失敗しない立地の選び方とは?(写真:まちゃー/PIXTA)

会社員生活を経験した後、個人事業主として独立し、現在は経営コンサルタントとファイナンシャルプランナー(FP)、大家業という3足のワラジを履いている齋藤岳志氏。個人事業主として独立できた最大の要因は、「不動産投資に取り組んでいること」と「それを継続していること」だといいます。
不動産投資や大家業を始めるには、まずどうしたらいいのか。『FP大家だけが知っている 資産形成に中古ワンルームを選ぶと失敗しない理由』から抜粋して紹介します。

不動産という言葉が示すように、マンションは「動」かすことが「不」可能です。部屋の中はリフォームをしてより良く改善できても、場所そのものは変えることができません。つまり、「立地」は、どうやっても変更できないのです。

賃貸物件で入居者から選ばれる最大のポイントは、「立地」です。1に立地、2に立地、3、4がなくて5に「立地」と言われるくらい、最も大切にされているポイントです。大家業をやるからには、立地を見分けるコツをぜひ身に付けたいものです。

港、中央、千代田区は「マンション力」ピカイチ

東京で行う私のセミナーなどで、大家を目指す方とお話をする機会があります。そんなとき、「どういう場所が良いと感じますか?」「どういう場所のマンションだったら保有したいと思いますか?」などと、私から質問を投げ掛けると、非常に多くの方から「山手線の内側や山手線の駅近くのマンションが良い」という声を聞きます。

これはもっともな考え方です。東京は人が集まってくる場所なので、賃貸需要がありますし、その東京の中心部に行けば行くほど、賃貸需要も高くなり、入居者が途切れにくくなります。東京の中でも、港区、中央区、千代田区は都心3区と言われ、特に人気の高い場所です。

私の言葉で言えば、その3区は「マンション力」がピカイチです。もちろん、その都心3区にあるマンションならばどれでも良いというわけではありませんが、マンション力の高い物件に当たる確率が高いということです。

しかし、「人気が高い=欲しい人が多い=購入するのに競争率が高い」ということになるので、なかなか手に入りにくく、結果的に「欲しい人が多い=価格が上がる」という傾向になります。

そのような資産性が高いマンションを、最初の1戸目として持つのも良いと思います。しかし、価格面で手が届きにくいという方がいらっしゃるのも事実です。また、家賃収入が入ってくるマンションなので、手放そうとする方も少なく、巡り合える確率は低くなりがちです。

10部屋保有している中で、都心3区は1つだけ

そこで、私は「もう少し視野を広げて見てみましょう」と提案します。山手線というキーワードだけにこだわる必要はありません。

私が賃貸管理を依頼している新宿の会社は、2017年9月時点で約1万8000部屋の管理を受けていますが、扱う部屋は都心3区だけに限りません。東京23区の他の区の部屋も管理していますし、東京に限らず、神奈川県の川崎市や横浜市も部屋の状態や場所を踏まえて管理しています。なんとその賃貸管理会社は、入居率は98%以上をキープしています。100部屋あっても空きが2部屋あるかないかという状態を維持しているわけです。

私の場合、10部屋保有している中で、都心3区にある部屋は一つしかありません。それでも、この10年の大家業で2カ月以上の空室が続いた部屋は本当にないのです。

賃貸管理会社の入居者探しの強さという点が大きいのですが、賃貸管理会社が入居者を探しやすいというマンションを選んだ点もとても大きいと考えています。なので、最近私は、次のようなスタンスを取っています。

購入する前に賃貸管理会社に賃貸管理の可否を問い合わせる。

たとえば、「この部屋を購入しようと考えているのだけれど、賃貸管理は受けてくれますか?」という質問をして、「大丈夫です」という回答を得られたものでなければ購入しないのです。

駅やエリアについては、視野を広げることが可能だと考えます。東京であれば、山手線のターミナル駅まで乗り換えなしで出られる沿線です。

ターミナル駅というのは、複数の路線が乗り入れている駅という捉え方が分かりやすいかもしれません。東京であれば、具体的に言うと、品川駅、渋谷駅、新宿駅、池袋駅、上野駅、秋葉原駅、東京駅です。その駅そのものが会社などの目的地であったり、その駅で1回乗り換えれば目的地に着けるような駅をターミナル駅と考えています。

そのターミナル駅まで、電車で15〜20分くらいで着ける所までは需要がある。そう私は経験的に考えています。たとえば、品川駅であれば京浜急行線や京浜東北線、渋谷駅であれば田園都市線や東急東横線で、15〜20分に位置する駅です。都心に近い方が良いに越したことはありませんが、それくらい離れても賃貸需要が見込みやすく、都心3区と比べれば価格も抑えられたマンションもあります。

このように視野を広げれば、大家サービスを提供できる部屋の選択肢も広がります。

ヒントは女性誌にあり!

書店に足を運ぶと、グルメ雑誌やファッション雑誌など、いろいろな女性向け情報誌が置いてあります。これらの雑誌で組まれる「特集」に注目してください。街の名前がよく出てきます。中でも、東京の例ばかりになってしまうのですが、「自由が丘」「下北沢」「代官山」は頻繁に取り上げられます。その理由は、何でしょうか?

答えは、その街に「魅力」があるからです。

魅力がある街には、楽しそうだと感じて多くの人が集まってきます。情報誌の特集を見れば、人が集まってくる所がどこなのか見えてくるのです。

人が集まる街は、「そこに住んでみたいなぁ」というあこがれの対象にもなりやすい街でもあります。住まいを探している人は、自分が良いイメージを持っている街に住みたいと思うのは当然です。

「住んでみたい街ランキング」という番付も定期的に発表されています。このランキングに入ってくる街は、「住んだらおしゃれだろうな」とか「この街で暮らしたら楽しそうだな」というイメージが強いほど、上位にランクされることが多いのです。

であれば、大家である私たちは、住まい探しで検索されやすい、人気やあこがれの強い街にマンションを持てば良いと思いませんか? そうすれば賃貸需要も高く、入居も途切れにくいはずです。

ただ、先ほどの都心3区と同じように、人気やあこがれの強い街は購入希望者が多く、売りたいと考える人が少ないという傾向があります。良い物件に出合える確率は低くなります。

「あこがれの街」からドーナツの中心に

この問題についても、やはり視野を広げることが大切です。

どちらかというと女性の方に多いのですが、よく「自由が丘でなくちゃ嫌だ」などと場所に対する強いこだわりを見せる人がいらっしゃいます。街のイメージを重視するお考えはわかりますが、競争が激しいエリアに絞り過ぎると、肝心のマンションをなかなか購入できないという事態にもつながりかねません。


そこで私がお勧めするのは、雑誌の特集が組まれている街をドーナツの穴に見立てるという視点です。たとえば、自由が丘を例に挙げると、自由が丘駅だけに目を向けていると、良いマンションとの出合いは少なくなります。自由が丘の駅をドーナツの中心に考えて、その周辺の駅に目を向けていくのです。

自由が丘駅は、東急東横線と東急大井町線が交わる駅です。ドーナツの穴の部分を自由が丘駅に見立てれば、その周辺には都立大学駅、学芸大学駅、新丸子駅、武蔵小杉駅、九品仏駅、大岡山駅など、自由が丘よりは知名度が低くても、住みやすくて利便性が良い駅や街が見えてきます。ここで挙げた駅も人気の高いスポットになりますが、エリアを広げれば選択肢も広がってきます。

それと、女性に気に入ってもらえる可能性が高い街というのは、賃貸需要も高くなる傾向があるということもポイントです。ぜひ押さえておいてください。