肥料や農薬に頼らずに自然の力、植物と土が本来持っている力を引き出す自然栽培を行ない、自ら育てた小麦や小豆などを使ってお菓子を作っている。そんなこだわりのカフェを見つけました。


ひとつひとつ丁寧に作る焼き菓子。

 兵庫県小野市の「天然滋味 KAゑMON(かえもん)」。お店は、JR加古川線の市場駅から徒歩約5分の、のどかな田園地帯にあります。


左:建物は大正時代に建てられた農家の納屋。
右:カフェの入口。落ち着いたたたずまい。


JR加古川線市場駅。かわいい駅舎の小さな駅です。

 ご主人・稲岡真司さんは、農家の6代目。服飾雑貨メーカーに20年余り勤めてから農家を継ぎ、「耕す土地があって食べ物を自らの手で作れることがいかに大事か、実際に携わるようになって気付きました」と言います。自然栽培も、お菓子作りも、独学。

 「月の満ち欠けに合わせて種を蒔き、収穫。ほぼ毎日、午前中は田畑に出ています」。そして、午後からは自宅の納屋を改装したカフェでお菓子を作り、接客する日々。


1階。柱や梁に年月の流れを感じます。

 カフェは、2011年6月25日にオープン。大正4年に建てられた納屋を、古い柱や梁を生かし、新しく柿渋や藁が入った土壁を組み込んで再生したのだそう。

 元々、建物に使われていた板をカフェのトレイにするなどの細やかな工夫もとても興味深い。たんすや長持、古いミシンなども納屋にあったものだとか。席に座ると、使い込まれたモノが醸す、ゆったりした空気感に包まれます。


左:コーヒーをいれる稲岡真司さん。
右:焼き菓子に合う「コーヒー」400円。神戸市西区「珈琲舎たんぽぽ」のコロンビア・スペシャルティコーヒー。

 そして、稲岡さんが作るのは、自家製自然栽培小麦全粒粉、有精卵、てん菜糖、自然栽培小豆、無塩バターなどがベースのお菓子。マドレーヌやサブレ、パウンドケーキなどの焼き菓子が中心で、スコーンには、自家製自然栽培玄米粉も使用。カフェメニューには、地元・播磨の低温殺菌牛乳、長期発酵ヨーグルトなども使っています。

「シンプルな、素材そのものの味を生かしたお菓子。噛む程に味わい深い、それでいて後口の残らない、飽きのこない味です」

 稲岡さんが作っているお菓子をご紹介しましょう。


左:「KAゑMONスコーン」手前「あずき」300円、奥「クラシック」250円。
右:カフェでいただく「KAゑMONスコーン」クラシック 250円。

 「KAゑMONスコーン」は、自家製自然栽培小麦全粒粉、自家製自然栽培玄米粉を使用。他は、バター、てん菜糖、ベーキングパウダー、自然塩。「クラシック」、自家製小豆餡入りの「あずき」、100%ココアパウダーを練り込んだ「ブラック」の3種類です。

 カフェで注文すると、フォークだけでなく、スプーンが付いてきます。手作りのころんとした丸い形にフォークで触れると、ほろほろと崩れてびっくり。スプーンで口に運べば、優しい甘さと穀類の風味がいっぱいに広がります。そして、後口はすっきり。今まで食べたことのないスコーンなのです!


「KAゑMONスコーン」ブラック300円。

 添えられた甘酸っぱいヨーグルトソースがとてもよく合う。「あずき」は、ほの甘さと小豆の風味に、「ブラック」はほろ苦い大人味に、一度で夢中になりました。


「KAゑMON玄米タルト プレーン」1カット 250円。カフェではクリームチーズを添えて出されます。

 「KAゑMON玄米タルト プレーン」は、自家製自然栽培小麦全粒粉100%のタルト台に、自家製自然栽培玄米粉100%のフィリング。素朴で奥深い味わいに、ほっこり。コーヒーにも、紅茶にも、日本茶にも、よく合いそう。


左:「自然栽培小豆のミルクプリン」350円。
右:「自家製あいすくりん」380円。

 「自然栽培小豆のミルクプリン」は、ベースに自家製小豆餡を加え、なめらかでほんのり甘く、優しい風味。相性の良い濃厚なミルクを使っています。

 「自家製あいすくりん」は、ミルク、カフェオレ、チョコレート、あずきなど、7種類あり、全粒粉のビスケットが口直しに添えられています。低温殺菌牛乳と脂肪分48%の生クリーム、長期発酵ヨーグルトをブレンドし、濃厚でいてさっぱりとした後口。シャリシャリした口触りが、懐かしい感じ。

