なぜ少女たちは岩山で消えたのか?『GOT』ナタリー・ドーマーが冷酷無残な教師を演じるTV版『ピクニックatハンギング・ロック』

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サスペンス・ドラマ『Picnic at Hanging Rock(原題)』は、1900年を舞台にした同名のオーストラリアの名作小説を原作とした作品。今年5月からオーストラリアのFoxtelでの放送が始まり、米AmazonやBBCなどを通じて国際展開している。控えめなトーンだった1975年の映画版と異なり、ドラマでは恐怖感が一層際立つ。『ゲーム・オブ・スローンズ』のマージェリー役で知られるナタリー・ドーマーが演じる冷酷無残な教師も好評だ。

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◆花嫁学校のピクニックが暗転、失踪者が続出
時は1900年、バレンタインの日の出来事。オーストラリアの花嫁学校に通う生徒3名と教師1名、計4人の女性が、小旅行先のハンギング・ロックで失踪する。花嫁学校とは、結婚に備えるため教養やマナーなどを学ぶ施設のこと。

行方不明になった生徒の一人は、全寮制のこの学校で学ぶミランダ(リリー・サリバン)。寝巻きに裸足という姿で寮を抜け出したり、レイプされそうになるとその男の脚を作業用の三又フォークで突いたりと、勝気でおてんばな性格の持ち主。他にも、遺産の相続人であるイルマ(サマラ・ウィーヴィング)、明るく賢いマリオン(マドリン・マッデン)、数学教師のグレタ(アンナ・マクガハン)が次々と行方をくらます。

終始不気味な雰囲気を纏う本作は、全6話のミニ・シリーズ。学校関係者らの証言や様々な視点を交えながら、少女たちの失踪の理由と経緯に迫る。

◆狼狽する少女に暴言 ナタリー・ドーマー演じる鬼教師
本作では花嫁学校の少女たちを追い詰める冷酷な校長として、『ゲーム・オブ・スローンズ』のマージェリー役や『ハンガー・ゲーム』のクレシダ役で知られるナタリーを迎える。Boston Globeは本作の魅力として彼女の存在を上げた上で、「抜け目なく、ひねくれていて、心が狭く、執念深く、辛辣」なキャラクターだと表現。その引き締まった表情や、生徒たちを睨みつける視線は素晴らしく、一瞬たりとも目が離せない。

彼女の態度は一貫して冷酷で、小旅行の日の朝に初潮を迎えた生徒に対し、「タイミングの悪さは一生付きまとうでしょう」との言葉を投げつけるほど。米Varietyは、過去にナタリーが演じた役の中でも、もっとも狂気に満ちゾッとさせるとしている。

一方、生徒たちはハツラツとした若いキャストが担当。米Hollywood Reporterは、若き女性たちの絆が見事に表現されていると評価している。意地悪な教師の仕打ちをアイコンタクトで乗り切る彼女たちの友情は、暗いムード漂う本作の清涼剤となるだろう。

◆よりダークでよりミステリアスになったドラマ版
原作の小説は1975年に『トゥルーマン・ショー』のピーター・ウィアー監督によって映画化されている。そちらが成功を収めていることもあり、今回のドラマ化は映画との比較で語られることも多い。

Varietyが評価するのは、本作においてディテールが豊かになっている点。映画1本と比べると計6時間という長尺となっており、その点を生かして少女同士の友情などが十分に掘り下げられている。また、映画よりもさらにダークでミステリアスになっているのも大きな特徴だ。比較的淡々と描いていた映画版と異なり、素早い展開、カメラを傾斜させたダッチ・アングルの多用、意図的に歪ませた映像などがドラマ版ではスリルと恐怖を助長する。

恐怖感の増大は、Boston Globeも評価している。純粋なミステリというわけではなく、偽の手がかりやプロットのひねりなど、お決まりの要素はそれほど盛り込まれていない。代わりに超現実的な視覚効果や時系列の入れ替えを駆使することで、重苦しく恐ろしい雰囲気に満ちたシリーズに仕上がった。ドラマ『Picnic at Hanging Rock』は、シリアスで陰鬱なムードに浸ることのできる良作だ。(海外ドラマNAVI)