新入社員の中には就活時代から使っていたビジネスバッグを卒業して、「リュック」に挑戦したいという人もいるだろう。ビジネスシーンで使えるリュックの選び方とは(写真:Graphs / PIXTA)

気がつけば6月。梅雨時ながら暑い日が増え、本格的なクールビズ期間に入った。新入社員のみなさんも、暑苦しいジャケットを脱いで、シャツ一枚で、軽やかに仕事している人が多いだろう。


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そうした軽装になじんでくると、入社当初(または就活の頃)から使っているビジネスバッグではなく、少しカジュアルな「ビジネスリュック」で出勤したいと思う人は多いのではないだろうか?

スーツやジャケット着用が必須な堅めの職場にいると「見た目が、ちょっとカジュアルすぎるかな」「ジャケットが型崩れするかも……」と、敬遠していたかもしれない。

しかし、シャツやポロシャツといったビジネスカジュアルがスタンダードになるこの時期は、両手をあけたまま軽快に荷物を持ち運べ、見た目も軽快になるビジネスリュックは、コーディネートとしてもぴたりとハマる。

ビジネス向きなリュックとは

さらに、ジャケットなどの型崩れを気にする必要がなく背負えるのも夏向きだ。そもそもノートPCを持ち運ぶ人が増えた今の時代には、2つのストラップで重さを分散できるリュックタイプは、最も合理的なビジネスバッグといえる。

街中でもそうしたリュックタイプのバッグを見かけるが、下手に選んでしまうとカジュアルすぎて、「あれ、これから遠征に行くの?」「それ登山用のザック? ザック・ジャパン?」など、季節柄、強引にサッカーのワールドカップの話にふりたがる面倒くさい先輩諸氏にひっかかるリスクもある。

そこで、「最初のビジネスリュックを選ぶときの注意点」を、松屋銀座の紳士部バイヤー・浅尾浩代さん、同紳士雑貨係の土屋宗大さんに聞いた。ふたりの話を参考に、5つのポイントをピックアップしてみた。

ポイント1 素材はナイロンで、細糸の素材がベスト

素材の定番は、やはり軽く丈夫なナイロンだ。レザー製のリュックもあるが、比較的重いうえに、雨にも弱いという特性がある。最初のひとつを選ぶなら、ナイロン製が無難だろう。

ただし「ナイロン製」といっても千差万別だ。「バリスティックナイロン」という、防弾チョッキの素材としても知られる、太め糸で編まれた分厚い生地もあれば、細い糸で編まれた薄手ナイロンもある。個人的には文字通り“バリバリ”のバリスティックナイロンを勧めたいが、土屋さんは「最初のひとつとして選ぶなら、きめ細かなナイロンのほうをお勧めします」と指摘する。

「太め糸で編んだ厚手のナイロンのほうが丈夫ですが、どうしても重さが出る。また生地に凹凸も出て、見た目のカジュアル感も強くなってしまうんです。一方、細い糸で編んだ薄手のナイロンは光沢も出て、高級感も出ますからね。どんな場所にも持っていきやすいという意味では、やはりきちんと感の強まる薄手タイプを選んだほうがいい」(土屋さん)

黒かネイビーならビジネスシーンになじむ

ポイント2 色選びは、合わせやすさで黒かネイビー

カジュアル度を抑える意味では、色選びも重要だ。結論からいえば黒やネイビーといったダークカラーがシックに見えて、ビジネスシーンでも浮くことはない。さらに、服とのコーディネートにも悩まずにすむので、使い回しという意味でも間違いないだろう。

逆にいえば、赤やグリーン、鮮やかなブルーなど、ナイロン素材のリュックで明るめの色を選ぶと、途端にアウトドア感が漂ってしまう。「『霞が関に行く』を『霞ヶ浦に行く』と勘違いでもしたのか」と、先輩にまたまた突っこまれそうだ。

もちろん、ファッション業界の上級者が「ハズし」テクニックとして、テーラードスーツにカジュアルなリュックを合わせることもある。しかしそれは、サッカーでいえばイニエスタ級のレベルが高い着こなしだ。楽天などのネット通販で探すにしても、黒やネイビーなどにしておこう。

ポイント3 ビジネスっぽさを決める。マチのサイズに要注意

実はビジネスリュックを選ぶ際に、最も注意すべきなのが「サイズ」だろう。

まずA4サイズの書類など、仕事で使うものがしっかりと入る大きさを選ぶのは基本中の基本。さらにPCを持ち歩くなら、言うまでもなく自分のPCがしっかりと入るサイズを選ぶ必要がある。ビジネスリュックの多くは、PC用のクッションがついているものも多いので、購入時は愛用のPCを「試し入れ」してみるのがいい。

