ハーバード卒業式にて、すみれさん(写真左)と寮長の教授と。すみれさんのブログ「ハーバードからの手紙」より

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大分の公立高校から、塾通いも海外留学経験もないままにハーバード大学に現役合格。論文で最高賞を受賞して卒業後、ジュリアード音楽院の修士課程に進み、この5月にはこちらも最優秀賞を得て卒業―-。

さらに、現在はバイオリニストとして活動しながら、東京大学医科学研究所のプロジェクトメンバーとしての活動実績もあるなど、信じられないような経歴を持つのが、廣津留真理さんの一人娘、すみれさん。

ハーバード卒業式にて、すみれさん(写真左)と寮長の教授と。すみれさんのブログ「ハーバードからの手紙」より

100%自学で、なぜ世界基準の英語力を身につけ、ハーバードに合格し、さらにハーバードで首席卒業という素晴らしい結果を出すことができたのか? 

その鍵を握るのが、母である廣津留真理さんが独自に編み出した家庭学習メソッドだ。

廣津留さんは現在、すみれさんとの家庭教育の経験をベースに確立したムダなし英語学習法「ひろつるメソッド」を用いた英語教室を主宰し、一般向けセミナーも合わせて受講者数は4500人を超える。また、ハーバード生を講師として呼び、大分で開催しているサマースクール「Summer in JAPAN」には、毎年、国内からだけでなく、世界10数ヵ国から小中高校生が参加している。

その廣津留さんが、すみれさんがハーバードに合格するために欠かせなかった習慣としてあげるのが、小さい頃からの「TO DO リスト」作りだ。すみれさんはなんと小学1年生から自ら「TO DOリスト」を作っていたという。

廣津留さんに、学校ではけっして教えてくれない、「自らのタスク管理をする習慣作り」について、語ってもらう。

ハーバード生は締め切り当日に課題を仕上げる

私が地元・大分で開催して6年目を迎えるサマースクール「Summer in JAPAN(SIJ)」には、毎年100名ものハーバード生が「SIJ講師になりたい」と応募してきます。合格倍率は約10倍。採用にあたっての筆記試験作成も2次試験の面接も私自身が行っています。

ハーバード生を観察していて思うのは、とにかくみんな時間管理が上手だということ。彼らはまず、与えられた課題は締め切り当日に取り組みます。それは、締め切りギリギリでも仕上げられる、という自信があるから。子どもの頃から、多くのタスクに同時並行して取り組みながら培ってきたスキルがあるのです。

ハーバードに入学するような学生は、小さいときから5教科以外に音楽やスポーツなどの分野で自分の得意を伸ばし、ボランティアやインターンシップといった課外活動を積極的に行っています。やるべきタスクは膨大ですから、時間管理が上手な人=ハーバード生なのです。

娘のハーバード時代を振り返ってみても、ラップトップには30秒ごとに重要なメールが次から次へと来ているような状況でした。論文提出、コンペティション、オーディションなどの締め切りが毎日のようにありましたが、TO DOリストで時間を管理するクセがついていたからこそ、学業も課外活動もこなせたのでしょう。

私は家庭教育でこそ、初期の段階からTO DOリスト作りを導入し、小さいうちから時間管理の習慣をつけさせることをおすすめします。自らのタスク管理をする方法は、学校や塾では教えてくれないのです。

ハーバードの仲間たちとすみれさん(写真中央)。一度に多くのタスクを進める技術は、TO DOリストで身につけたという 写真提供/廣津留真理

TO DOリスト活用で得られる5つの効果

TO DOリストの効用は大きく5つあると思います。一つひとつを順に解説してみましょう。

時間管理が上手になる

優れたビジネスパーソンには、限られた時間を有効に使うタイムマネジメントの手段としてTO DOリストを活用している人が少なくありません。グローバル時代を生きていくこれからの子どもたちにも、タスクを見える化するTO DOリストは欠かせないアイテムです。

脳内整理力とメタ認知能力が身につく

「あれをやらなきゃいけない」「これもやらなきゃいけない」とやるべきことが無秩序に頭のなかをグルグル回っていると、脳へのストレスになります。TO DOリストで複数のタスクを見える化して、何から優先的に手をつけて片付けるべきかをはっきりさせると、脳への余計なストレスが減らせます。

限られた時間を管理し、瞬時に優先順位をつけてタスクをこなす能力は、「脳内整理力」といってもいいでしょう。あるいは自らを客観的に俯瞰して観察できる「メタ認知能力」ともいえます。これらの能力は、膨大なタスクにも効率よく取り組み、クリアしていくマルチタスク力を支えてくれます。

達成感と自己肯定感が得られる
  
TO DOリストにリストアップしたタスクのうち、終えたタスクは該当するチェックボックスに☑を入れたり、線を引いて消したりします。☑を入れたり、線を引いて消したりすると、課題が一つひとつ着実に片付いていることが実感できます。それは達成感と成功体験につながります。
  
「しつけ」をしなくても親の悩みが解決する
  
私にはハナから「しつけ」という発想がありません。しつけという言葉には、親が上から目線で「○○しなさい」と命令するというネガティブなイメージが強いからです。

「○○しなさい」は子育てのNGワード。親と子どもは別人格であり、たとえ親子でも互いの人格を尊重したいものです。最後は自分でやるかどうか。親が一方的に上から目線で何かを指図しても、根本的な問題は解決しないと私は思います。

