4年前の初戦・コートジボワール戦では前々回大会に続き先制点を奪ってみせた。今大会も何かを起こせるか? (C) Getty Images

写真拡大 (全2枚)

 先発か、ベンチスタートか――。

 19日にロシア・ワールドカップの初戦・コロンビア戦を迎える日本。過去2大会でゴールを挙げてきた本田圭佑は、2日後に控えた本番を前に落ち着いていた。

 現状では、スターティングメンバーから外れる可能性がある。トップ下の位置には、12日に行なわれたパラグアイ戦で好パフォーマンスを見せた香川真司が入ることが予想される。

 そうした自分の立場を踏まえながら、本田が口を開いた。
「スタメンで出るのかサブになるのか分からないけど、役割は結果にコミットできるかどうかだと思っている。しっかりスペースを探して、ボールを受けて、攻撃の起点になりながらどうゴール前に侵入していくか。その数と質、それは高めないといけない」

 コロンビアに対しては、攻撃陣もより献身的かつプレー強度の高い守備が求められる。その点では、現時点では本田よりも香川に軍配が挙がる。

 ただ、サッカーの勝負は、理屈や戦術だけで決まるものではない。4年前のブラジル・ワールドカップ初戦。相手のコートジボワールは後半途中でディディエ・ドログバを投入し、満を持して登場したエースの存在で勢いを取り戻し、日本を飲み込んだ。

 経験と、存在感――。今の本田に求められるものとは、まさにあのドログバのような役回りかもしれない。
 
「ぶっつけ本番に強い人、弱い人っていると思うんです。これまでのバックグラウンドや環境で、そういう能力は必然と身につく。僕はたまたまラッキーで、育った環境がプレッシャーの中で生きることが多かった。今回も、理詰めだけではないんじゃないかと思う。結果を出せる、しっかり出しに行く。自分ならできると、自問自答していきたい」

 ブラジル・ワールドカップの惨敗から少し経った頃。本田がこんな話をしてきたことがあった。

「(ブラジル・ワールドカップ2戦目の)ギリシャ戦で、相手に退場者が出て俺らが数的優位になった。あれだけ攻め込んだにもかかわらず、俺を含め日本人は一発を決め切れなかった。ここは、理屈じゃないところでもある。だからここからは、その一発を決められる自分になれるかが大事になってくる」
 
 その言葉を思い出し、今度はこちらから投げかけてみた。すると本田は、こう返してきた。

「そのとおりだと思います。究極のサッカーは、やっぱり個なので。誰かの一振りが、そのボールがゴールに入るかどうかだけなので。戦術で、ゴールは決められない。その意見は、初めてワールドカップを経験した時(2010年南アフリカ大会)から今でも変わらない。それを高めるためだけに、ヨーロッパで挑戦し続けたと言っても過言ではなかった。そこにはいろんな葛藤もありました。簡単に伸びるものではないという葛藤も。酸いも甘いも、それなりに経験したわけです」

 ここロシアは、かつてCSKAモスクワの一員として2010年1月から4年に渡りプレーした場所。「(合宿中の)カザンはアウェー試合の前泊と試合当日でしか来たことがない」と笑ったが、慣れ親しんだ国で本田は肩の力が抜け、自然体で本番を迎えようとしている。

「まあ、楽しみたいなと思います。ここまで来たら、本当に開き直るしかない。チームとして、とにかく全部出す。出し切る。それはただの根性だけではなくて、ロジカルな部分を含めて。いまは落ち着いた状態です」
 
 4年前の絶対的な存在ではないことは、本人が一番理解している。ただ、この空気を一変できるのが自分自身であることも、本田は誰よりも知る。8年前の大会では2得点、前回大会でも1得点を挙げている。一発がもたらす力を、どの日本人選手よりも肌で知る男。コロンビア戦に向けて、本田は自分の可能性を信じ、ゴール、そして日本の勝利だけを見据える。

取材・文●西川結城(サッカーライター)