ドライバーの中嶋一貴選手(左)たち

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 トヨタ自動車は6月、世界3大レースの一つ、ル・マン24時間レースで悲願の初勝利に挑む。2年前は勝利目前の残り3分でマシンがストップする悪夢に見舞われ、昨年はライバルの独ポルシェとともにマシントラブルが相次ぐ波乱の展開で、勝利をつかめなかった。トヨタがル・マンに挑戦するのは今回が20回目となる。チームにとって最大の目標に向け、気を引き締める。

 「最後まで走りきることの難しさは誰よりも分かっているつもり」。29日に都内で開いた報道説明会で、ドライバーの中嶋一貴選手は力を込めた。2年前には自らがトップを快走しながら、ゴール直前の不具合によりまさかのマシンストップでリタイアしているため言葉に重みがある。

 フランスで開かれるル・マンはF1モナコ・グランプリ、インディアナポリス500マイル(インディ500)と並び世界3大レースと称されている。今年は6月16―17日に世界耐久選手権(WEC)の第2戦として開催される。他のWECのレースより長い24時間耐久でとりわけ過酷だ。

 さらに、昨年の大会までル・マンを3連覇したポルシェがWECを撤退し、今シーズンから最高位クラス「LMP1」に参戦する自動車メーカーはトヨタのみになった。そのため、レギュレーション(技術規則)が変更され、トヨタはハイブリッドシステム搭載車で参戦するが、ハイブリッドを搭載しないプライベーターチームの車両には燃料量増加や軽量化が許された。

 ポルシェの撤退によりトヨタは勝って当然との見方がある。しかし、技術規則の変更でプライベーターチームも侮れない。昨年はリタイアしたドライバーの小林可夢偉選手は「去年よりも速く、24時間走りきることは本当の意味のチャレンジ」と言い切る。WEC参戦はトヨタの代名詞でもあるハイブリッドの技術を磨き、量産電動車の開発にもつなげる狙いがある。