 カフェで、稲岡さんがていねいにいれるコーヒーや有機栽培紅茶と一緒に味わうと、格別のおいしさです。

テイクアウトできるお菓子もいろいろ

 「KAゑMONスコーン」やホールの「KAゑMON玄米タルト」の他にも、テイクアウトできるお菓子が棚に並んでいます。


「KAゑMONマドレーヌ」各180円、上左より「くるみ」「落花生」、下左より「あずき」「プレーン」「りんご」。

 「KAゑMONマドレーヌ」は、プレーンの他に、あずきやくるみ、りんご、落花生など、色々な種類があります。小ぶりサイズで、しっかりした歯触り。口の中ではらりとほどけ、すっきりした後口。


「KAゑMONサブレ」1袋250円。左上より時計回りに「紅茶」「はちみつ」「シナモン」。

 「KAゑMONサブレ」は、一見堅そうですが、噛むとほろっとほどけます。ザクザクした食感で、噛む程に小麦の風味が広がるナチュラルなおいしさ。長野県産アカシアはちみつを使った「はちみつ」、オーガニックシナモンが香る「シナモン」、インド産有機栽培紅茶の茶葉を入れた「紅茶」の3種類。日持ちがするので、お土産にもいい。


「KAゑMONパウンド tradition」プレーン1本 1,200円。

 「KAゑMONパウンド」は、自家製自然栽培小麦全粒粉、有精卵、バター、てん菜糖を使用。ぎゅっとした生地ですが、口の中でほろほろ。ほのかなバターと卵の優しい風味に心癒されます。


左:「季節のジャム 有機りんご」800円。
右:「あずきミルク」800円。

 「季節のジャム」は、砂糖の甘味を極限まで減らし、素材の持ち味を生かして作られています。「有機りんご」「あずきミルク」「くるみミルク」「マルメロ」などがあり、それぞれが優しくピュアな味わい。


「野草茶」1袋(5g×6包)。手前から「よもぎ茶」780円、「すぎな茶」780円、「ビワ茶」840円。

 「野草茶」は、自然のままの畑の野草を摘み、自家焙煎してお茶にしたもの。「昔からずっとやってきたことを繰り返しているだけ」と稲岡さんは言います。1回分ずつパックしてあり、扱いやすい。

 「ビワ茶」は、古木のビワの木の葉を天日乾燥し、遠赤外線焙煎。まろやかな甘みです。自然栽培の田んぼに自生しているよもぎを天日干し、遠赤外線焙煎した「よもぎ茶」は、深い香りと甘みが特徴。「すぎな茶」は、田んぼに自生しているすぎなを天日乾燥して粉末にした、すっきり飲みやすいお茶。どれも、自然そのものを飲んでいるような、優しくしみいるようなおいしさ。飲み飽きることがありません。


古い長持がさりげなく置かれた2階。柿渋を塗った梁や柱と漆喰の壁で、落ち着いた雰囲気。


左: 地元・小野市在住の作家物のオリジナル皮革製品などが並ぶコーナーもあります。
右:稲岡家で使われていた足踏みミシンも。

 カフェは正午からの営業。「焼き菓子をメインにしたメニューです。食べてもらって、食べ物が土からできているとわかってもらえるといいですね」。自身が作ったものを「おいしい!」と食べてもらい、自然栽培に興味を持ってもらえたらうれしいと言います。

 そんな稲岡さんは、農業とカフェの二刀流を実践中。壁には、稲岡さんの祖父が牛を使って麦踏みをしている様子を映した古い写真が飾られていました。「やりがいがある。農家としては100%自家採種を目指しています。それが本来のあり方ですから」。

 自然なおいしさの手作りのお菓子を食べて、自家製の野草茶を飲む。自然にちょっぴり近づける農家カフェ。ここだけのお菓子をいっぱい買って帰りましょう。

※金額は全て税込み

天然滋味 KAゑMON(かえもん)
所在地 兵庫県小野市黍田町890  
電話番号 0794-63-3359
http://www.kaemon.org/

文・撮影=そおだよおこ