銀座のシンボルでもあるネオ・ルネッサンス様式の建築は、半世紀近く時を刻み続けている/撮影/北村康行

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正時に銀座四丁目の交差点に「キーンコーンカーンコーン」と鳴り響く、「銀座和光」時計塔のウェストミンスター・チャイム。実はこのチャイム、1954(昭和29)年6月10日の「時の記念日」から、半世紀以上に渡り交差点を行き交う人たちに時を知らせてくれている、歴史ある銀座の音なのだ。その銀座のシンボルである時計塔が、「時を休もう。」というコンセプトのもと平成最後の「時の記念日」に合わせ6月9日(土)〜10(日)の2日間だけ止まった。これは、和光本館リニューアルによる一時閉館時の2008年以来10年ぶりのことだそう。

直径2.4mの大きな時計には、「時を休もう。」のタペストリーが掲げられた/撮影/北村康行

「時の記念日」は、天智天皇が漏刻で太鼓や鐘を打って時を知らせる「時の奏」を行った日が、671年6月10日と「日本書紀」に記されていることから、1920(大正9)年に東京天文台(現在の国立天文台)と生活改善同盟が、日本国民に時間の大切さを尊重させ、時間をきちんと守り、生活の改善・合理化を図るために制定したそう。

そんな意義のある記念日に合わせ、セイコーホールディングス株式会社が、全国の10〜60代の男女1,200人を対象に時間意識に関する実態調査を行い、「セイコー時間白書2018」としてまとめた。

その調査結果によると、「時間通りに効率的に行動する、時間管理意識が強い日本人。オンタイムだけでなくオフタイムでも、時間にせかされ、時間に支配されている」「現代人の“時価”が上昇中。2018年の時間価値、オンタイム3,882円/時間(昨年3,669円/時間)、オフタイム7,226円/時間(昨年6,298円/時間)と昨年より上昇」「最も大切にしている時間帯は「金曜日の22時」。昨年に比べ、より“休みの時間”を重視する傾向へとシフト」「日本人は休み下手!? 時間管理意識の高さゆえに、うまく休めない」など、時間に追われている現代人の実態が浮き彫りとなった。

そこでセイコーは、「時間はもっと自由で、ワクワク・ドキドキ、毎日を楽しくするみんなの味方であってほしい」と、銀座のシンボルである和光の時計台を止め、休日を楽しむ観光客や、休日でも働くビジネスマンなど街ゆく人たちに時間について考えるキッカケを提案した。

和光前では、「時を休もう。」のロゴがプリントされたTシャツを着用したスタッフが、コンセプトを記したカードを配布。受け取った人たちは、交差点側に移動しビル屋上の時計塔を見上げ「本当だ!」「知らなかった」と、意外な取り組みに感嘆してした。さらに、TwitterなどのSNS上には「時間を忘れて過ごそうという意味を込めているのかな?」「和光の素敵な提案」「本来あるスローなペースで活かしても良いんじゃね!?」などのコメントと一緒に、垂れ幕が掛かった時計台の写真が多くアップロードされた。

「時の記念日」制定から約100年経つ現在。「時間を守る」という日本人の国民性は、海外から注目されるほど世間に浸透した。時間に追われがちな現代社会。ちょっと立ち止まって、「いい時間って、なんだろう?」と、日々の時間の使い方について見つめ直してみてはどうだろう?(東京ウォーカー・取材・文=北村康行)