小田急電鉄の社長が横浜市営地下鉄の延伸計画に強い期待を示しました。この延伸が実現すると、小田急にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

多摩線延伸は「止まってる」

 小田急電鉄の星野晃司社長は2018年5月29日(火)、小田原線と多摩線が分岐する新百合ヶ丘駅(川崎市麻生区)について、横浜市営地下鉄ブルーラインの乗り入れに強い期待を示しました。


小田急の新百合ヶ丘駅。現在は小田原線と多摩線が乗り入れている(2011年10月、草町義和撮影)。

 ブルーラインは、小田急江ノ島線の湘南台駅(神奈川県藤沢市)から横浜市の中心部や港北ニュータウンを経由して東急田園都市線のあざみ野駅(横浜市青葉区)までを結ぶ、全長40.4kmの地下鉄です。

 横浜市はブルーラインをあざみ野駅から新百合ヶ丘駅まで延伸することを検討中。国土交通大臣の諮問機関・交通政策審議会も、2016年4月に答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」で「横浜市と川崎市に跨がる路線であるため、事業化に向けて両市が協調して、費用負担のあり方や事業主体等を含めた事業計画について、合意形成を進めるべき」とし、具体化に向けて動くことを関係各者に求めています。

 星野社長は「これができると小田急のネットワークにとって、ものすごくプラスになります。新幹線へのアクセスが便利になり、東急線との連絡も良くなります。新百合ヶ丘駅近辺の価値も上がると思います。私たちが建設する路線ではありませんが、要請があれば協力していきたいと思います」と話し、延伸区間の建設に協力する意向を示しました。

 新百合ヶ丘駅から東海道新幹線の新横浜駅にアクセスする場合、現在は小田原線で町田駅に向かってJR横浜線に乗り換えるルートがあり、所要時間は30〜40分台(町田駅での乗り換え時間を含む)です。ブルーラインが新百合ヶ丘駅まで延伸されると、途中で乗り換えることなく新横浜駅に行けるようになり、所要時間も30分弱に短縮されるとみられます。

 いっぽう、多摩線をJR相模線の上溝駅(神奈川県相模原市)まで延伸する構想については「工事費は1000億円。いまの試算だと、とても利益が出ないことになっています。どうすれば工事費が下がるか、いろいろ工夫して試算していますが、オリンピックを控えて建設費が高くなっていることもあり、下がるような試算が出てきません。そこのところで止まっています」と話し、早期の実現は困難との認識を示しました。

【地図】ブルーライン延伸区間と小田急線


小田急線とブルーラインの位置。延伸区間ができると新百合ヶ丘駅から乗り換えなしで東海道新幹線の新横浜駅にアクセスできるようになる(国土地理院の地図を加工)。