1位はアップルの4.2兆円

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6月4日、Appleの開発者向けカンファレンス「WWDC」でスピーチをするティム・クックCEO(写真:REUTERS/Elijah Nouvelage)

東洋経済では『米国会社四季報』収録データをもとに、ランキング形式で米国企業の姿を紹介している(前回は『経営者の報酬が巨額な米国企業ランキング』)。第5弾となる今回は、企業が自由に使えるおカネ(フリー・キャッシュフロー)に焦点を当てる。

フリー・キャッシュフロー(FCF)は、一般に事業活動によって得たキャッシュフローから、運転資本や設備投資など事業活動を継続して行うために必要なキャッシュフローを差し引いたものと定義されている。FCFが多いほど、M&Aを行ったり、借入金を返済したり、株主還元を行ったりということも可能になる。したがって、FCFが潤沢な会社ほど経営状態も良好とみなされる。

本稿ランキングのFCFは、S&P「Capital IQ」の「レバードFCF」を用いた。これはEBIT(Earnings Before Interest and Tax)に支払利息を含め、そこから法人税(ここでは実効税率37.5%)を引いたみなし税引き後営業利益(NOPAT)から計算したもので、以下の算出式によって表される。

NOPAT+減価償却費等-設備投資+無形資産の売買額-正味運転資本の増減額

なおランキングでは、銀行、各種金融に分類される企業および、米国外に本社を置く企業は除外した。

1位アップルのFCFは4兆円超

ランキングトップはアップル。FCFは387億ドル(日本円換算で4.2兆円)に達する。


直近2017年9月期は、主柱のiPhoneで高単価機種の投入や、Macの回復、アップル・ペイなどの各種サービスの拡大もあり、前期落ち込んでいた営業利益は回復した。600億ドルを超える利益水準(税引き後380億ドル)は他を圧倒しているうえ、ここに100億ドルの償却が加わるため、120億ドルの設備投資を行ってもなお、巨額のFCFが残る計算となっている。

アップルは5月1日、1000億ドルに及ぶ自己株買いと四半期配当の大幅増額を発表した。大規模な株主還元を好感し、それまで170ドル台で推移してきた株価が急騰、その後は190ドル前後に切り上がった。4位株主(2018年3月時点)のバークシャー・ハサウェイを率いる“オマハの賢人”ウォーレン・バフェット氏は、同社の株主総会でアップルの自己株買いを歓迎する発言をしたといわれている。豊富なFCFがあれば、これだけの規模の株主還元も可能というわけだ。

2位はグーグルを傘下にもつアルファベットで、FCFは230億ドル(同2.5兆円)を超える。モバイル検索やYouTube視聴数の増加で広告収入が大幅に伸長し、直近2017年12月期の営業利益は288億ドル(同3.1兆円)まで拡大。クラウドや自動運転など設備投資を増やしているが、「正味運転資本」の大幅減もあり、税引き後の利益を上回るキャッシュを得ている計算になる。

3位は世界トップクラスの通信事業会社AT&T。電話網やブロードバンドサービスを提供しているほか、2015年に衛星放送最大手のディレクTVを買収し、ネット配信の「ディレクTVナウ」をスタートさせている。電話や有料テレビの加入者数の減少などもあり、2017年12月期の営業利益は減益だったが、238億ドル(同2.6兆円)の営業利益に200億ドル近い償却費が加わり、ブロードバンドなどへの設備投資に215億ドル(同2.3兆円)費やしても、205億ドル(同2.2兆円)のFCFが残っている。

同社は株主還元として配当を重視しており、2017年決算で連続増配は34年に及ぶ。一方で、近年は大型M&Aにも乗り出しており、前述のディレクTVに続き、2016年秋にタイム・ワーナーの買収を公表した。これに対し、米司法省は買収を阻止するための訴訟を提起し係争が続いていたが、6月12日、買収計画を承認する判決が出された。

そのタイム・ワーナーはFCF141億ドル(同1.5兆円)で8位にランクイン。ケーブルテレビネットワークやCNNなどを展開するターナー部門、有料テレビサービスなどを手がけるHBO部門、映画やテレビ番組、ゲームコンテンツなどを提供するワーナー・ブラザーズの3部門での事業展開を行っている。

2017年12月期は3部門ともに好調で、営業利益も83億ドル(同9100億円)まで伸長した。ただ、FCFの額に対して営業利益はかなり不足している。設備投資額が他の上位企業と比べて1ケタ2ケタ小さいにしても追いつかない。日本の有価証券報告書に相当する10-k資料で確認すると、映画やテレビの償却費用が大きいことが示されている。2017年12月期は91億ドル(同1兆円弱)と営業利益を上回っている。

7位のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)も株主還元策として連続増配を続けており、前述のAT&Tを上回る61年に及ぶ。「アリエール」や「ファブリーズ」などの洗剤、ヘアケアの「パンテーン」、紙おむつの「パンパース」、化粧品の「SK-供廚覆鋲本でもおなじみの製品群を展開する世界最大の日用品メーカーだ。ITのように急成長が期待できる業種ではないが、中核事業を軸に安定した収益を確保している。

2017年6月期のFCFは153億ドル(同1.6兆円)だが、その前の期(2016年6月期)は76億ドルであり、FCFが倍増している。これは資産を売却したことに伴い、「正味運転資本」が大きく減少したことが効いた。

FCFが1兆円を超える企業は21社

本ランキングでは、21位のホームデポまでが1兆円を超えるFCFを生み出している。いずれも世界的な事業展開を行う、米国を代表するトップ企業ばかりだ。このうち、前の年度よりもFCFが増えた企業はP&Gを含め15社もある。

12位のエクソン・モービルも2016年12月期の77億ドルから128億ドルへとFCFが大きく増加した。同社の2017年12月期業績は、原油価格低迷の長期化が影響し、探査や採掘などの上流部門に大きな打撃を受けた前の期から急回復。営業利益が19億ドルから153億ドルへと8倍増となったことが主因で、さらに200億ドル弱の償却費に対し、設備投資は154億ドルと抑えめだったことも。

最後に、ランキング表にはないが、FCFが大きくマイナスとなった企業がある。それが老舗の自動車メーカー・ゼネラル・モーターズ(GM)だ。同社のFCFは直近5年間のうち4年間でマイナスとなっている。新モデルや中国展開のための投資に加え、EVや自動運転関連などへの投資が膨らんでいることで、恒常的に設備投資額が償却額を大きく上回っていることが要因の1つと考えられる。また「正味運転資本の増減額」が2016年12月期の大幅マイナスから、2017年12月期は大幅プラスとなったことも響いた。

今回は、直近2017年度決算の単年度のデータを用いて算出したFCFをもとにランキングを行った。ただ、FCFは年ごとにかなり変動することもあるので、より正確に企業の実態を知るためには、できれば5年程度の平均値をとって比較するほうが望ましいだろう。