どこいでもいる女性でも気が付くと、その世界の『沼』にハマってしまうケースを紹介する同シリーズ。今回の沼は、いくら妊活をしても子どもが授からない「不妊」の沼です。

日本産科婦人科学会では35歳以上の初産を「高齢出産」と定義していますが、現在日本では年間で生まれる赤ちゃんのうち4人1人の母親が高齢出産といわれます。今回話を伺った律子さん(38歳)は現在の夫と結婚をしたのが35歳。その翌年になって本格的に妊娠を目指すも、未だ授かっていません。

「高齢出産のリスクはもちろん知っていました。でも正直“ダウン症の子が生まれるリスクが上がる”というイメージが強くて、“妊娠しにくい”というリスクはあまり考えていなかった。無知で恥ずかしいと思いますが、今の時代は高齢出産も珍しくないですし、自分も当然妊娠できると信じて疑っていなかったのです」

そう語る律子さんは現在「給料はそこそこだけど、残業がほとんどない超ホワイト」の中堅企業に勤務。前職は激務だけど給料は良かったIT関連の会社に勤務しており、そこで知り合った年下の男性と結婚しました。律子さんは美人とはいえませんが、ネイルやまつ毛エクステのケアを日々欠かず、自分を高めることを怠らない聡明な女性。旦那さんの写真を見せてもらいましたが、こちらは10人いれば10人「イケメン」と言いそうな、今どきの塩顔男子でした。

「前職は本当にやりがいがあったけど、激務だし女性が長く続けられる仕事ではない。だから結婚をしたらスッパリと辞めて、将来子どもが産まれても長く続けられる今の仕事に就きました。夫は激務なので子育てのサポートは望めないですし」

地に足の着いた人生設計を着々と進めている律子さん。さらに「低金利のうちに」と、律子さんの実家近くの新興住宅地に一軒家も構えます。しかしこのことは後々、律子さんを深く苦しめる結果となってしまうのですが……。

「現在のホワイト企業に転職し、さあこれで妊娠する準備が整った!と、まずは参考程度に生理周期を管理するスマホのアプリを登録しました。ただ最初は正直『避妊をやめれば妊娠するだろう』くらいに考えていたので、基礎体温もつけずに生理日だけを登録するくらい。でも何も起こらないまま半年くらいたって、あれ?妊娠しないな?これはちゃんと妊活しないとダメかも?と、ようやく基礎体温をつけはじめたのです」

それから毎朝基礎体温を測り、アプリに記録。そこで初めて自分の低温期と高温期、そして妊娠の可能性が高まる「排卵日」を把握したといいます。なぜ自分はいままでこんな女性の基本的な知識すら持っていなかったのか……律子さんはまずそのことに落胆。そして人が妊娠するのはそれほど簡単ではないことをようやく自覚したそうです。

温活、コーヒーの代わりに生姜入り紅茶……生理が来ると目の前が真っ暗になる妊活の日々

律子さんがまず行なったのは、妊娠しやすいタイミングに性行為を行なう「タイミング法」。基礎体温を測って妊娠の可能性のある「低温期」と、妊娠しやすい「排卵期」をアプリで算出する生活が始まりました。

「自分の生理周期を把握できると、妊娠のチャンスって想像以上に少ないことが分かります。低温期に性行為をすると妊娠する可能性もありますが、うちは夫が激務だし、毎日やるのは正直無理。そうなると一番妊娠しやすい排卵日前後の性行為が不可欠です。そこを逃したらもう来月までチャンスがないから、夫には毎月『この3日間はお願いね』と念を押す。それなのに夫が貴重な排卵日に飲みに行ったりしたら……もう修羅場ですよ(笑)。しかも妊活にありがちですが、そんなふうにしてやらなきゃいけないセックスって、本当に苦痛でしかなくて。うちはもともとセックスレスではありませんでしたが、すっかり楽しめなくなってしまいました」

気が付くと排卵日前後以外の夫婦の性行為はゼロに。毎月排卵日前後にやることをやり、排卵日が過ぎて基礎体温が上がると、祈るような気持ちで高温期を過ごします。

「高温期がしばらく続いてそのまま継続すると、妊娠の可能性が極めて高くなります。でも突然ガクンと落ちると、翌日にはきっちり生理がくる。毎月毎月その繰り返しです。下がった基礎体温をみると、目の前が真っ暗になります」

さらに律子さんはタイミング法に加えて、体を冷やさない生活をする「温活」も実践。毎晩5本指の靴下を4枚重ねて履いたまま眠り、夏でも普段から厚手の靴下を欠かしません。それに加えて「子宮を冷やす原因となるらしい」と、紙の生理ナプキンをやめて布ナプキンを導入。毎日飲むのは身体を温める効果が期待できる「生姜入り紅茶」で、大好きなコーヒーは「体を冷やす」と、ほとんど飲まなくなりました。

「『妊娠できないのは子宮が冷えているから』とよく言われているので、とりあえずできることは実践しています。“冷えは万病のもと”と言いますしね」

冬場は背中と子宮付近にカイロを2枚貼るという律子さん。一時期は夏場も貼っていたそうだが、暑くてさすがにやめたそうです。

しかしそれでも妊娠の兆候はなし。妊活をはじめてから半年後、律子さんは婦人科を受診することを決意します 〜その2〜に続きます。