「がんもどき」は豆腐をつぶして、ニンジンやレンコン、ゴボウなどと混ぜて、油で揚げた料理だ。精進料理の一種で、「雁(がん)」の肉に似せた「もどき料理」なので、関東では「がんもどき」と呼ばれるようになったとされている。

一方、関西では同様のものが「飛龍頭」(ひろうす、ひろうず、ひりょうず)と呼ばれている。ポルトガルから伝来した南蛮菓子「フィリオース」が発祥、といった説がある。

そこでJタウン研究所は約半年にわたって、「おでんの定番ダネは、がんもどき? 飛龍頭?」をテーマに、都道府県別のアンケート調査を行った(総投票数801票、2018年1月15日〜 6月12日)。

はたして、その結果は――。

関西地方では「飛龍頭」が優勢、でも「その他」って...?

全投票をあわせた数値は、「がんもどき」が364票(45.4%)だ。「飛龍頭」は265票(33.1%)、「その他」が172票(21.5%)。下の円グラフをご参照いただきたい。結局、「がんもどき」が半数近くを占めたわけである。


「おでんの定番ダネは、がんもどき? 飛龍頭?」調査結果(Jタウンネット調べ)*投票がなかった県は、白地のままとした。

都道府県別に見てみよう。各県ごとの最多得票を色分けすると、上のような日本地図になった。「がんもどき」派のクリーム色は全国に広がっているのだが、とくに東日本はクリーム色優勢だ。

北の方から見てみよう。北海道(66.7%)、秋田県(100%)、山形県(100%)、福島県(100%)など、北日本では「がんもどき」派が優勢だ。関東地方に入ると、茨城県(68.4%)、栃木県(100%)、群馬県(100%)、千葉県(75%)、東京都(62.5%)、神奈川県(67.6%)など、埼玉県以外は「がんもどき」派のほぼ圧勝である。

新潟県(66.7%)、長野県(66.7%)、富山県(71.4%)、静岡県(100%)などでも「がんもどき」派は多かった。

どうやら東日本では、「がんもどき」派が大勢を占めていると言ってもいいだろう。


がんもどき(Pieriaさん撮影、Wikimedia Commonsより)

一方、「飛龍頭」のグリーンは関西地方にかたまって見える。

京都府(82.9%)、大阪府(66.7%)、兵庫県(80%)、奈良県(66.7%)など、和歌山県(がんもどき100%)を除く関西地方は「飛龍頭」派が圧倒的に優勢だ。「飛龍頭」派は、広島県(55.6%)、山口県(100%)でも強かった。


京都市の錦市場で販売されている「ひろうす」(Kyowwさん撮影、Wikimedia Commonsより)

......というわけで、関東を中心とした東日本では「がんもどき」、関西では「飛龍頭」という構図が読み取れるのだが、ここで残るのが「その他」の存在だ。21.5%という数字は無視できない。

もっとも「飛龍頭」は、ひろうす、ひろうず、ひりょうずなど、読み方はさまざまだ。石川県では「ひろず」と呼ばれるのが一般的だという。ひろうすの変形が「その他」にカウントされている可能性もある。

ネットで調べてみると、Jタウンネットの2017年12月10日の記事(参照:ひろず、まるやま、みいでら...... 地域によって変わる「がんもどき」の呼び名)を見つけた。なんと「灯台下暗し」とはこのことだ。

これによると、輪島や加賀の一部では「みいでら」、富山県では「まるやま」「まるあげ」......と呼ばれているらしい。

さらに調べてみると、「みいでら」は滋賀県大津市にある「三井寺」、天台寺門宗の総本山が由来という説もあるらしい。また「まるやま」は長崎の花街・丸山が由来という説もあるそうだが、さすがに......定かではない。

「がんもどーふ」や「がんどーふ」と呼ばれる地域もある、という資料も存在した。その他の呼び方が非常に気になる。できれば詳しい方のご教授をお願いしたいと思う。