夏場になるとデオドラント剤(制汗剤)を使う人は多いですね。この季節のドラッグストアにはデオドラント製品がズラーッと並び、バリエーションも豊富です。しかし、はじめに結論を言ってしまいますと、汗を止めること自体、体にいいことではないですよね。

デオドラント剤は汗の出口を抑えてしまう

まずデオドラント剤とは何か?成分を見ればわかります。以下は主な有効成分です。

・クロルヒドロキシアルミニウム:アルミニウムが汗の出口つまり汗腺をふさぐことで汗を抑えます。日本製のデオドラントによく使用されている成分です。

・塩化アルミニウム:同じく汗腺をふさぐことで汗を抑えますが、クロルヒドロキシアルミニウムよりも作用が強いとされています。海外製のデオドラントによく使用されています。

・塩化ベンザルコニウム:強い殺菌力をもち、手や指の一般的な消毒剤として使われています。副作用として肌荒れを起こす可能性があります。

・銀含有ゼオライト:銀イオン(Ag+)が汗の成分を分解する菌の繁殖を抑え、殺菌する作用があります。

・ミョウバン:化学的な名前は「硫酸アルミニウムカリウム」。料理のアク抜きや煮崩れを防ぐなどの材料として知られ、食品添加物としても利用されている成分。菌の繁殖を抑える作業があります。

どの成分も医薬部外品です。汗を止める、ニオイを抑える効果については個人差があると思いますので、一概にどの成分がいいということは言えません。ただ、「アルミニウム」を皮膚に塗るのは決して体に良いとはいえないでしょう。

デオドラント剤で汗を止めるのは鼻水を止めるのと同じ

デオドラント剤で汗を止める前に、汗の役目をおさらいしておきましょう。

汗は必要があって出ています。なぜ出るのかといえば、ひとつは汗が蒸発することで体温を下げようとする働き。体温調整の役目があります。

もうひとつ、異物や不要なものを外に排出する働きがあります。鼻水と同様、重要な排出効果があるのです。その汗の出口を外からふさいでしまったらどうでしょう?行き場を失った汗はどこへ行くのでしょうか?

デオドラント剤の作用は、汗腺をキュッと絞めて汗を止めるというイメージですね。この点も点鼻薬と似ています。点鼻薬には血管収縮剤が入っており、シュッとすると鼻腔の血管がキュッと締まります。しかし使い続けているとこの効果が弱まり、やがて効かなくなります。制汗剤でも同じことが起こると思います。

逆に言うと、日常的に使うのでなければ、効果はあると思います。たとえば、これからプレゼンで皆の前で発表するとか、結婚式のスピーチがあるとか、“脇染み”は困る!といった場合ですね。イザという時には、使い甲斐があるでしょう。「デオドラントしているから大丈夫」という安心感も、汗の抑制につながるかもしれません。

実は、汗そのものはほとんど無臭です。ニオイの元はあなたの体の常在菌です。汗の成分をエサにして分解して、その結果、ニオイが発生します。汗のニオイを抑えるもっとも手近で確実な方法は、汗をすぐ拭くことですね。

緊張する人ほど汗をかく

次に、汗のニオイが強い人と、それほど強くない人の違いは何かというと、その人が持っている常在菌の種類ということになるでしょう。

常在菌の種類を変えることはなかなか難しいのではないか、と思います。でも、あきらめることはありませんよ!生活習慣によって変えられる部分もあると思います。

いちばんは食事です。私は、汗のニオイは食べ物である程度改善することはできるのではないかと思います。一般に肉をたくさん食べる人、たとえば西洋人は体臭がきつく、汗のニオイもきついですよね。だからこそ香水はヨーロッパで発達したわけですね。日本人も近年、肉食の人が増えています。少なくとも昔より肉の摂取量は増えています。生まれもっての体質も大きいと思いますが、肉食に思い当たる人は、少し見直してみてはいかがでしょうか。

また、多汗の人、ニオイのきつい人の傾向として運動不足が挙げられます。ふだん運動している人の汗はサラッとして、体内の腐敗物がどんどん外に出ている感じがします。脇汗のひどかった人が運動を始めてから軽減したという話も聞きます。

運動による汗は全身から出ます。それに対して、緊張したときに出る汗はどうでしょう?額からダラダラ。脇からダラダラ。個人差はありますが、一か所からジワジワ、ベタベタした汗ですよね。

人は緊張すると汗が出ます。なぜでしょうか?緊張状態、つまり交感神経が優位になりすぎると汗が出る。そしてその時の汗は、運動中の全身から出るサラサラ汗と違って、局所的なベタベタ汗。このように考えると、緊張する人ほど汗をかく-----といえないでしょうか。

脇汗が多い人、あなたはイライラすることが多くありませんか?交感神経が優位になっている時間が長くないですか?その汗はもしかしたら「あなたイライラしていますよ」「もっとリラックスしましょうよ」という体からのメッセージかもしれません。

ストレスがたまってしまっているときも交感神経が優位になります。すると睡眠不足にもつながり、ますます交感神経が高ぶり、ますます汗が出る-----という悪循環にはまっているのかもしれません。

ストレスを今すぐ発散しましょうといっても無理ですし、緊張しないように生きましょうといっても現実味がありませんね。でも、できることがあります。緊張しているなと思ったら、とりあえず深呼吸してみること。デスクワーク中なら立ち上がって歩き回ってみること。それだけでもスーッと交感神経が休まります。歩き回ってふくらはぎに刺激を与えることで、血流がよくなり、全身の緊張も緩みます。

デオドランド剤の話から血流の話になってしまいましたが、緊張すると汗が出るのは確かなので、緊張感をゆるめることも汗対策になります。基本的なことですが、できるだけこまめに汗を拭くこと。そして緊張したら深呼吸してみましょう。

デオドラント剤の作用は汗腺を塞ぐこと。



■賢人のまとめ
デオドラント剤の作用は汗腺をふさぐこと。汗は必要があって出ているのですから、汗腺をふさぐのは体にとっていいことではありません。多汗やニオイの悩みがある人は、食事内容を見直し、運動、リラックスを心がけてください。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。