シンガポールのカペラホテルで米朝首脳会談に臨むドナルド・トランプ米大統領(右)と金正恩朝鮮労働党委員長(2018年6月12日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】歴史的な会談となったシンガポールでの米朝首脳会談は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領と金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長にノーベル平和賞をもたらすことになるのだろうか。専門家らは、「可能性はあるがその判断を下すのは時期尚早」としている。

 米朝両首脳は12日、詳細を詰めるまでには至らなかったが、「朝鮮半島の完全非核化を目指す」とする合意文書に署名した。一部コメンテーターや政治家らは、両者のこれまでの努力はノーベル賞に値するものだとしているが、専門家らは、現時点ではまだ難しいとの意見でおおむね一致している。

 その背景には、一連の出来事のタイミングとこれまでの行動とが、両首脳に不利に働いているということがあるようだ。トランプ大統領は先ごろ、イラン核合意からの米国の撤退を決め、国際社会に大きな衝撃を与えたばかり。一方の金委員長もこれまで数多くの人権侵害を犯している。

 それ以外にも、交渉そのものが結実するかどうかの問題もある。非核化のプロセスはリスクを伴い、複雑かつ長期にわたることに変わりはないのだ。

 ノーベル賞に詳しい歴史家のアスル・スベーン(Asle Sveen)氏は、金氏とトランプ氏の受賞について語るのは「時期尚早」だと述べる。「だが、(両者の合意)が朝鮮半島の非核化につながるのであれば、彼らに賞を授与しないことは極めて困難になるだろう」ともしている。

 米朝首脳会談前の時点で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領や米国のジミー・カーター(Jimmy Carter)元大統領、英国のボリス・ジョンソン(Boris Johnson)外相らは、ノーベル平和賞に値する人物としてトランプ大統領の名前をすでに挙げていた。

■「過去の過ち」繰り返したくないノーベル賞委員会

 当時就任したばかりのバラク・オバマ(Barack Obama)前大統領がノーベル賞を受賞してから10年が経過した。この時の授賞をめぐっては「早すぎる」との見方が大勢を占めた。ノーベル賞委員会はこうした過去の過ちを繰り返すことをしたくないはずだ。

 これより以前の2000年には、当時の金大中(キム・デジュン、Kim Dae-Jung)大統領も同平和賞を受賞している。北朝鮮との和解への努力が評価されたのだ。しかし、授賞候補者を毎年公表しているノルウェー・オスロ国際平和研究所(PRIO)のヘンリク・ウーダル(Henrik Urdal)氏は、その努力はせいぜい「広報活動」キャンペーン程度にしかならかなったと指摘する。「おそらく(委員会は)かなり大きな成果が出るのを待ってから賞の授与について決めることになるだろう」

 スウェーデンのシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」のダン・スミス(Dan Smith)氏も、ノーベル賞について語るのは早すぎるとの見方に同意する。「今日の合意は素晴らしい最初のステップだが、道程は長く複雑だ。トランプ大統領のその他の決断、とりわけ地球の安全に不可欠なパリ協定からの離脱と、中東地域の安定に不可欠なイラン核合意からの離脱は、平和の構築にはかなりのマイナスだ」

■「受賞に一番値するのは文氏」

 朝鮮半島での非核化の進展が現実のものとなると、ノーベル賞委員会は大きなジレンマに立たされることになる。これまでの2人の軌跡をたどるとこれは当然のことだろう。

 1990年から2014年まで委員会の事務局長を務めたノルウェーのゲイル・ルンデスタッド(Geir Lundestad)氏は以前、「ノーベル賞は聖人への賞ではない」と発言したことがある。

 ルンデスタッド氏は12日、AFPの取材に対して、「この両首脳には数多くの問題がある。金氏は世界最悪の独裁者の一人。トランプ大統領も1945年以降に米国が築き上げ、多くが恩恵を受けてきた政治と経済の仕組みを壊そうとしている」と指摘した。

 他方で、スウェーデンの国際関係が専門のピーター・ウォレンスティーン(Peter Wallensteen)教授は、朝鮮の平和を理由に授賞が行われるとすれば、韓国の文大統領も含まれるべきだと述べる。そして「実際のところ、受賞に一番値するのは文氏だろうが、それではトランプ氏への侮辱となりかねない」と付け加えた。
【翻訳編集】AFPBB News