道幅の広いバイパス道路のど真ん中で営業するマクドナルドがあります。日本でも唯一という店舗で、上下線からドライブスルーに立ち寄れるという有利な立地。なぜこのような店舗ができたのでしょうか。

県の募集にマクドナルドが応じて誕生

 郊外を通るバイパス道路の沿道に、大きな駐車場を設けた飲食店や商業施設など、いわゆる「ロードサイド店舗」が立ち並ぶという光景は全国で見られます。しかし、金沢市のある道路には、「ロードサイド」どころではなく、道のど真ん中で営業するマクドナルドが存在します。


マクドナルド福増町店。一般的なドライブスルー併設店に見えるが、じつは道路の真ん中に位置している(画像:日本マクドナルド)。

 その店舗は、金沢市の西郊に位置するマクドナルド福増町(ふくますまち)店です。市の郊外を結ぶ金沢外環状道路 海側幹線のうち、上下の車道を隔てる中央部に店舗があり、上下線どちらからも進入できます。日本マクドナルドによると、「中央分離帯の敷地内にあるマクドナルドは、日本でここだけです」とのこと。開店の経緯を同社は次のように話します。

「石川県が道路用地を有効活用する目的で公募を実施し、当社がそれに応募したものです。幹線道路沿いで、十分な広さがあり、交通量の多さと利便性から多くのお客様にご利用いただけると判断しオープンしました」(日本マクドナルド)

 しかし、金沢外環状道路 海側幹線の中央部に店を構えているのは、「福増町」交差点の南側に位置するこのマクドナルド福増町店だけで、前後区間の中央部は更地になっています。日本マクドナルドはこの場所を選んだ理由について、「より多くのお客様が利用して頂きたいので、交通の導線が良いこと、また交通安全の面でも危険が少ないことを考慮しました」といいますが、なぜここだけが店舗になったのでしょうか。

「道のど真ん中店舗」ほかにもできる? 県に聞くその真相

 そもそも、石川県はなぜ道路中央部への出店者を募集したのでしょうか。金沢外環状道路 海側幹線を管理する県の道路建設課に聞きました。

――なぜ道路中央部への出店者を募集したのでしょうか?

 道路予定地を有効活用するためです。この道路の中央部は厳密には中央分離帯ではなく、将来の「本線」用地で、現在の車道は「側道」に当たります(編集部注:本線は自動車専用の国道305号バイパス、開通済みの側道は県道8号)。本線の工事着手までに一定の期間を要することから、2012(平成24)年に福増町交差点の南側と北側の2区画について、最長で2027(平成39)年9月末までという条件で利用者を募集し、日本マクドナルドさんに応募いただきました。

――なぜこの2区画だけなのでしょうか?

 この道路予定地の利活用にあたっては様々な制約がありますので、すぐに公募できる場所として2区画を設定しました。施設に乗り入れるために減速する車両がほかの走行車両を妨げないよう、占用者は施設に入るための車線を設けなければなりません。ほかの箇所ではその車線の長さが確保できないケースがあるほか、用地を横断する水路や地下埋設物の関係、用地と車道の高低差といった構造上の問題が生じるなど、本線用地のどこでも商業施設を建設できるわけではないのです。


金沢外環状道路 海側幹線の完成イメージ。現在マクドナルド福増町店がある道路の中央部は、将来的に「本線」になる(画像:石川県)。

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 石川県道路建設課によると、このように道路予定地を暫定的に一般開放したり、期限を設けて利用者を公募したりする取り組みは、2009(平成21)年に国土交通省がこれを認める通達を出したこともあり、ほかの地域でも行われているとのこと。しかし、マクドナルド福増町店のように「建築物の占用に加えて、両側の道路から乗り入れるための付加車線を整備している事例は珍しいのではないでしょうか」といいます。

 なお、石川県が公募した2区画のうち、福増町交差点北側の用地についてはこれまでに2度募集したものの、応募者がないまま公募を終了したそうです。県道路建設課は「もし関心をお持ちの企業があれば、再公募を検討します」としています。

※一部修正しました(6月5日18時20分)

【航空写真】道のど真ん中のマック


中央がマクドナルド福増町店。交差点を挟んだ向かいの道路中央部は更地になっている(画像:Google)。