店の前には写真入りのメニューがあり、アイヌ料理初挑戦の人にも内容がわかりやすい

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アイヌ料理のお店として知る人ぞ知る存在の「ポロンノ」。北海道の阿寒湖アイヌコタンにあるこのお店では、アイヌ料理を定食風に組み合わせたセットメニューから、軽食、お茶までそろい、店主が工夫して完成させた、オリジナルのメニューもあり。いろいろなアイヌ料理を楽しむことができます。

ラタスケプには上新粉が入っており、もちもちした食感。腹持ちもいい

湖畔の散策や古式舞踊の見学のあとなどに軽めに食事をしたい時は、ユック(シカ)のオハウ(汁物)とアマム(炊き込みご飯)のユックセット(1000円)がおすすめです。

オハウは塩だけの薄味ですが、しっかりコンブのだしが効きシカ肉のうまみも引き出しており根菜、山菜もたーっぷり。アマムにはイナキビ、金時豆、ギョウジャニンニクなどの山菜入り。こちらも薄い塩味で美味! 旅先で食べすぎが続いている時には、こういったやさしい味の家庭料理風メニューにホッとします。

写真のアマムとオハウの間にある小皿は「メフン」です。サケの腎臓を塩漬けにしたもので、イカの塩辛のような食感。見かけはなかなかのインパクトですが、あまり臭みはなく、アマムと交互に食べるとどちらも止まらなくなります…。

小腹が空いたなぁというときにちょうどいいのがラタスケプ(500円)。

直訳すると混ぜ合わさったもの、という意味になります。カボチャサラダのように見えますが、イナキビ、トウモロコシ、金時豆が入り、それらの食感もあわせて楽しめます。そしてなんといってもアイヌの調味料的存在のシケレペの柑橘系の香りがさわやかかつスパイシー。胃もたれに良いとされているシケレペ茶や、体調がいまいち、というときに飲まれていたセタエント茶など、旅先での体調不良時に助かるアイヌのお茶(各350円)と一緒にどうぞ。

ポロンノで出しているお料理は、店主・郷右近好古さんのお母さんの味をベースにしています。「母の出身は浦河町なのでその地方の味になっていると思います。アイヌ料理は家庭によっても全く味が異なりますね」と話します。その一方で、コンブなどでダシを取り、塩だけの味付けで作るオハウが三平汁に似ているように、北海道の郷土料理のベースになっている部分もあると感じているそう。

他では見られないオリジナルメニューもあります。アイヌの伝統的な保存食、ポッチェイモ(ほかの地域ではペネイモ、ムニニイモなど名称が変わります)はおやつにちょうど良いボリュームのイモ餅のようなもので、ポロンノの人気メニュー。ジャガイモの凍結と解凍を繰り返し発酵させたものを水に浸してアク抜きをして搗き、それを丸めて焼く…とかなり手間のかかる料理ですが、独特の風味が人気です。そのポッチェイモをピザ生地にしてしまったのが、ポッチェピザ(750円)。個性あるポッチェイモ、チーズ、そしてギョウジャニンニクの香りが合う! 

ほか、メフンはアンチョビっぽい…ということでパスタに入れたら大成功! めふスパ(900円)として定番メニューになっています。

アイヌ料理を扱っているお店は道内にもあまり多くはありません。それはポッチェイモのように手のかかるものが多かったり、材料が手に入りづらい、という問題があるため。ポロンノで使っているシカ肉も山菜も近隣の山のもので、阿寒の自然の恩恵を存分に受けています。山菜は郷右近さん自らが5月上旬から始まるシーズンに1年分を収穫。「朝早く山菜採りに行って、昼の営業に間に合うように帰ってくる」という大忙しの日々になるそう。冷凍、乾燥などそれぞれにあった方法で保存して、使用しています。

伝統的に使われている食材を生かしつつ、創作に行き過ぎない範囲で新しいメニューを出したい、と話す郷右近さん。お店にはアイヌと世界の少数民族の装飾品が並び、独特の世界観を作り出しています。

※カタカナの大文字のみで表記しているため、文中のアイヌ語関連のことばは実際のアイヌ語表記と異なる場合があります。

民芸喫茶ポロンノ ■住所:釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-7-8 ■電話:0154・67・2159  ■時間:12:00~22:00(L.O.21:30)15:00〜18:00は仕込みのため準備中になることがあります ■休み:不定(休みの日はSNSで告知)※11〜4月は要予約 ■座席:25席(禁煙)(北海道ウォーカー・市村雅代)