していた。個人情報に無防備というか、平和な国なのでしょうね。まあ、いろいろな人がいるものである。

車内での爆睡には注意!

8)居眠り

列車内での居眠りは、外国ではあまり見掛けない。治安がよくないので、寝ていたら財布をすられたり、鞄の中を開けて貴重品を持ち去られたりということもあり、油断もすきもないからだ。その点、治安がよいと思われている日本では、被害に遭うことなど夢にも思わない人が多いようで、平気で居眠りをする。

頭を垂れてうとうとするだけならご自由にと思ってしまうけれど、電車の揺れに合わせて左右にもたれかかるようだと、特にロングシートの場合は隣の人が迷惑する。それも思い切り倒れ掛かってくると不愉快この上ない。そっと立ち上がって席を替わったら、それに気づかず勢い余って「どん」と倒れることになってしまい、目が覚めてしまった人がいた。熟睡も度が過ぎると迷惑行為になるので、ほどほどに。

9)4人向かい合わせにするとき


3人グループで4人席を使うとき、向かい合わせにするのはあり? なし?(筆者撮影)

4人グループで旅行をするとき、クロスシートを転換させて4人向かい合わせにすることはよくある。ところで、3人なのにクロスシートを転換させるのは「あり」だろうか?

指定席の場合は、最初は空席でも、途中駅から他人が乗ってくる場合がある。せっかく駅弁を食べようかと思ったのに、クロスシートを転換していれば背面のテーブルを使うことができない。それに盛り上がった赤の他人である3人と一緒に過ごすのも嫌な場合もあろう。

気を利かせて、座席を元に戻してくれればいいのだが、後から乗ってきたのだから文句を言うなと言わんばかりの傲慢な態度の人間もいる。そんな乗客に限って、車掌が注意しても聞かない。これぞ、残念というよりは傍若無人の迷惑行為である。「4人そろったときに限って席を転換させる」のがマナーであろう。

子どもはうるさくて当然ですが

10)グリーン車の子ども

子どもは泣いたりはしゃいだりするのが商売みたいなものだから、うるさいのはしょうがない。公共の空間であればたしなめるのが親の心得であろうが、混雑した自由席や、特に夏休みや年末年始の車内であれば、風物詩のように思い、あきらめている人も多い。ところが、グリーン車となると事情が一変し、苦情の嵐となる。新聞などの投書やネットのコメント欄も、子どもをグリーン車で遊ばせるとは何事かとの文句が絶えない。


携帯電話禁止、禁煙、静寂喚起とさまざまな利用制限のあるドイツの高速列車(筆者撮影)

ごく一般的な庶民にとっては、グリーン車は高嶺の花。そうそう乗れるものではなく、大枚をはたいて、ちょっとぜいたくしたいとの思いから乗る人も少なくない。自由席は混雑するし、窮屈だから、ゆったりしたいとの思いからグリーン車を選ぶのであろう。ところが、近くで子どもが騒いだり車内を走りまわれば、無理をして追加料金を払ったのに、どうしてこんな不愉快な思いをしなければならないのかとキレるのであろう。それとも、子どもの頃からグリーン車に乗るなどぜいたくだ、と自らの過去と比較して、やりきれなく思う人もいるのだろうか?

親にしてみれば、窮屈な車内が嫌だから、逆に無理をしてグリーン車を選んだ場合もあろう。もっとも、いくら富裕層であっても、子どもの頃からあまりぜいたくさせるのはどんなものだろうか、と教育上の観点からも気になることではある。自分で稼いでいないうちはぜいたくをさせてはいけないのでは……と庶民は思ってしまう。

列車内というのは、公共空間だけにさまざまな配慮が必要になってくる。また、乗車目的も観光からビジネス、親睦から現実逃避に至るまでさまざまであるだけにトラブルも起きやすい。そういう意味では、食堂車や観光列車、子ども向けの車両など一定の目的に特化した列車は、これからも必要になってくるであろう。