パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり派遣先に就業に行く契約で、派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「なぜ派遣を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている本山千紘さん(仮名・30歳)にお話を伺いました。ゆるめのロングウェーブに、ビジューの付いた白のサマーニット、紺のフレアスカートにナチュラルストッキングを穿き、黒のローヒールパンプスを合わせた着こなしは、合コンなどでも好感度が高そうです。ピンク色の老舗ブランドのトートバッグの中には、クーポン券がついた無料タウン誌や、タオルハンカチが入っているのが見えます。「以前、リフレの仕事をしていたので、マッサージ情報はつい見てしまうんです」と語る千紘さん。

現在は、コスメ商品を扱う企業で、経理のサポート事務として働いています。「結婚しているため、扶養内での勤務を希望しているので、派遣で週4日勤務で働いています」という彼女。スキルアップをして転職をしたり、正社員登用は考えていないと言います。

千紘さんは東京都足立区で生まれ育ちました。実家は鍋や海鮮料理がメインの居酒屋で、父と母以外にも、父方の祖母も店を手伝っていました。2歳年上の兄、4歳年下の妹の5人家族です。

「店と住居は別だったのですが、子供の頃は学校が終わると、ランドセルを背負ったまま店の座敷に行って、宿題をしたり兄弟で遊んでいました。親が店の仕込みをしているのを見ていたので、ご飯を残したり、食べた後が散らかっていたりする客を見ると、マナーが悪いなあって思っていました」

千紘さんの実家の居酒屋は、今も営業を続けています。

「今は、店は4歳下の妹が手伝っています。妹は20歳の時に結婚して、子どもが2人いるので“子連れで働ける場所がないからここで働いている”って言っています。実家に妹夫婦も住んでいて、両親と祖母と家族が多いので、とにかく家を出たかったんです」

中学では、シャツのボタンを締めずに胸元を大きくあけたり、髪を茶色に染めてみたりと目立っていたと言います。

「中学に入学すると、3年生に兄がいたのでいじめられたりとかはなかったんです。兄が結構、目立っていたので“ああ、〇〇君の妹か”っていう感じで、修学旅行のお土産を貰ったり、先輩にも可愛がられていました」

高校では、派手目なグループの一員でした。ダンスが好きでしたが、部活がなかったので、自分たちで仲の良いグループでHIPIHOPのダンスを放課後は踊っていました。

「高校は、普通科だったんですが進学に熱心な学校ではなくて、行きたい人は自分で勉強したり予備校に通って、大学にいくっていう雰囲気でしたね。校則も厳しくなかったので、ウエスト部分で折り込んでスカートを短くしてはいていました。居酒屋とかコンビニのバイトがない時は、駅前のガラスになっている壁の前でみんなでダンスの練習をしていましたね」

将来を考えた時、ダンサーとして食べていくのは難しいと思い、トリマーやネイリストなどの資格に興味を持ちます。

「兄が内装業や工事をやりたいと、工業高校に進学したんです。それを見ていて、私も何か資格が欲しいって考えました。ネイリストとかもいいなって思ったのですが、男女ともに利用するサービスがいいって思って、高校を卒業後はリフレクソロジーが学べる学校に進学しました」

手に職をつけたものの、ハズレの職場に嫌気がさす

専門学校に半年ほど通って、リフレクソロジーの資格を取得します。

「マッサージなら、覚えておいても日常生活にも使えそうだなって思ったんです。親からも”マッサージしてよ”ってよく言われます。でもアロマオイルの種類や、反射区という足の裏のツボなど、マッサージ以外にも覚えなければならない用語が多くて、最初はノートを何度も読み返しました」

就職では、リフレクソロジーを中心としたサロンに決まります。

「就活は、学校に来ていた求人ですぐに決まりました。ダンスもやりたくて、ちょっとフリーターもしていたので、就職したのは20歳の時です。お客さんとの距離が近い職業なので、制服のシャツは汚れていないか、まとめ髪にした髪は顔にかかっていないか、汗など不快な匂いはしないかなど身なりには気を使いました」

リフレクソロジーの仕事自体は、自分を指名してくれるリピーターもいてやりがいがあったと言います。

「仕事は意外と肉体労働で、腰が痛くなったりもしたのですが”ありがとう”って言われると嬉しかったです。でも同じ店舗でリーダー格だった女性がいて、大変だったんです」

就職先でつらかったのは、人間関係だと言います。

「シフト制だったのですが、最初はベテランのスタッフと同じ日にシフトが組まれることが多いんです。よく組んでいた女性が、自分よりも10歳以上年上の子持ちの女性で、全然話が合わなくて、昼休みが苦痛でした」

女性が多い職場で、みんなと同じ行動をとらなければならない雰囲気が苦手でした。

「本来なら、昼休みは1時間あるのですがその女性は30分しか昼休憩を取らないんです。そのせいで、外に食べに行けず休憩室でコンビニ飯やサラダを食べるしかなくて。就職してから、体重が2キロ減りました。彼女は時短勤務だったので、業務時間内に事務作業なども終わらせたかったので、残りの休憩時間に日誌などの業務をしていたんです。そのせいで私の昼休みも短くなって、ストレスでした」

さらに、ベテランスタッフの女性の態度が我慢できなくなります。

「ランチに出ても向こうが少し高いものを食べても、一緒に払われて割り勘で代金を請求されたり。職場の人間関係で悩んでしまって、上司に相談したんです。どうやらその女性の下になった若手は、今まで2人辞めているらしくて、ハズレの職場でした」

正社員として働いていましたが、23歳の時に退職します。

「引き留められたのですが、条件にこだわらなければ就職できそうだったので退職しました。結局就職はせずにスパなどの施設で曜日固定で働いたり、普通に飲食業で接客をしたりフリーターをしていました」

リフレクソロジーは、力が足りずよく筋肉痛になっていた。

フリーターで働いている時に、現在の夫と知り合い結婚するも、夫婦の財布は別々で……!?〜その2〜に続きます。