Amazonプライム・ビデオで6月15日から配信が始まった「あつまれ!アマゾンキッズ しまじろうとあそぼう!」の収録現場。お兄さん役は俳優の永田崇人さん(筆者撮影)

Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。

すき間時間に視聴できる「エデュテインメント番組」

今回はAmazonプライム・ビデオで6月15日から配信が始まったばかりの新番組「あつまれ!アマゾンキッズ しまじろうとあそぼう!」を紹介します。トラの子どもをモチーフにした「しまじろう」は言わずと知れた幼児向けの通信教育教材『こどもちゃれんじ』のキャラクターです。その「しまじろう」が登場するアニメと実写を組み合わせた番組にはかれこれ25年続いている「しまじろうのわお!」(テレビ東京系)がありますが、新たにAmazon版をスタートさせたのには、理由がありました。


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Amazonの「しまじろうとあそぼう!」も地上波テレビ版と同じくアニメと実写で構成され、教育とエンターテインメントを組み合わせたエデュテインメント番組です。ターゲットも2〜6歳と、これまでと変わりはありません。では何が新しいのでしょうか。今どきの子どもの生活スタイルに合わせたことが違いのひとつにありそうです。

企画したベネッセコーポレーションこどもちゃれんじグローバル本部グローバルキャラクター開発部コンテンツ開発課課長の内山昭子氏に詳しく話を聞きました。

「子どもにとって、スマホやタブレットに触れることはもはや特別なことではなく、生活の一部になっています。インターネット配信で映像に触れることも普及し、リビングだけでなく、外出先でも『しまじろう』と接する機会をつくることができます。子どもたちの生活スタイルに合わせて、より身近に楽しんでもらいたいと思い、Amazonプライム・ビデオで番組を立ち上げることにしました」(内山氏)

ベネッセ教育総合研究所が2017年10月発表した「第2回乳幼児の親子のメディア活用調査」(調査対象は首都圏のゼロ歳6カ月〜6歳就学前の幼児を持つ母親3400人、第1子のみ)によれば、ゼロ歳後半から6歳の子どもがスマホに「ほとんど毎日」接している割合は21.2%に上り、2013年に実施した調査結果に比べると、約2倍に増えています。

また母親のスマホ所有率も4年の間に60.5%から92.4%に増加しています。一方、テレビ(録画を除く)を「ほとんど毎日」利用する頻度は依然として高いものの、ビデオ・DVDのその頻度は4年前より約半分に減少しています。

多くの子どもは繰り返し視聴を好みます。子ども向けの映像サービスにとって、それは無視できない状況でしょう。視聴環境の変化によって、スマホやタブレットなどのデバイスで、すき間時間にいつでもどこでも何度も視聴できるAmazon版が作られたのは自然な流れとも言えます。Amazon版の全12話を十文字学園女子大学の大宮明子教授が監修を行い、デジタルデバイスで視聴することを考慮した見やすさにもこだわっているそうです。

エンタメ性と教育的な価値を両立

そして、気になるのは差別化です。Amazonの中ではライバルとも言えるありとあらゆる子ども向け番組も配信されていますから、「しまじろう」らしさが求められます。

「『こどもちゃれんじ』じゃないと届けることができない番組は何なんだろうと、考えました。そこでたどり着いた答えが、すき間の時間で手軽に面白くエンタメ性もあって、しっかり発達に裏付けられた教育的な価値を両立させることでした」(内山氏)


しまじろうシリーズでおなじみのキャラクター、とりっぴい、みみりん、にゃっきいも登場する(写真:ベネッセコーポレーション)

「しまじろうとあそぼう!」では「宝探し」や「ヒーロー」「サイエンス」「工作」など子どもが好きなテーマが1話ごとに設定され、その同じテーマで番組内の各コーナーが展開されています。地上波テレビ版では別々にアニメと実写が企画されているそうですが、Amazon版はアニメと実写の制作チームが共同で対話を繰り返し、一貫性にこだわっているそうです。つまり、番組の初めから終わりまで、子どもの興味を引き出し、それをアウトプットするまで徹底したというわけです。番組を通じて、子どもの成長を確かめる瞬間も生まれそうです。

教育要素が強まることで困る親はいません。筆者自身、子どもが小さいうちは映像サービスに助けられたこともありました。家事や出掛けた際のどうしても手を離せないとき、子どもが映像に集中しているすきに用を済ませることができれば有難いもの。ましてやそれに知育効果があれば、親の満足度が高まることは間違いないでしょう。

またお兄さん役の「キャップ」を務める永田崇人さんは母親から人気を集めそうです。ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」シリーズなど、2.5次元ミュージカル(漫画やアニメ、ゲームを原作とした舞台)で活躍してきた旬な俳優を起用しています。収録時、永田さん本人に話を伺うと「自分の役割は子どもたちのヒーローになること。一緒にご覧になっているお母さんにも熱中してもらうよう頑張りたいです」と話していました。

少子化でも、しまじろう関連ビジネスは絶好調

アマゾン初の試みもあります。プライム会員(Amazonファミリーに子どもの情報を登録していることが条件)を対象に、「しまじろう」や「キャップ」らと番組内で一緒にダンスを踊る「アマゾンキッズ」の募集を行っています(第3次締め切り6月17日まで)。アマゾンもベネッセも同じ会員ビジネスモデルです。ファミリー層への認知が高まることで互いに相乗効果がありそうです。


「あつまれ!アマゾンキッズ しまじろうとあそぼう!」収録風景(写真:ベネッセコーポレーション)

「(アマゾンもベネッセも)会員を大切にしていますから、共通する視点があり、円滑に実現しました。『こどもちゃれんじ』を利用するお母さん方が日用品を購入するために訪れたアマゾンでわれわれが学びも提供できれば、より生活が豊かになるはずです」(内山氏)


ベネッセコーポレーション こどもちゃれんじグローバル本部 グローバルキャラクター開発部 コンテンツ開発課課長の内山昭子氏と、しまじろう(筆者撮影)

少子化が進んでいますが、しまじろう関連ビジネスは逆風が吹いているどころか、好調だと言います。2017年のコンサート観客動員数は52万人を超え、過去最高を記録。3月に公開された劇場版しまじろう『まほうのしまのだいぼうけん』は動員数20万人超えで、これも過去最高となりました。

「レジャーニーズの高まりが後押ししている」と内山氏は分析しています。スマホ片手にお出掛けする親子が、すき間時間にアマゾンの「しまじろうとあそぼう!」を視聴する光景を目にする日も近そうです。