親御さんには、子どもが「部屋を片付けない」「勉強をしない」「習い事の練習をしない」といった不満・イライラを抱える方も少なくありません。

「Show, don't tell」で親がやってみせて子どもを誘導するのがいちばん効果的ですが、TO DOリストに「部屋を片付ける」「英単語を覚える」「ピアノの練習をする」といったタスクを書き込むことで、自らをメタ認知し、自己管理するクセが芽生えます。

小さいうちにTO DOリストでタスクに主体的に取り組む習慣を身につけさせれば、あとはお子さんが自ら学ぶようになります。いつまでも「○○しなさい」「もう○○したの?」と言う必要がなくなるので、忙しい親御さんほど助かるはずです。
  
ゼ分の得意と個性が伸ばせる
  
ハーバード生だけではなく、これからのグローバル社会を生き抜くには、他の人にはない自分らしい個性と得意を伸ばすことが求められます。お母さんやお父さんに音楽でもスポーツでもコンピュータでも料理でも読書でも、これが得意、これが好き、と言えるものがあれば、それをお子さんに伝授してあげてください。

個性を活かして得意を伸ばすには、日常生活で何かに集中して打ち込む時間を作り出す必要があります。得意に磨きをかけるには、それを長い期間続けなくてはなりません。その間一つのことをやり抜く力(グリット)を養うためにも、TO DOリストは役立ちます。

まず親が率先してTO DOリストを活用する

娘がTO DOリストを使っていたのは、私が「これからTO DOリストを活用して時間管理をしっかりしなさい」と口頭で言って聞かせたからではありません。

私自身、娘が赤ん坊の頃から家庭学習タスク(散歩や読書も含めて)をリストアップし、手帳に書き込んではチェックしていました。TO DOリストの課題が一つ終わるたびに線を引いて消して喜んでいる私の姿を見て、やがて娘は楽しそうだと思ったのでしょう。画用紙や好きなノートをTO DOリスト帳として使うようになりました。

廣津留さんが手帳に書いていたTO DOリストを再現したもの 『成功する家庭教育 最強の教科書』より 

娘がTO DOリストにリストアップしていたのはおもに、2歳から始めたバイオリンや4歳から始めたピアノの課題です。たとえば、バイオリンのコンサートに向けた課題曲の練習を行うときなど、終えたら線を引いて消していましたが、やがて大きめの付箋にタスクをひとつずつ書き出し、個室の壁に下げたボードに貼り出すようになりました。

娘は、その頃をいまになって「その日のレッスンを精一杯やり切った後に、付箋を剥がすのが何よりの快感だった」と振り返っています。子どものうちのこうした達成感と成功体験の日々の積み重ねこそが「やればできる」という前向きな自己肯定感を涵養してくれたのだと思います。

すみれさんは、レッスンで先生から与えられた課題をリストアップし、クリアするとシールを貼るスタンプラリー式練習帳を作成していたことも。イラストもまじえて、To Do リスト作りを楽しんでいた 写真提供/廣津留真理

グリットを養い、得意を伸ばす

これからのグローバル時代を生き抜いていくためには、5教科以外の得意を何か身につけておく必要があります。ただし、得意を伸ばすためには、当然時間がかかります。前述の通り、タスクを積み重ねる地道な努力を続けるための「やり抜く力=グリット」を養うためにもTO DOリストは不可欠です。

グリットを高めるために有効なのは、少し遠い未来にある中・長期的目標を先に定めてしまうこと。たとえば「○○コンクールに入賞する」「●●の大会で優勝する」「今年は本を200冊読む」など。中・長期的目標が定まったら、いつまでに何をやっておくべきか、という短期的な目標が見えてきます。

そうすれば、今月するべきこと→今週するべきこと→今日するべきこと、と逆算できるでしょう。タスクを小さくブレイクダウンするクセがついてきたら、あとは「今週のタスク」「今日のタスク」をリストアップし、日々クリアしていくだけです。

ウィークリーTO DOリストの一例。英語でも書けば子どもと一緒に英語を学ぶこともできる 『成功する家庭教育 最強の教科書』より

娘がハーバード大学に合格できたのは、子どもの頃からTO DOリストをつける習慣を持っていたからこそ。娘はいまも活用しており、「ハーバードで多忙な学生生活を送りつつ、学業と音楽活動を両立できたのもTO DOリストのおかげ」と語っています。  

お金をかけずに教育することはできる

話が少しそれるようですが、我が子のハーバード合格までにかかった費用を大公開します。

小中校はすべて大分県の公立高校で、塾通いや模試受験などもなかったために、かかった学費は12年間で50万円ほど。

受験勉強は、高2の3学期に突然ハーバード受験を思い立った娘が、それからのわずか10ヵ月で、海外大学受験対策塾なども行かずにすべて自分一人で行っています。

そこで、受験対策と試験の費用は、

SATというアメリカのセンター試験用の本と、SAT受験料で2万円強。
英語の試験TOEFL代金2回分4万円強。
ハーバード大学の受験費用が9千円程度。

しめて約7万円です。

ハーバード大学受験は、アメリカに行かずに、すべてオンラインです。面接もスカイプです。たとえばもし東京の私立大学を何校か受験していたら、受験料だけで10万円以上かかっていたでしょうし、我が家は大分ですから往復の交通費や滞在費をプラスすると、かなりの額になっていたでしょう。

「お金をかけないと教育はできない」ということは、けっしてないのです。必要なのは「自ら学ぶ」環境を親が作ってあげること。TO DOリスト作りは、親が子に真っ先に身につけさせたい習慣といっていいでしょう。