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 梅雨入りの地域も多くなり、雨の日が増えてきています。傘を持って出掛ける日が一年でも一番多い時期ではないでしょうか? そんなとき気を付けたいのが傘の置き忘れです。今回は、傘の置き忘れを防ぐにはどのようにすればいいのかを脳神経科学が専門の早稲田大学教授・枝川義邦さんに聞きました。

【マンガ】傘の置き忘れ、防ぐには…? 対策から記憶の仕組みまでをシンプルに解説

記憶は3ステージで構成

 忘れ物を防止するにあたって、まずは基礎となる「脳で記憶がどう作られるか?」について簡単に解説します。外部から取り入れられた情報は次の3つの段階(ステージ)を経て記憶として活用されています。

 ステージ1、まずは情報が脳に取り入れられます。記銘と言います。
 ステージ2、取り入れられた情報が保存されます。保持と言います。
 ステージ3、保持された情報を取り出すことになります。想起と言います。

 このステージのどれかがうまくいかなくなることで、物忘れが発生します。例えば、ステージ2がうまくいっていない状態というのは、脳に保存したはずの情報が無くなってしまう状態ですし、ステージ3がうまくいっていない時は、いわゆる「ど忘れ」の状態です。

記憶は3種類に分類

 もう一つ、時間経過に沿って分類すると、記憶の種類は3種類に分けられます。

 一つ目が「過去の記憶」。昔から覚えていることや、時間的に過去の記憶です。
 二つ目が「現在の記憶」。身近な例ですと、会話中の質問がこれにあたります。過去の記憶と違い、一時的に覚えてはすぐに忘れられやすい内容です。会話が脱線して内容が一度それてしまうと、話していた内容がわからなくなるのは、この性質の記憶が原因です。
 そして、三つ目が「未来の記憶」です。将来やるべきことへの記憶を持ち続けて、然るべきタイミングで思い出すことです。例えば、電車に乗っていて、目的の駅で降りることができるのはこのタイプの記憶のおかげです。

 では、今回のテーマである傘を忘れないようにするためにはどうすれば良いでしょうか?
 方向性としては、忘れないようにする「予防」と、もし忘れてもミスにならないように講じる「対策」の二つの方向性があります。

 まずは、忘れないようにする「予防」についてです。
 これはもう一言で、「傘の存在を意識し続ける」ということに尽きます。極論を言うと、「傘を注意してずっと見ておく」ということになりますが、現実的ではないでしょう。そこで、できるだけ意識内に入れておくようにしましょう。見える位置に置いたり、注意を向けておくだけでも良いでしょう。
 また、傘を置く際に何かをやりながらではなく、置いたということにしっかり注意を向けて置きましょう。そうすることで情報のインプットを強力に行うことができ、意識から外れにくくなります。
 荷物の数をできるだけ少なくしておくことも重要です。人間が一度に意識できる数には上限があります。できるだけ手持ちを減らすことで、注意が傘から外れないようにしましょう。

 続いて、仮に忘れたとしても思い出せるような「対策」についてです。
 古典的な方法としては手に書くなど、目に触れる位置に傘の存在を意識させるような仕組みを用意し、置き忘れを防ぐことです。その人それぞれで習慣が違うので、万人にベストな方法というのは難しいですが、自分の記憶以外に頼るのがよいのではないかと思います。
 折りたたみ傘であれば傘袋に入れて、カバンに入れるようにする。電車の降りるタイミングでアラームをセットしておいたり、いつも置く場所や持つ場所を決めておく、カバンにかけられるアイテムなどを活用するというのも有効な手段の一つです。

 今回の方法は、傘だけでなく様々な記憶に関する課題を解決するヒントになるのではないかと思います。このような脳の仕組みを頭の片隅に置いておいていただき、自分に合った方法を実践することで日常生活に役立てていってください。