柴崎の縦パスは効いていた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 6月8日のスイス戦から先発10人を入れ替えて臨んだパラグアイ戦は4-2と勝利。

 立ち上がりから巧みなゲームメイクが光ったのが、ボランチの柴崎岳だ。開始1分にいきなりズバッと前線にパスを付けると、その後も香川真司や岡崎慎司に同じようなパスを送る。足もとへの横パスが目立ったスイス戦とは違ってパラグアイ戦では、このMFが縦へのスピードを生み出すことで、日本が相手ゴールに迫りそうな場面がいくつかあった。
 
 この日の柴崎はプレースキッカーとしても素晴らしかった。40分にFKをバーに当てると、後半にはCKからオウンゴールを誘発。それ以外のセットプレーでも際どいボールを蹴っており、現時点でフリーキッカーとしては本田圭佑よりも明らかに上だろう。
 
 柴崎の縦パスを警戒したパラグアイが中央部のエリアに意識を向けると、今度は武藤嘉紀と乾貴士がサイドから切り込む。4-2-3-1システムの右サイドに入った武藤は空中戦での競り合いで強さを見せつけると、地上戦になっても当たり負けしなかった。むしろ相手を吹っ飛ばすくらいの太々しさがあり、不慣れな右サイドとはいえ好印象を残した。
 
 もちろん、乾貴士の活躍も忘れてはならない。51分に香川真司との連係から技ありミドルを突き刺すと、63分にも同じような角度から再び右足でゴールネットを揺らす。32分にスローインから先制されて少し沈んだムードを払拭したのが、このテクニシャンだった。「個の部分で打開する」という敵エリア付近での大前提をひょうひょうとやってのけるあたりに、乾の底力を感じた。
 
 さらに1得点・2アシストの香川も、スイス戦の本田に比べればトップ下として十分な働きをした。80分の原口元気からのプレゼントパスをモノにできなかったのはいただけないが、3ゴールに絡んだ働きはやはり評価に値した。

 軽快に相手を交わしたり、後方からのパスを巧みなターンで受けたりと“らしさ”は見せていただけに、この試合でのパフォーマンスはポジティブに映った。
 
 もっとも、文字通りフレンドリーマッチの雰囲気で戦っていたパラグアイのスタンスを考えると、手放しでは褒められない。むしろ、そんなパラグアイに先制されてしまうところに看過できない問題がある。3-1とリードして迎えた90分にもリチャル・オルティスにミドルを決められた点も含め、無失点に抑えきれない守備陣には相応の課題が残った。
 
 スローインを含むセットプレーでの対応がなにより厳しかったので、本大会でも極力相手にそうしたチャンスを与えたくない。ファウルをするならセンターライン付近と、一種のマリーシアを駆使しないとワールドカップでは勝てないだろう。
 
 攻撃に目を向けても、決定機逸が多かった。オフサイドになったとはいえ、69分の無人のゴールへのシュートミスには失望させられた。ストライカーなら少なくとも枠に入れないといけない。
 
 パラグアイの運動量が後半になって明らかに落ちた影響もあり、日本が結果的に快勝したものの、攻撃と守備の両方で詰めの甘さがあったのも事実だ。
 
 ケチをつけようと思えば、どんな試合でもそういうことはできる。ただ、細かい内容はどうあれ、ワールドカップ前に勝利できたのがなにより大きいだろう。
 
 ただ、これで頭を悩ませることになったのが西野朗監督だろう。チームとしての戦いぶりはいわゆるレギュラー組を使ったスイス戦より断然良かった。もちろん、スイスとパラグアイで力量の差はあるが、パラグアイ戦に出場した選手の多くがアピールしたのは事実だ。
 
 さて、西野監督はコロンビア戦に向けてどんなスタメンを思い描くのか。香川か本田か、大島か柴崎か……。指揮官は頭を大いに悩ませることになるだろう。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
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