女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、鈴木真利亜さん(仮名・34歳)。都内の中堅大学を中退後、都内にある実家で引きこもりのような生活をしつつ、27歳の時に結婚、33歳の時に離婚し、今は父親が所有する都内のワンルームマンションに住んでいます。この1年間、仕事はしておらず、無職。親からの仕送りで生活しており、「今、75歳の父親が死んだら、生活保護でしょうね」と言う。貯金はなく、年金や健康保険は父親任せだという。

大学卒業後から、父親の会社で手伝う以外、ほぼ社会人として働いたことがないという真利亜さん。切れ長の二重まぶたが印象的な色白の美人です。手足が長く、青いストライプの膝丈シャツワンピが似合っています。セミロングのヘアを無造作にまとめており、ところどころ毛が跳ねています。表情が少なく、目がボーっとしているので、ある種の男性の庇護欲をくすぐりそうな人だという印象です。結婚した経緯について伺いました。

「6年間、結婚していたと言っても、実際の生活は1年もしていません。新居をかまえたのではなく、私の今住んでいる家に、元ダンナさんが来たというだけ。彼はIT関係の仕事をしていたので、ほとんど家に帰ってこないんですよ。ほぼ会社で寝泊まりしていたし、彼の友達の間でも、結婚していることを知らない人も多いと思いますよ。でも確かに籍を入れて、私の家の住所で住民登録していました。毎月25日には、月10万円くらいの生活費をくれていたし、時々洗濯や料理をしてあげていたから、一応結婚していたのだと思います」

不思議な結婚生活を過ごしていた真利亜さんは、元ダンナさんとSNSで出会った。

「なんとなくSNS上でからまれて、メッセージで盛り上がって、リアルに会った時に結婚の話が出て、そのまま誰にも言わずに入籍しました。“交際0日婚”が注目されていた時期でもあったので、自然な流れでしたね。相手のことを好きとか、愛しているとかホントにどうでもよくて、お互いに自分の家族が欲しかったんですよね。向こうも忙しいし、恋愛や結婚よりも仕事が面白かったから、たまたまタイミングが合った私と結婚したんですよね」

結婚生活を冷静に語る真利亜さんは、「彼とは親に愛されなかったという部分で、深く理解し合えたのかも」といいます。

「私が5歳の時に母親が死んで……というか、あれは自死だったんですよね。父は変わらず激務だったから、私を放置して仕事に出かけていました。何日も家に帰らないこともあり、近所の人がご飯を食べさせてくれたりしていました。そのうち父はもお金に余裕ができるようになり、ハウスキーパーを雇ってくれた。1日数時間しかいないから、食事に困ることはなくても、基本的にひとりなんですよね。今でもラップがかかったお皿が嫌いなのは、この時のトラウマでしょう。小学生に入る前から、夜ひとりで過ごしていて、父とはほとんど口を利かないのだからコミュ障にもなりますよね」

元夫が抱える心の闇は、母親からの徹底的な無視だった

ちなみに、元ダンナさんは、シングルマザーだった母から育児放棄されていたといいます。

「彼は母親から徹底的に無視されていました。親から愛されていないと、結婚して子供産んじゃいけない気がする。でも自分の家族は欲しいと思ってしまうのが20代後半だと思うんです。その悪いタイミングで会ってしまった。私は結婚する前からほぼ引きこもりで、ネットばっかり見ています。父の会社をたまに手伝っていた時に、ナンパされて恋愛をしたこともありましたが、どうしていいかわからない。一度恋愛関係になってしまうと、相手がいなくなるのが怖くなる。寂しいからSNSで知り合った人とちょいちょい恋愛したこともあったけれど、いつもうまくいかないんです」

「親にお金が無かったら、今頃死んでいたかもしれない」と真利亜さんは続けます。

「小学校では無視されるなど軽いいじめに遭いましたし、中学校・高校はいじめチームの標的にならないために気配を消して過ごし、大学は周囲の雰囲気に圧倒され、自己嫌悪で家から出られなくなり中退。私がこうなったのは親のせいなんですが、元ダンナさんの姿を見ていると、親のせいにできるだけマシな状況なんだと。親がお金をくれるから、引きこもりができるのかもしれない。お金がなかったらボロボロになって死んでいたと思います」

快適な実家を追い出され、今のワンルームマンションに住んでいる理由を伺いました。

「私が22歳の時、いきなり父が40歳のオバサンと結婚するといって、家に連れてきたんです。あの時の衝撃と恨みは今も忘れません。後妻は当時妊娠していたのですが、絶対に“この女に私の兄弟を産ませてなるものか”と念じ続けたら流産したんです」

真利亜さんが「後妻」という女性は、お父さんと仕事で知り合い、飲み屋さんで意気投合。2人が愛を深めたという街には、再婚以来近づいていない。

ネット上で垂れ流す呪詛の言葉と、恨みの念……仕事をしても、当日バックレをしてしまう。〜その2〜に続きます。