東京に“ネブミ男”と呼ばれる男がいる。

女性を見る目が厳しく、値踏みすることに長けた“ネブミ男”。

ハイスペックゆえに値踏みしすぎて婚期を逃したネブミ男・龍平は、恋愛相談の相手としてはもってこい。

相手を値踏みするのは女だけではない。男だって当然、女を値踏みしているのだ。

そこで値踏みのプロ・龍平に、男の値踏みポイントを解説してもらおう。

これまでに、姫気質な「ワタシ姫」や、自称サバサバ系の鯖女子、カサカサお化けや夜泣き爺、夢見る夢子ちゃんなどを見てきた。

今週、彼の元にやってきたのは...?




「龍ちゃ〜ん、おひさ♡」

麻布十番の『honda』に、一際目立つ女性がやって来た。

しかも彼女は、良い年をしたおっさんに向かって“龍ちゃん”なんて大声で呼んでくる。

龍平は思わず苦笑いをしながら、美咲を迎えた。

「美咲、なんか雰囲気変わった?」

美咲はとても可愛らしく、そこらのアイドルに負けない容姿の持ち主だった。

数年前まではどっぷりと港区に浸かっていた港区女子で、当時はまだ社会人駆け出しだった龍平は全く相手にされなかった記憶がある。

「えー老けたってこと?ひどくな〜い?」

バシバシと龍平の肩を叩いて笑う美咲に、龍平は何とも言えない気持ちになる。

決して老けた訳ではない。美しさは変わらないし、むしろ益々磨きがかかって美しくなっている。性格だって良いままだ。

しかし美咲には、もっと根本的な所で未だに独身でいる理由があるのだ。


独身の男女に少なからず当てはまる?気づかぬうちに求める愛


食事中にスマホをいじる女


「最近、美咲ちゃんは何をやってるの?」

彼女は今でも港区女子ではあるが、自分で稼いで自立している、キャリア系港区女子だったと記憶している。

「仕事、頑張ってますよ。あと最近は...犬と遊んでるかな♫もう可愛くて♡チョコって名前なんだけど...」

そう言いながら、おもむろに美咲はスマホを取り出し、写真を見せてくれた。

犬は、可愛い。
それには何の疑いの余地もない。

ただ、食事の最初の30分間、ひたすらチョコという犬の写真を見せられながら、龍平は何とも言えない不思議な気持ちになっていた。

さらにその間に、誰かから引っ切り無しにLINEが入ってきて、犬の写真を見せるのとLINEの返信にと、美咲は大忙しなのだ。

-この子、こんな感じだったかな…。

龍平の記憶の中では、美咲はもっとツンケンしていて近寄りがたいイメージがあったが、どうやら彼女は少し変わったらしい。




「犬って可愛いよね...僕も昔、実家で飼っててさ...」

相槌を打ちながら、龍平は昔実家で飼っていた愛犬のポチを思い出す。賢い柴犬だったが、龍平が中学生の時に亡くなってしまった。

あの時の別れが悲しくて辛くて、未だに龍平はペットを飼えないでいる。

-ポチ、元気かなぁ...

幼少期のポチと過ごした日々を思い出し、一人でセンチメンタルな気分に浸っていると、また美咲は一生懸命スマホをいじっている。

「あ、ごめん。僕の話、つまらなかったよね」

慌ててポチから話を変えようとするものの、龍平はある違和感を抱く。

さっきから、美咲はずっとスマホを気にしているのだ。

「大丈夫?何か用事があるなら、無理しなくていいよ」

美咲の方が“話を聞いて欲しい”と食事に誘ってきたはずなのに、何故か龍平の方が、無駄な人の良さを発揮して逆に気を使っている。

「あ...ごめんね。違うの」

そう言ってまたこちらに笑顔を向ける美咲だが、食事中にずっとスマホを触るのはどうなのだろうか。

そしてここから、彼女が結婚できない本当の理由が明るみになってきたのだ。


美咲が結婚できない理由は“面倒”くささにあり?


他人に幸せを求める女


しばらく美咲と龍平、そしてスマホという奇妙な三角関係の会話が続いていたが、急に美咲は食べる手を止め、ウルウルと涙目になり始めた。

「え?ど、どうしたの!?」

隣で泣き始めた美咲を、龍平はオロオロしながらなだめる。これでは、まるで自分が泣かせているようにも見えかねない。

「実は先月彼に、“重い”って言われてフラれちゃって...」

「美咲ちゃんは素敵な女性だから、すぐに見つかるよ。それに男だって、世の中には何十億人もいるってみんな言っているじゃん。だから大丈夫だよ」

慰めになっているのかよく分からない言葉を投げかけるものの、美咲は泣くのを止めない。

「年を取るにつれて、焦りが増す一方で。早く結婚しないと、周りに置いていかれるでしょ?だから早く幸せに“してくれる人”を見つけたいのに」

この言葉に、龍平は心の中で小さくため息を吐いた。

泣いたことに対してではない。美咲は自分で自分を苦しめていると思ったからだ。




「でもさっきから引っ切り無しにLINEも鳴ってるし、友達も彼氏候補も多いでしょ?」

「あれは寂しいから、とりあえず誰かとLINEしてるだけよ」

美咲の言葉を聞いて、龍平は「やっぱりなぁ…」と小くつぶやいた。

彼女は、依存し過ぎている。彼氏と言うより、誰かに対する依存心が強すぎるのかもしれない。

依存心が強過ぎると、頼られている方の男は徐々に重くなってくる。その内面倒になってきて、厄介な女(=危険な女)と認定されかねない。

スマホをずっといじっているのも、誰かと繋がっている安心感があるからなのだろうか。

「私を愛して幸せにしてくれる人は、どこにいると思う?」

そもそも、幸せは“してもらう”ものではない。

自分の力で幸せになるものであって、何なら与えるものではないだろうか。

きっと元彼も、美咲の“幸せにして欲しい”という考え方に表れているような、依存心の強さに嫌気がさしたのではないだろうか。

依存心には際限がない。誰かに依存する人は、何をしてもらってもいつまでたっても、心の中は常に満たされない。

まずは自分の弱さに気づき、受け入れることが彼女の幸せの第一歩だろう。

「美咲ちゃんは魅力的な女性だし、もっと自分を信じてあげたら?自力で掴める幸せも、中々良いものだよ」

「でも今の私には、犬のチョコしかいないから…」

チョコがいるだけでも素晴らしい。

独りは寂しいし、不安になることもある。それでも自分を大切に、自信を持っていれば、いつか素敵な人に巡り会う時がくる。

何よりも、人を愛する前に自分を愛するべきだろう。

そして結婚にタイムリミットはない。自分が結婚したいと思った時にすれば良いし、年齢は関係ない。周囲の目は、もっと関係ない。

「龍ちゃんは、独りが好きだもんね」

別に好きで独身でいる訳ではない。

ただ、自分のことを好きで良いと思う。その先に、自分でしか作り出せない幸せがあると信じている。

しかしずっと独り身で、もはや最近の週末はAmazon Primeで好きなドラマを見ることに楽しさを見出している龍平。

「好きというか、独りに慣れたというか…」

そんな自分は、結婚にはまだまだ程遠いということを悟ったのだった。

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