50年以上愛されるシンガポールの食堂を訪問
元ハナコのシンガポール書簡/拝啓、〈星〉へいらっしゃいませんか? 第12回

第12回はシンガポールで長年愛されてきた食堂について。かつて駐留した英国軍人向けにつくられたColbarは、シンガポールの都市開発に伴って場所を移転。建物を解体し、パーツを再構築したことで昔ながらの姿をいまも残す、趣あるダイニングへ。

Hanako1156号が「食堂」特集だったと聞きました。ざっくばらんながら居心地のいい店内でいただく一汁三菜の様子を思い出し、口をついて出たのは「ああ、日本っていいなあ」という言葉。シンガポールにもあるのです、食堂。それも、クラシックなものが。創業65年を迎える〈Colbar〉といいます。

食堂熱に浮かされて、都心部からちょっと外れたシンガポール版食堂へ行ってまいりました。

Colbarは、またの名をColonial Barといいます。コロニアル=植民地の、の意からも想像がつくとおり、もともとは旧英国軍人向けにつくられた憩いの場でした。当時はもう少し北部に位置していたものの、一帯にAyer Rajah Expresswayが設置されることとなり、2003年、閉店を余儀なくされました。

が、同店を愛するファンたちの惜しむ声から、現在地への移転が決定。店の趣を損ないたくないからと、もとの店を解体し、そのパーツを使って再構築。現在のお店は2004年に再オープンした建物です。

エアコンはなく、ただファンが回っているだけ。ですが周囲を緑に囲まれ、そよそよとゆるい風が漂うノスタルジックな建物にいると、この蒸し暑さがほどよく感じられるから不思議。むしろ時折降るスコールですら、ムードの引き立て役と思えるほど。

旧英国軍の憩いの場ですから、英国&アイルランド産のビールが豊富にそろっています。テラス席でビールを飲むところを想像してみてください。最高ではないですか?

さて、肝心の食事は、ソーセージ&エッグやポークチョップなど、英国の家庭料理がベース(写真はソーセージ、エッグ、ベーコン&チップスにビーンズを追加したものと、シュガーレスのフレッシュ・ライムジュース)。そのほか、中華系メニューもスタンバイ。

お味は、正直、大味です。でもたとえ繊細でなかったとしても、この雰囲気を味わいながらいただくのは特別な体験だと感じられると思います。

冒頭でもお伝えしましたが、Colbarがあるこのエリア、都心部からは離れています。なので食事だけで終わらせず、ぜひとも周辺散策を楽しんでください。

一帯には、ブラック&ホワイトハウスと呼ばれる独特の建物が密集しています。1890年代から1940年代にかけて建てられた白壁と黒い木枠が特徴の建築物で、基本構造はイギリスのチューダー様式にならっています。

熱帯モンスーンの気候に適応させるため、アングロ・インディアンやマレースタイルも織り交ぜてあり、文化が混じり合うシンガポールらしい建物です。そのスタイリッシュさが受け、アーティストが好んで暮らしていたり、ギャラリーとして利用されたりしています。

また、マレー鉄道がかつて走っていたため、その路線跡を感じることもできます。シンガポールとマレーシアをつなぎ、2011年まで走っていたマレー鉄道。運行時は路線部分がマレーシア領だったため、当時を知る人たちは「この線路を横断するときは、マレーシアを超えているような気分だったなあ」と話していました。

残念ながら板でブロックされてしまっていて跡を見たり、線路上を歩いたりすることはできませんが、シンガポールの歴史に思い馳せる機会になるはずです。

そうそう、シンガポールはデング熱予防のために政府がベクターコントロールといって蚊の駆除を行っており、蚊に刺されることはほとんどないのですが、このあたりは草木が多いため、若干数、おります。刺されやすいようであれば対策してお出かけください。

実は夏から冬の初めにかけ、しばらく日本へ戻ります。なのでこのシンガポール便りは、しばらくお休みさせてください。帰国したら、食堂特集の巻頭のお店に連れて行っていただけますか? お会いできるのを楽しみにしています。

〈Colbar(コルバー)〉
■住所:9A Whitchurch Road, Singapore 138839
■アクセス:MRT Circle Line(黄色)「One North」駅より徒歩約15分※市内から車で約15分
■営業時間:11:30〜20:30
■定休日:月休
■電話:+65-6779-4859
■URL:https://m.facebook.com/pages/ColBar/179635178727085

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