『中国のEV開発は加速しているが…』

 2017年12月、トヨタは2020年以降、全世界で10車種以上のEVを投入すると発表した。同時に、2030年までに全販売台数の約半数にあたる550万台以上を、電動車にすると表明している。

 これまでハイブリッド車や水素燃料電池自動車の開発に取り組んでいた同社が、EVに軸足を移したことを示したニュースだった。今回のトヨタの発表に限らず、北京モーターショーなど、世界全体でEVシフトが加速しつつある。

 給油不要、音が静かなどのメリットがある一方で、いまだにEVは航続距離が不安視されている。現在、日本のEVの能力はどの程度なのだろうか。

 日本でもっとも売れているEV、日産リーフの性能について、モータージャーナリストの岡崎五朗氏に聞いた。

「リーフは、2017年に登場した新型が40キロワット時、さらに2018年には60キロワット時のモデルも出るといわれています。満充電での航続距離はこれまでより確実に伸び、実用性も向上します」

 そこで本誌は、実際に40キロワット時のモデルで、約500キロのロングドライブテストを実施した。満充電の状態で、一般道と高速道路を半分ずつ走行。午後7時ごろ東京をスタートしたため、道路に大きな渋滞はなかった。

 夜間だったため、ライトを点灯して走行したが、バッテリーに大きな影響はなし。むしろ、エアコンが大きく影響するようだ。

 群馬方面へ230キロ走行したところで、電池の残量が約10%に。コンビニの急速充電器でおよそ90分間、充電し、残量は80%弱にまで回復した。

 ここから東京へ戻ることに。追加充電しなくても大丈夫そうだったが、念のため大宮で再充電。無事、戻ることができた。

 EVにとっては過酷ともいえる雪国、新潟県のリーフのオーナーズクラブに実用面での感想を聞いてみた。

「充電時間が季節によって左右されたり、充電施設の不足やマナーの問題など、苦労もあります。でもわが家は蓄電池としても使用していますので、毎月の電気使用料の請求書を見るのが楽しみです」(30代の女性会員)

 いまや実用面でも選択肢のひとつになりつつあるEVだが、前出の岡崎氏は、性急なEVへのシフトについて、疑問を投げかける。

「ITジャーナリストのなかには、エンジン車を全面的に否定するような声がありますが、論外です。事実、2017年には中国やヨーロッパ主導の急激なEVシフトに対して、見直す動きすらありました」

 一部では、バッテリーとモーターさえあれば、EVは簡単に作れる、という意見もある。これについても岡崎氏は反論する。

「自動車というビジネスは、信頼性や耐久性を維持するための先行投資に、膨大な資金や時間がかかります。人の命を預かるものですから、品質に対する保証は徹底しなければなりません。

 そう考えたら、簡単にEVを作れる、という話は乱暴です。もちろん、EVを否定しているわけではありませんが、いまの動きは急すぎます。

 重要なのは、いかに緩やかにEVへシフトしていくか。そのためにも、ハイブリッドやPHVはこれからもつなぎ役として、重要な役割を果たしていくでしょう」

(週刊FLASH 2018年5月29日号)