お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指すこの連載。今回の相談は本田よう子さん(仮名・40歳  広告会社勤務)の相談です。

「派遣社員として、広告会社で経理の仕事をしています。仕事を休むとその分、お給料が減ってしまうので、病気やケガで働くことができなくなったときが心配です。知人から民間の保険には、生活費を補うためのものがあると聞きました。どんな保険なのでしょうか。また、選ぶときの注意点やポイントを教えてください」

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病気やケガで働けなくなった場合、給付金が受け取れる保険の種類

相談者さんは、「働くことができず、減ってしまう収入に対応する保険」を検討されているようですね。

民間の生命保険会社による保険で、「病気やケガをして働けなくなった場合に給付金を受け取れるもの」といえば、就業不能保険です。就業不能保険は、病気やケガで長期間働けない一定の「就業不能状態」になった場合の収入を補填するもの。「給与サポート保険」や「働く人の保険」など、様々な名前の商品があります。また、就業不能保険に似たもので、「所得補償保険」というものがあります。これは民間の損害保険会社が販売する保険で、一定の「就業不能状態」になった場合に保険金を受け取ることができます。

一般的には、就業不能保険は長期の就業不能に備える長期補償タイプがメインであり、一方、所得補償保険は短期補償タイプが多いです。

就業不能保険と所得補償保険の違いとは

生命保険と損害保険では、基本的な補償の考え方が異なります。しかし加入を考える際には、「会社による補償の考え方」よりも、各社・商品ごとの違いのほうが重要です。商品の名前だけで判断せず、自分に必要な補償なのかどうか、内容をしっかり確認することが大切です。

たとえば、就業不能保険、所得補償保険と名前が似たもので「収入保障保険」というものがあります。これは、加入者が亡くなった場合もしくは高度障害状態になった場合、その家族の生活を保障するための保険です。例えば、加入者であるご主人が亡くなった場合、遺された家族に保険金が支払われる仕組みです。つまり、基本的に働けなくなった時に本人がお金を受取ることができるものではなく、死亡保障の一つ。性格的には死亡保険に近い保険です。このように、似たような名前でも内容が異なりますのでご注意ください。今回は、ざっくりと就業不能保険・所得補償保険についてお話したいと思います。

加入検討時に気を付けるべき3つの注意点

働けなくなり収入が落ちてしまったときに生活費の保障が受けられる、というのは非常に安心感がありますね。しかし、これらの保険は、単純に「働けなくなったら給付金を受けられる」というものではなく、一定の「就業不能状況」にあることが給付の条件になります。また、一定の「就業不能状況」になった場合、すぐに給付金を受け取れるものではありません。そして、加入制限もあり、すべての人が対象ではありません。
以下、3つの注意点をご説明します。

1.給付対象となる状況

「就業不能状況」と認められる要件は各社異なります。しかし、共通して認められない状況として、「自分の意志で働かない、又は故意に働けない状態になった」「地震等の自然災害による理由の場合」があります。一般的な条件としては、「病気やケガで入院または医師の指示で在宅療養をしていること」であり、一定期間以上の「就業不能状況」が支給の要件になります。そして、むちうちや腰痛など、症状の裏付けができないものは基本的に対象となりません。商品によっては、がん・急性心筋梗塞・脳卒中・肝硬変・慢性腎不全、など、条件が限定されているものもあります。

また、働けなくなるような状況として実際には「うつ病」などの精神疾患が原因となることが多い一方で、多くの就業不能保険ではうつ病などの精神疾患は保障対象外となっています。働くことができなくなり、保険の給付を受けようとしたら自身の状況が対象外だった、というケースは少なくありません。給付金受給中に別の仕事を始めた場合にも、基本的に対象から外れます。

2.免責期間

一般的に、就業不能保険には「免責期間」というものがあります。免責期間とは簡単に言うと、「保険会社が給付金がの支払いをしなくてもよい」期間です。就業不能保険では60日の免責期間というものが多いですが、これは「就業不能状態になってから最初の60日間は保障の対象にならない」ということです。つまり、病気やケガで入院または医師の指示による在宅療養の61日目からが保障の対象になるのです。商品によって、免責期間がないものから180日といった長期になるものまで様々です。ただし、免責期間が短いものは、上記の給付条件が厳しかったり、保険料が割高になったりしますので注意しましょう。

3.加入条件

これらの保険は、働いている人が働くことができなくなった時に備えるものです。そのため、実際に稼いでいない、または収入の少ない人は加入できないのが一般的です。年収条件は、年収150万円以上など、各社・商品により異なります。また、基本的に不動産などによる資産収入がある場合にも加入できません。そして、パート、アルバイトなどは加入できないケースもあります。

会社勤めなら就業不能保険以外でのカバーの方法もある

相談者さんは派遣社員とのこと。まずは、現在のお勤めの福利厚生について知っておきましょう。具体的には、有給休暇や社会保険の有無です。通常、形態が派遣であっても会社にお勤めであれば社会保険に加入していると思います。ご自身の有給休暇がどれくらいあるのか、何かあった時の有給休暇の取得方法などを確認しておいてください。

社会保険に加入しているのであれば、健康保険の傷病手当金を受ける事ができます。これは、業務外の病気やケガで働くことができず療養しており、お給料がもらえない状況になった時の手当金です。3日続けて休んだあと、4日目から、お給料の3分の2を受け取ることができます。これは、最長で1年半受けることができます。

また、公的年金から支給されるものもあります。病気やケガなどにより働けない場合、精神障害やがんや糖尿病などの場合でも、障害年金の対象となります。会社の社会保険により、厚生年金加入であった場合は「障害厚生年金」を受ける事ができ、国民年金に加入していた場合でも「障害基礎年金」が受給できます。

就業不能保険は、働けずに収入がなくなった場合の月々の生活費・ローン・教育費などの支出に備えることができます。一方でご説明したように就業不能保険は給付条件が厳しく、免責期間が長いことが多いです。特定の状況が心配される場合で、それが給付条件にあてはまる場合には非常に効果的でしょう。しかし就業不能保険の多くは掛け捨てであり、解約をしたときに返戻金のないものが多数です。自身のリスクと給付条件にズレがある場合には、就業不能保険は絶対に必要とは言えません。

実際、就業不能状態と認められる状況は、がんなどによる入院や療養がケースとして多いです。特定の病気が心配な場合や、がん家系でがんが特に心配といった場合には、それぞれ医療保険やがん保険を厚めにすることがより有効であることもあります。

まずは勤務先の福利厚生をしっかり確認しましょう。



■賢人のまとめ
勤務形態に関わらず、会社にお勤めの場合には、まずは、勤務先の会社の福利厚生の確認を。会社の社会保険に加入しているのであれば、傷病手当金をベースと考えましょう。その上で、医療保険やガン保険、就業不能保険といった商品をじっくり検討してみてください。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。