飲食業界の中でも顧客獲得競争が激化していると言われている「ファミレス」。同業界で集客力No.1を走り続けるのが、すかいらーく系列の「ガスト」ですが、その勝因は一体何なのでしょうか? メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者で繁盛戦略コンサルタントでもある佐藤きよあきさんは、その大きな要因が単純明快な2つのポイントから成り立っていると指摘。この先例にならえば、他企業がトップを奪取する可能性すらある、との持論を展開しています。

料理の写真と実物がまったく違うのに、なぜ「ガスト」は集客できるのか?

料理の写真と実物がまったく違うのに、なぜ「ガスト」は集客できるのか?

ファミレス「ガスト」のテレビコマーシャルやポスター、メニュー表では、実に美味しそうな料理が紹介されています。しかし、期待して注文すると、そこに運ばれてくる料理は、「???」なものが多いと言わざるを得ません。

このことはネットでもよく話題になります。私も一度、あまりにも写真と違うものが出てきたので、クレームを入れたことがあります。ですが、その後改善されている気配はありません。

なのに、ファミレス業界では、ダントツNo.1の地位を保っています。なぜ、そこまでの集客力があるのでしょうか。

圧倒的な美味しさを提供しているのかというと、決してレベルは高くありません。サービスが優れているのかというと、パートとバイトで賄っているので、必要最低限でしかありません。

集客できる秘密は、「メニュー構成」と「店舗数」にあると私は見ています。ファミレスの事業規模の上位は、「ガスト」「サイゼリア」「ジョイフル」「ココス」「デニーズ」「バーミヤン」「びっくりドンキー」「ビッグボーイ」「ロイヤルホスト」といったところ。

その中で、和食と洋食が混在した、昔ながらのファミレスは、「ガスト」と「ジョイフル」しかありません。他は、パスタ、ピザ、ハンバーグ、中華などに片寄っています。和洋の混在は、客層の幅を広げます。つまり、小さな子どもからお年寄りまでが、一緒に利用できるのです。

昔はこのタイプのファミレスばかりだったのですが、戦略としてはターゲットを絞り込んだ方が集客力が高くなるので、メニューも絞り込まれるようになりました。その結果、世の中には専門店が増えたのです。「これが食べたい」と思えば、その専門店に行けば良いのです。

しかし、食べることは「ルーティン」でもあります。好みに関わらず、毎日食べなければなりません。食べたいものが浮かばなければ、「適当なお店」を選ぶことになります。それが、「ガスト」なのです。

和洋があり、日替わりランチも安い。サラリーマンには非常に助かる存在です。また、女性ウケするサラダの種類も多く、おしゃべりに最適なドリンクバーも充実しています。デザートも多数揃っています。子ども向けには、キッズメニューやおもちゃがもらえるセットもあります。平日午後3時以降は「ハッピーアワー」として、アルコール類が249円(税抜き)となり、つまみも199円(税抜き)と299円(税抜き)が揃っています。

とにかく、メニュー構成がきめ細かいのです。これほど幅広い客層に対応したファミレスは、他にありません。

そして、集客できる大きな要因のもうひとつが、店舗数です。全国で1,366店(平成30年4月30日現在)と、圧倒的な数なのです。お店が多いということは、何を食べようかと迷った時に、すぐそこにお店があるということです。身近にあって、手軽に利用できる。その利便性が、「ガスト」の強みなのです。

言い方を変えれば、他に適当なお店がないから利用しているのです。これは「ガスト」を批判しているのではなく、それが「ガスト」の役割になっているのではないかと考えます。

もし、似たようなメニュー構成の「ジョイフル」が、店舗数を急激に増やすことができれば、No.1の座は奪われるかもしれません。しかし現状では、料理写真と実物が違うと知っていても、「ガスト」を利用してしまうのです。

image by: Flickr

MAG2 NEWS