段差に強く室内も広く扱いやすいが……

 クロスオーバーSUVが世界的なトレンドになって久しい。日本車でいえば2018年に国内市場に復活するトヨタRAV4の初代モデル(1994年デビュー)が生み出したムーブメントであり、またプレミアムセグメントでは2002年に誕生したポルシェ・カイエンの成功に他社が追随したことで、現在の多彩なラインアップにつながった。ランボルギーニやロールスロイスといった名だたるブランドまでも、クロスオーバーSUVを手掛けるようになるとは、25年前には誰も想像しなかっただろう。

 そうした人気の秘密は、実用性とスタイルが両立していることにあるだろう。SUVは車高が高いというイメージがあるので、そのカテゴリーの中で少々スタイル重視のシルエットにしても室内スペースは十分に確保できる。

 また、大きなタイヤを履くことができるので、足もとのマッチョ感や踏ん張り感を表現するのも得意分野だ。それでいて、SUVであるから最低地上高を確保していることは自然に受け入れられる。スタイリッシュだからといって段差などで気を使うことはない。

 これがスーパースポーツだったりすると、歩道の段差ひとつも気になってくるものだ。また、都市部から一歩校外に出れば舗装路が整備されていないような地域においても最低地上高とスタイリングの両立にはニーズがある。

 パッケージ次第ではラゲッジスペースも稼ぎやすく、乗用車として求められる要素をバランスよく満たすことができるのが、クロスオーバーSUVだ。では、欠点はないのかといえば、そんなことはない。

 まずひとつには燃費性能については同等のセダンなどに比べるとネガを感じる。

 たとえば、同じハイブリッドシステムを搭載しているトヨタ・プリウスとC-HRを比べると、プリウスの燃費が量販グレードで37.2km/L(燃費スペシャルグレードで40.8km/L)なのに対して、C-HRは30.2km/Lにとどまる。ハイブリッドシステムが同等であってもタイヤの違いによる走行抵抗、ボディの違い(とくに前面投影面積)による空気抵抗の差というは無視できない。

 また、日常的な使い勝手では、最低地上高の高さによる乗降性のネガもある。悪路走破性と乗降性は相反するものだ。

 さらに、多くのSUVが全高1550mmを超えてしまっているため、入れることのできない立体駐車場が多いという不満もあるだろう。もっともトヨタC-HR、SUBARU XV、マツダCX-3のように全高1550mmに収まるSUVも増えてきているのは、メーカーがユーザーニーズに応えた結果だろう。

 そして、全高が高めだからといって「ロールが大きくて、走りに不満を感じる」なんてことはないのが現代のクロスオーバーSUV。市街地もキビキビと走れるし、ワインディングを気持ちよく駆け抜けることもできる。三菱エクリプスクロスやスズキ・クロスビーのようにダウンサイジングターボを搭載するクルマが増えているのは、そうした走りへのニーズを満たすためだ。

 人気カテゴリーであるからメーカー間の競争が激しい。だからこそ、ユーザーニーズを汲んだクルマが生み出されるという好循環が、クロスオーバーSUVの進化を支えている。