今回のビジネス女子マナーは、PR会社勤務の本間伸子さん(仮名・34歳)からの質問です。

「声が低く、早口なのがコンプレックスです。会議のときなど、話すことをあらかじめ決めているときにはいいのですが、議論がヒートアップしたりしたときなど、つい地が出てしまい、失敗した〜と思ってしまいます。仕事で好感が持たれる話し方のコツを教えてください」 

仕事での話し方を変えたくて、ボイストレーニングに通う働く女性も増えています。ビジネスの現場で好感を持たれる話し方と声の出し方について、鈴木真理子さんに教えていただきましょう。

☆☆☆

公私で話し方をキッチリ分けることが重要

俗に言う「いい声」というものもありますし、耳心地のいい声を美しく響く澄んだ音色に例えて「鈴を転がすような声」と言ったりもします。そのような声の人は憧れですよね。コンプレックスがあるのは私も同じ、相談者さんのお気持ちはよくわかります。さらに早口、こちらもおソロです。でも、声は生まれつきのもの。「もっといい声になりたい」「もっといい声が出せれば好感が持たれるのでは」と思ってしまいますよね。でも、声はその人の個性です。もともとの声を無理やり変えて、いわゆる「正しい発声の仕方」にしても、個性と一緒にあなた本来の魅力がなくなるだけ。それでは、本末転倒ですね。

早口なのはせっかちな性格だから?興奮したときにまくしたてるから?原因はいろいろあるでしょう。それを踏まえて、「公私で話し方をキッチリわける」ということがなによりも重要です。話し方において、ビジネスの現場で重要なポイントは4つあります。それだけをわきまえておけば大丈夫ですよ。それでは、見ていきましょう。

(1)ワンセンテンスを短くして端的に話す

プライベートの会話では「やんわりと濁す」ということも重要ですが、ビジネストークは端的に。「結局何がいいたいの?」「で、今問題になっているのは何なの?」となるのが、もっとも作業効率を落とす要因となります。ワンセンテンスを短くして、会話でも読点を打つつもりで話しましょう。「〇〇なんですけど〜、それで〜、だから〜」と句点で繋げてダラダラさせてしまっては、聞き手には論点がつかめません。そして、語尾の「です」「ます」まで聞こえるようにすることも重要です。口をしっかり動かして、あいうえおの母音をハッキリと、口を大きく開けて話すよう心掛けると、早口な人でも、おのずとふだんよりもゆっくりとしたペースになるはずです。

(2)「仕事の私」をどう演出したいか考える

仕事での話しぶりは、あなたの知性やイメージを左右します。自分自身、「仕事の私」どう見られたいかを考えましょう。いつでも冷静な人、感情に流されない人、知的な人、奥ゆかしい人……など、「仕事でこう見られたい私」のイメージが出てきませんか?次に、そのイメージに合致する人は誰なのか、ピックアップしてみてください。憧れの歌手や女優さんでもいいですし、職場やお客様でもいいです。その人は、どういう話し方をしているでしょうか。たとえば、あなたが「仕事の現場では、いつでも冷静な人だと思われたい」のであれば、あなたが「あの人って、いつでも冷静だよな」と思う人を探してお手本にしましょう。そして、その人の言動を見て、まずは同じようにしてみてください。

(3)言いたいことの70%〜80%に留める

「話したあとに後悔してしまう」という人が一番コンプレックスを感じる瞬間は、「言わなくてもいいことを言ってしまった」ときなのだそうです。緊張したり、興奮すると、つい言葉を重ねてしまうという人におこりがちです。頭の回転がよいとか、機転が利くという点は高評価につながりそうですが、ビジネスや人付き合いでは慎重なくらいがちょうどいいのです。

自分のことをわかってもらいたい、という気持ちからだったり、相手によかれと思ったからの行為だったとしても、相手によっては不快になることもあるので注意が必要です。
今までより70〜80%くらいに言いたいことを留める気持ちで。緊張したり、興奮したりしてしまったら、いったん黙るということを習慣づけましょう。

(4)正しい敬語を身につける

公私をきっちり分けているかどうかが、もっとも伝わりやすいのが「敬語の使い方」です。今一度、敬語の復習をしましょう。流行り言葉や誤った日本語を頻発すると、「この人に仕事を任せられるかな?」と誤解されかねません。どんなに早口な人でも、プライベートでは使わない敬語を使うときには、いったん脳で敬語変換されますよね。その分、スローにもなるはずです。

声質よりも「話し方で損をしている」という働く女性は少なくありません。



■賢人のまとめ
声はその人の個性です。もともとの声を無理やり変えて、いわゆる「正しい発声の仕方」にしても、個性と一緒にあなた本来の魅力がなくなるだけ。そこは気にせず、「公私で話し方をキッチリわける」ということに重きをおきましょう。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

(株)ヴィタミンMサイトhttp://www.vitaminm.jp/