そのうえで、大事なチェックポイントとして覚えておきたいのが「マチのサイズ」だ。マチとは言うまでもなく、カバンの奥行きのこと。アウトドア用のリュックは、基本的に「なるべく多くの荷物が詰め込めることを良し」とするため、マチがたっぷりととられているデザインが多い。逆にいえば、マチがたっぷりとられたリュックを選ぶと、“登山風味”が漂い始める。

「薄いマチのほうがすっきり見えるので、オフィスなどでも違和感が少なくなります。またデザインもあまり外のポケットなどが目立たないシンプルなものを選ぶほうがスマートに見えるのでお勧めですね」(浅尾さん)

奥行きが少ないほうがすっきり見える

ポイント4 汎用性なら、3WAYか2WAYを

リュックとしてだけではなく、横についたハンドルを持てばブリーフケース(鞄)になり、ショルダーストラップをつければショルダーバッグにもなる――。

こうした3WAYバッグは、ビジネスリュックの中でも最も売れ筋だという。理由はもちろん、使い勝手の良さだろう。

出勤や移動中は、リュックスタイルで担いだ楽ちんスタイルで使う。しかし、「いざ商談!」「これからプレゼン!」などとお客の先にうかがうときは、背負ったリュックをくるっとハンドル持ちに。「ブリーフケースですが、なにか?」と涼しい表情で対峙できる。サッカーでいえば、どんなポジションでもこなせる“ポリバレント選手”といったところだ。

ただ、3WAYバッグを選ぶときに気をつけたいのが「ブリーフケースをメインに使う」ことを念頭につくられた製品と、「リュックをメインで使う」ことを念頭につくられた製品で、つくりが大きく変わっていることだ。

前者の場合、「リュックとしても使える」という哲学にもとづいてつくられるため、リュック用のストラップが簡易的なつくりになっていることがある。リュックをメインで使う人にとっては、使いづらく、余計に疲れるということがある。自分の使いみちをよく考えたうえで選択するのがいいだろう。

「また、3WAYは確かに人気ですが、ショルダーバッグスタイルで使わない、という人も実は多い。そういう方は最近出てきたリュック×ブリーフケースの2WAYのみのタイプもいいでしょう。ちょっとした違いですが、余計な金具などが減る分、さらにすっきりとしたデザインとなり、軽さも出てきます」(土屋さん)

背負った姿を見てバランスを確認

ポイント5 必ず試着して、全身を姿見で見てから選ぶ

ブリーフケースやビジネストートなどももちろん購入前に手にとって、しっくりくるかを確かめるのがベスト。ブリーフケースのハンドルやショルダー同様、ビジネスリュックのストラップは、毎日、直接触れる部分。「なんか触り心地がわるい」「どうもしっくりこない」という違和感を覚えるなら、いくら機能的でデザインも気に入っていたとしても避けたほうがいいだろう。


ビジネスシーンに合うリュックの一例。色や体格とのバランスなども考えたほうがいい (筆者撮影)

それに加えて、全身を映す鏡で、背負った際の姿を横から見ること。場合によっては、あわせ鏡で後ろ姿を見ることもしておきたい。

リュックは背負うとほぼ体の一部に組み込まれるもの。手に持ってみているときは違和感がなくても、背中にそれがつくと、背負った人の体と比べて「やたら大きい」「妙に小さい」といったサイズの違和感が出てしまう。

「ブリーフケースなどは体と離れて使うので目立ちませんが、リュックの場合は気になってしまいます。小柄な方が大きいものを選ぶ、大柄な方が小さいものを選ぶのはできるだけ避けたほうがいいでしょう」(浅尾さん)

またコーディネート面でいえば、リュックのストラップの長さにも気をつけたい。ピタピタに締め上げると、荷重はラクになりそうだが、小学生のようなランドセル感が出てきてしまう。かといって、ダラッとストラップを伸ばしすぎると、中学生の部活帰りのようなだらしなさがにじむ。

また値段はピンキリだが、モノの良し悪しを見るうえで「ストラップのつくり」もチェックしておきたい。担いだとき、クッション性があって、つけ心地がよいものは丁寧なつくりをしている証拠だ。何よりも、長時間背負っていると疲れるものは避けたい。

そろそろボーナスの時期。この記事をアシスト代わりに、ビジネスリュックを選んでみるのも、夏のボーナスの使いみちとしては、いいゴールではないだろうか。