東京・銀座のランドマークといえる商業施設「和光」の時計塔が「隠された」―。いったいなぜ?

2018年6月9日0時、和光本館の時計塔の文字盤が、突如として白い布で隠されてしまった。その代わりに掲げられたのは、「時を休もう。」なるメッセージだ。本館前の通りにはこれに気づき、スマートフォンで撮影する人の姿も見られた。

Jタウンネット記者はさっそく現地に飛ぶとともに、和光を展開するセイコーホールディングス(本社・東京)の広報担当者にその理由を聞いた。


和光の時計塔の文字盤が見えなくなっている

「時間について見つめなおすきっかけにしてほしい」

セイコー・広報室の吉野周さんは、これは6月10日の「時の記念日」にちなんで、同社が仕掛けたものだという。


左右の面の時計塔も白い布で覆われている

いったいなぜこんなことを考えたのか。セイコーは2017年から「時間」についての意識や実態を調査し、「セイコー時間白書」として発表している。

今回、2018年5月9日〜14日まで、全国の10代(15歳以上)〜60代の男女1200人にインターネットを通してアンケート調査を実施したところ、「時間に追われていると感じている」(64.3%)人が多いことがわかった。


「時間に追われていると感じるか」の調査結果

吉野さんは

「こうした調査結果や、現在政府によって進められている「働き方改革」で時間の使い方が見直されている実態を踏まえ、長年『時間』に携わる企業として、メッセージ性のある企画を何か実施したいと考えました」

と話す。

そこで「平成最後の時の記念日」である6月10日を含む連休を、「時間について見つめなおすきっかけにしてほしい」との思いから、時計を隠すことにしたのだという。

めったに入れない和光の屋上に潜入!

和光本館ならびに時計塔は1932年に建てられた。本館は約30メートル、時計塔は約9メートルの高さだ。時計の文字盤は直径2.4メートルの大きさで、遠くからもよく見える。今回特別に本館の屋上に入れてもらうことが叶い、時計塔を間近で見ることができた。屋上は普段は一般公開されていない。


屋上から撮影した時計塔

時計は4面ある。吉野さんに聞いたところ、それぞれがほぼ正確に東西南北を向いているという。6月9日・10日は背面の文字盤以外、すべて白い布で覆われている。背面の文字盤の下にはドアがあった。何か秘密が隠されているのではないかと思い聞いてみると、「機械室」だと教えてくれた。この中で4つの文字盤をコントロールしているのだという。


このドアの向こうに時計を動かす機械室がある

実は時計の見た目は変わらないが、1932年以降、ゼンマイで動く「機械式」から電池で動く「クォーツ式」に変更、GPSの導入など性能は年々進化しているという。

吉野さんは

「秒針がないので意識されていない方も多いかと思いますが、実は非常に正確な時間を表しているんです」

と笑いながら話していた。


背面の文字盤

時計が姿を隠すのは、2008年の和光本館リニューアルに伴う一時閉館以来の10年ぶり。しかし意図的に姿を隠すのは初の試みだという。吉野さんは

「休日くらいは時間に追われずに過ごしてほしい」

と話した。

文字盤は6月10日24時まで隠している。なお、深夜0時から8時までを除き、1時間ごとにチャイムは鳴る。