どこにでもいる女性でも気が付くと、その世界の『沼』にハマってしまうケースを紹介するこのシリーズ。今回の沼は、とどまることを知らない美の欲求を追い続けてハマった「整形」沼です。

激務によって揺らぐ「ブスなのに生きている私」の存在意義

「どこを整形したんだろうって思ってますよね?整形したところで、絶世の美女になるわけじゃないんですよ、ブスは」と言って彼女は微笑しました。

極細の人脈を辿り続け、「顔出しナシなら取材に応じてくれるって」という方の紹介で夕子さん(37歳)に出会ったのが、春の終わり。その時点で美容整形に500万円を投じていると聞いていたし、「岡崎京子の漫画に『へルタースケルター』ってあったでしょ?沢尻エリカ主演で映画にもなったやつ。でさ、“あの子はね、もとのまんまのもんは骨と目ん玉と髪と耳とアソコぐらいなもんでね あとは全部つくりもの”ってセリフ、覚えてる?彼女はまさにそんな感じ」という事前情報もあったので、もっとこう何か特別な、いわゆる人工的な質感を想像していました。しかし、彼女はナチュラルメイクにも関わらず、本人の言う通り、実際、どこを整形したのかわかりませんでした。

だからといって、ブスだと思ったわけではありません。有名人でいうと、女優の吉岡里帆さん似の、透明感と清潔感のある大人の女性です。

「最初にやったのは二重まぶたの手術です。24歳のときですかね。新卒で入った会社が超絶忙しくて、ほぼ会社に寝泊まりしているような生活だったんです。メイクはおろか、目ザイクする心の余裕もなくなってきて……。寝られないストレスと食べないと死ぬっていう危機感から、栄養価の高いものばっかり食べているうちにどんどん太ってもきちゃって。同僚や口の悪い先輩に“お前、ブスに拍車かかってるぞ”なんて言われて……。で、ブス隠しのためにマスクとレンズ色がかなり濃いブルーライトカットの眼鏡をかけて仕事してたんですが、自分がなんのために生きているかわからなくなっちゃったんですよね。ブスを晒しながら仕事してることに、何の意味があるんだろうって。他の子たちは、彼氏だ合コンだ女子会だって浮かれてるに違いないのにって。

明け方まで仕事して、家に帰って。でも、寝付けなくて……ってときあるじゃないですか。で、ある日、資料用に持ち帰ってたファッション雑誌をパラパラってたら、これまた可愛い子たちがキラキラした姿で笑ってて。泣けてくるんですよ。みんながみんな、カメラ目線なだけに、私に向かって“こっち見んな、ブス”って言われているような気がしました。当時は明らかに病んでましたね(笑)」

その雑誌の後ろのページにあった美容外科病院の広告に、夕子さんは「呼ばれた気がした」と言います。「こっちこいよって(笑)。私、中学の頃から、目ザイクコスメ使ってて、二重なんて手術なんてしなくてもチョロイと思っていたんです。でも、その日は違って。二重にしよ!って思ったんですよね。広告に載っていた料金は10万円だったか15万円だったか……。忘れちゃいましたけど、安いと思った記憶はないです。むしろ、“私、こんなに頑張って働いてるんだから、これくらいのことしたっていいでしょ?”っていう感じ。よく言うところの“ご褒美消費”欲っていうやつでしょうか」

想像してたより腫れたけど……可愛さ3割増しに整形欲がスパーク

「二重まぶたの手術が、人生初めて受けた外科手術」だったという夕子さん。「めちゃくちゃ怖かったです(笑)。だから、まぶただけの麻酔のほうが安かったんですが、眠っているうちに手術が終わる静脈麻酔を選んだくらい。ベッドで麻酔待ちしているときにも、怖くて不安で、万が一手術が失敗して、そのまま目覚めなかったら、“あいつは二重まぶたにしたくて死んだんだな、バカだな”って思われるんだな……やだな〜やっぱり止めようかな……とか、逡巡していましたね」。しかし、「ブスのまま生きてるのイヤだ、って思った自分を思い出して、最後は腹をくくった」そうで、病院から飛び出すこともなく、手術を受けたそうです。

「術後の腫れはほとんどなく翌日からメイクもできる、その腫れも数日で目立たなくなる、っていうことに期待しすぎていたんだと思います。びっくりするほど“やった”感があって、医師に鏡を持たされて“どうですか?”って聞かれたときに、“どうもこうもないだろ”って心の中で苦笑いしちゃいましたよ。確か、木曜日に体調不良と偽って早退して手術して、金曜日に欠勤して、土日休んで月曜出社、っていうスケジュールを組んだんだと思うんですよね。家に引きこもって、ずっとまぶたを冷やし続けてましたけど、月曜日も普通に“両目を殴られた人”みたいな腫れ具合でした。

会社の人たちにバレてたかどうかはわからないですね。ずいぶん前なので、記憶が定かじゃないですが、“やっぱバレちゃったか……恥ずかしいっ”って思ったら、覚えていると思うので。“体調どう?”とかは言われた気がしますが……。相変わらず濃いめレンズのブルーライトカットの眼鏡もかけていたので、誰も気付かなかったのかもしれません」

その後も、「少しでも腫れが早く引くように」と、時間が許すかぎりまぶたを冷やし続けていたという夕子さん。そんなある日、寝起きのスッピン状態で鏡を見たときに、「あれ、なんか今日、顔の調子いいんじゃない?え? 可愛いんじゃない? って思ったんですよ。手術から1か月後くらいだったと思います。笑っちゃうんですが、私、自分が手術したことすっかり忘れてたんです。目を冷やすのも、習慣になっちゃってたんですよ。しばらく考えて、あ、そうか、二重まぶたにしたんだったって思い出して……(笑)、プチ整形サイコー!って、ガッツポーズでした」

初めて、「鏡に映った自分を見るのが楽しくなる」という体験をした夕子さん。手術におびえていた日の記憶は遥か彼方となり、「こんな簡単に可愛くなれるなんてチョロすぎる」という気持ちだけが膨らんでいったといいます。そして、「日帰りでサクッとできる整形」にハマりだすように。彼女が次にターゲットにしたパーツは……〜その2〜に続きます。

「整形してから写真を撮られるのが楽しくなりました。っていってもさらにアプリで加工してるんですけどね」と夕子さん。