12日のパラグアイ戦は4-2で勝利し、久しぶりに気持ちのいい試合でした。ですがこれはワールドカップ本大会ではなく準備のためのゲームです。勝利に浮かれることなく、しっかりと課題を見つめなければなりません。

僕は日本にとって一番の課題がこの試合でも現れていたと思います。それは先制されてしまったこと。本大会で先に失点してしまうと、どうしても試合の流れを相手チームに持って行かれてしまいます。2失点とも守備の人数は整っていました。ですが、そこをこじ開けてくる選手が対戦相手にはいます。しっかりとマークして寄せるということをもう一度確認してほしいと思います。

一方で修正された課題もありました。僕はスイス戦のあと、バランスの調整が必要だと書きましたが、今回は前線の選手から最終ラインの選手まで意思統一ができていました。前の選手が追えば、後ろも積極的にラインを上げています。もちろんボールが取れなかったこともありましたが、選手たちの意識は統一されてました。

また、今回の采配で見事だと思ったのはスイス戦と合わせて全員を使ったことです。もちろんコンディション調整と言うこともあったのでしょうが、全選手がピッチに立ったことで、「チームとして戦う」という監督の意志をはっきり選手に示すことができたでしょう。

一度は試合に出たことで、チーム全員が自信を持って本大会に臨むことができます。けが人が出たとき、代わりの選手は慌てなくてすみます。チームのモチベーションが上がったでしょうし、さらに活性化するでしょう。

前線の選手の組み合わせを試せたのも、この試合のよかった点です。これまでの連載で何度も書いてきましたが、乾貴士と香川真司のように同じチームでプレーしていた選手を同時に使うことで、コンビネーションだけで局面を打開できるのです。日本の1得点目で見られたように、ふたりの連係プレーで流れが変わりましたし、攻撃のリズムに変化が付きました。本大会を前にその点の確認もできました。

では本大会の先発はどうなるか。僕はまだわからないと思います。たとえば、パラグアイ戦の香川の出来はよかったのですし、スイス戦の本田圭佑はボールロストが多かったのですが、本田はチャレンジした結果、ボールを奪われていたのです。本田には体を使ったボールキープという別の特長があり、どちらが使われるか断定できません。

そういう意味で、1人ひとりがいい意味で危機感を持ってワールドカップに臨むことができるでしょう。ぜひがんばってほしいと思います。