一説には、女性の2人に1人はデリケートゾーンのかゆみに悩みをもっているといいます。

でも「婦人科に行くのはちょっと……」と、抵抗を感じる人が多いですよね。特に未婚の女性にはハードルが高いようです。そのためまず市販薬に頼る人が多いと思います。

市販薬で済むものと済まないものがある

ひと言でデリケートゾーンのかゆみと言っても、原因がさまざま。その知識を持った上で、市販薬で対処する、受診するという判断をしてもらいたいと思います。

はじめに、かゆみの原因は大きく分けて2つあります。

ひとつは、単にムレたり、スレたりして生じる炎症です。よく聞くのは脱毛後に生じるかゆみ。肌が傷ついて炎症が起きやすい状態になっているのです。これらにホルモンバランスのくずれや疲れ、ストレスなども微妙に関係しています。疲れがたまっていると免疫力、抵抗力が落ちて、炎症が起きやすくなるのです。

もうひとつはカビが原因で発生するものや、ウイルスの性感染によるもの。これらは婦人科を受診して治療すべきものです。市販薬では改善しません。

一般的なかゆみ止めでOK

ムレやスレなどの刺激によるかゆみでしたら、かゆいのをがまんして、症状を悪化させてしまうよりは市販薬でかゆみを緩和させたほうがベターです。かけばかくほど炎症は悪化し、すると今度はそこから菌が入り込みやすくなるからです。

炎症によるかゆみは、市販薬で緩和することができます。

ですから、まず市販薬を使ってみて、それでも改善が見られないようだったら、「ただの炎症ではない」とわかるので婦人科を受診する。市販薬の使用はそうした目安になります。2週間使っても改善しない、1本使っても改善しない、そんなときは婦人科へ。

では、どんな市販薬を使えばいいかというと、一般的なかゆみ止めでかまいません。有効成分としては、

・かゆみ止め成分➡ジフェンヒドラミン、リドカイン、クロタミトンなど。

・炎症を抑える成分➡グリチルリチン酸など。

・殺菌成分として➡トコフェロール酢酸エステルなど。

今あるかゆみを抑え、炎症を抑え、殺菌までする。このように市販のかゆみ止めには複数の薬効成分が入っていてお得感がありますね。

ただ、市販のかゆみ止めには清涼感を出すためにメントールが配合されているものが多いです。これがスーッとして気持ちがいいと思える程度ならOKですが、刺激が強すぎるものは炎症を悪化させるおそれがあるのでやめたほうがいいでしょう。メントールに薬効成分はありません。

デリケートゾーン用のかゆみ止めも販売されていますが、これは成分的には普通のかゆみ止めと大差ありません。特徴は刺激が少ないことで、そのためデリケートな箇所にも使えるようになっています。わざわざデリケートゾーン用のかゆみ止めを買う必要はありませんが、逆にいうと、デリケートゾーン用のかゆみ止めが1本あれば、ほかの箇所のかゆみにも使え、ある意味オールマイティーのかゆみ止めと言えるでしょう。

乾燥によるかゆみもあり

デリケートゾーンの炎症というと、ムレやスレのほか、乾燥によるかゆみもあります。冬に肌が乾燥してかゆくなるのと同じです。たとえば、ホルモンバランスが乱れて生理が来ていないという場合、女性ホルモンの分泌がスムーズに行かず、デリケートゾーンにも影響します。

この場合は乾燥肌と同様、保湿が必要です。デリケートゾーン専用のクリーム等も市販されていますが、オーガニックのオイルやワセリンなど、できるだけ刺激のないもので保湿してくださいね。

殺菌力の高い石けんはむしろ逆効果

炎症によるかゆみは市販薬の対応である程度改善が見込まれます。改善しない場合は、先述のとおり、他の病気、つまりカビや性感染が考えられますので婦人科を受診しましょう!

かゆみ止めで治った場合も、治ったー、よかったーで終わりにせず、その原因を取り除く必要があります。当然ながら、かゆみの元を取り除かない限り、またかゆみに襲われる可能性が残るからです。市販薬を多用することの落とし穴はここにあります。根本的な原因を解決せずに過ごしてしまいかねません。

大切なことはやはりデリケートゾーンがムレないようにすること、そして清潔を保つことです。炎症が起こる原因として考えられるのは、女性の場合、やはり生理中のナプキンですね。ムレやすい条件がそろっています。まずはナプキンを頻繁に変える、タンポンをなるべく使わないなどの対策をおすすめします。タンポンは雑菌の温床になりやすいんです。

インナーも通気性のよいものを選びましょう。夏場はあまり関係ないかもしれませんが、最近は保温効果の高いポリエステル素材のインナーを着ける人が多いですよね。これはこれで暖かくていいのですが、ムレの観点からすれば注意が必要です。

もちろん、清潔を保つことも重要です。だからといって炎症を起こしているのに、強力な殺菌力のある石鹸で洗うのは、むしろ逆効果です。必要な常在菌もすべて殺菌してしまうので、それまで以上に無防備な状態になってしまいます。洗いすぎに注意しましょう。

次回は、原因が炎症ではない場合----カビ感染、性感染についてお話しします。

2人に1人は悩んでいる?デリケートゾーン。



■賢人のまとめ
カビやウイルス感染が原因でないかゆみには市販の「かゆみ止め」が使えます。ただ、見た目やかゆみだけで原因が特定できるわけではありません。市販のかゆみ止めを使っても改善しない場合、すみやかに婦人科を受診しましょう。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。