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あなたは予算書・決算書を正しく理解できているだろうか。「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」では、そのポイントを8つのパートにわけて解説した。第4回は「賞与・昇給の算定法」について――。

■業績連動型賞与の計算式とは

政府が経済界に賃上げを求める官製春闘が5年目となった。経団連は「3%の賃上げ」を受け入れ、連合は「ベアを含む4%アップ」を要求。が、そもそも賃金には正しい決め方がある。

企業が社員に支払う賃金には、下限がある。毎年人事院が総務省の「家計調査」に基づき算出した「標準生計費」だ。原則的にはこの標準生計費を上回っていないといけない。しかし、それでも「うちは給料が安い」と感じている人たちも多いだろう。

支払わなければならない賃金として、定期昇給、賃上げ(ベア)、さらに固定的生活一時金としての賞与がある。

定期昇給は年齢や勤続年数に応じて上がる。上乗せ分である賃上げ(ベア)は物価上昇分や自社の初任給の上昇分、同業他社との賃金水準比較、GDPの上昇に伴う実質賃金の向上などが勘案されて決まる。固定的生活一時金としての賞与は、基本給の約3カ月分が一般的だ。

目標利益を超過した実績については、成果配分賞与として社員に還元すべきである。近年では、業績連動型賞与を採用する企業が増えている。

たとえば、ある大手メーカーの場合、固定部分4カ月に、業績連動分として0〜2カ月を加えて支給する。業績連動分の原資は、前年度一般賞与支払い前の営業予想利益に、会社が決めた適正労働分配率をかけている。

ただし、適正労働分配率は人件費を粗利で割ったものが基本だ。というのも、会社が得た付加価値(粗利=売上高売上原価)のうち、どれだけの割合を社員に回すかを示す指標だからだ。

企業が内部留保を高めて無借金経営することは望ましいが、過度に労働分配率を下げて、儲かった分をすべて企業の取り分にするようでは、理念に反するだけでなく、優秀な人材が逃げていく。私は、そのような企業の経営者からコンサルティングを依頼されても断ることにしている。

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窪田千貫
マネジメント実務センター所長
1951年法政大学卒業。青山学院大学大学院で管理会計を学び、西陣企画室長など数社の実務経験を経て、59年経営コンサルタントとして独立。多くの企業の経営指導にあたる。

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(マネジメント実務センター所長 窪田 千貫 構成=岡村繁雄 撮影=相澤 正 写真=iStock.com)