新聞の再販制度と特殊指定はホントウに必要か?
2005年11月07日12時31分 / 提供:PJ
日本国内の新聞価格は、自由な価格競争を意図的に阻害する再販売価格維持(再販)制度に守られていることをご存じだろうか。現在国内では、再販制度に守られ、定価で売られている品目は、新聞・雑誌や、レコード、音楽用CDなど6品目だけだ。ただ、音楽用CDなどは逆輸入版が出回るなど、事実上は自由価格競争の波にさらされている。なぜ、新聞に限って定価販売が必要なのだろうか。
公正取引委員会は2日に開いた記者会見で、新聞など特定の5分野に適用している、定価販売を許可する独占禁止法(不公正な取引方法)の「特殊指定」について見直しを始める方針を示した。時代錯誤的な側面があることが一因という。特殊指定とは、差別価格販売や定価割引、新聞社が実際の販売部数以上を販売店に押し付ける、いわゆる「押し紙」を禁止することである。この「新聞業の特殊指定」は、「新聞の再販制度」と表裏一体となり、ジャーナリズムの自由競争を阻み、新聞業界の談合体質を助長しているとの指摘がある。
公取委の方針に対して新聞業界の業界団体、日本新聞協会は即座に抗議声明を出した。要約すれば、新聞の特殊指定は、割引販売禁止などで宅配制度を守るものであり、その撤廃は再販制度を骨抜きにし、販売店の破たんが相次ぎ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かうのだという。そして、「多くの国民は毎日決められた時間に新聞が届けられること、誰もがどこでも同じ価格で、容易に入手できることを望んでいる」と主張している。公取委の記者会見の翌日、新聞各社は協会と同様の論調の記事を掲載した。
はたして、新聞業界の特殊指定が無くなれば、再販制度が崩壊し、宅配制度も瓦解するのであろうか。その財務的な構造を知りたい。新聞の再販制度と特殊指定について今後、さまざまな点から疑問を呈してみたい。今回まずは、新聞業界の全体の経営・財務状況について。国民に向かって、新聞社や販売店の経営体力によって宅配制度が崩壊すると主張するならば、新聞社はその実情について、国民に向かっての説明責任がある。
再販制度と特殊指定の撤廃に真っ向から反対する渡辺恒雄氏率いる読売新聞社の財務諸表公表の有無を、同社のホームページで調べてみた。無い。読売新聞グループ本社が実質影響力を持つ上場企業、日本テレビ放送網(日テレ)の財務情報などからも読売新聞の財務的な姿は見えてこない。朝日新聞社、毎日新聞社、日本経済新聞社、産経新聞社のホームページを見てもしかり。そもそも、公器を自認し、官庁や他の業界に情報公開を迫る新聞社ならば、自らの財務諸表の情報公開などは当然ではないのだろうか。国民は新聞社が独立して権力を監視できるかどうかの財務基盤を知りたいのだ。
次に、なぜ新聞価格の自由競争を促すことが、宅配制度の崩壊と直結するのだろうか、という疑問だ。販売店が自ら自由に価格を設定できないことは自由主義・民主主義の原理に反するばかりか、販売店同士の競争を阻害することで、国民に不利益を与えていないのだろうか。そもそも、新聞販売は厳重なテリトリー制が敷かれており、販売店間の実質的な競争は無いといわれる。現場では、洗剤を配布したりするなどの拡販競争といった「非価格競争」が実在する。この問題の本質は「価格競争」の問題ではなく、横並び記事が氾濫する「新聞紙面の質」の問題ではなかろうか。
日米の新聞価格を比較すると、日本の新聞価格が高いことが知られている。米国の地方紙は25セント(約30円)からあり、一般的には50セント(約60円)から1ドル(約120円)だ。長期契約による割引制度もあれば、大都市部では宅配制度も発達している。こんな価格設定でも黒字を出している新聞社は多い。その主因は固定費の低さだ。つまり、記者の人件費と取材費の無駄遣いをなくしているということである。新聞価格の自由競争の中で、宅配制度も共存している。なぜ、日本国内でそれができないのだろう。
最後に、なぜ新聞だけが独禁法に守られる特別な商品なのだろうか。極度に新鮮さが求められる情報を伝達するメディアが新聞だけしかなかった時代ならば、うなずける。だが、テレビが一般化し、インターネットが出現した現在、紙媒体のその役目はとっくに終わっている。はたしてホントウに「多くの国民は毎日決められた時間に新聞が届けられること、誰もがどこでも同じ価格で、容易に入手できることを望んでいる」のだろうか。【了】
公正取引委員会は2日に開いた記者会見で、新聞など特定の5分野に適用している、定価販売を許可する独占禁止法(不公正な取引方法)の「特殊指定」について見直しを始める方針を示した。時代錯誤的な側面があることが一因という。特殊指定とは、差別価格販売や定価割引、新聞社が実際の販売部数以上を販売店に押し付ける、いわゆる「押し紙」を禁止することである。この「新聞業の特殊指定」は、「新聞の再販制度」と表裏一体となり、ジャーナリズムの自由競争を阻み、新聞業界の談合体質を助長しているとの指摘がある。
公取委の方針に対して新聞業界の業界団体、日本新聞協会は即座に抗議声明を出した。要約すれば、新聞の特殊指定は、割引販売禁止などで宅配制度を守るものであり、その撤廃は再販制度を骨抜きにし、販売店の破たんが相次ぎ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かうのだという。そして、「多くの国民は毎日決められた時間に新聞が届けられること、誰もがどこでも同じ価格で、容易に入手できることを望んでいる」と主張している。公取委の記者会見の翌日、新聞各社は協会と同様の論調の記事を掲載した。
はたして、新聞業界の特殊指定が無くなれば、再販制度が崩壊し、宅配制度も瓦解するのであろうか。その財務的な構造を知りたい。新聞の再販制度と特殊指定について今後、さまざまな点から疑問を呈してみたい。今回まずは、新聞業界の全体の経営・財務状況について。国民に向かって、新聞社や販売店の経営体力によって宅配制度が崩壊すると主張するならば、新聞社はその実情について、国民に向かっての説明責任がある。
再販制度と特殊指定の撤廃に真っ向から反対する渡辺恒雄氏率いる読売新聞社の財務諸表公表の有無を、同社のホームページで調べてみた。無い。読売新聞グループ本社が実質影響力を持つ上場企業、日本テレビ放送網(日テレ)の財務情報などからも読売新聞の財務的な姿は見えてこない。朝日新聞社、毎日新聞社、日本経済新聞社、産経新聞社のホームページを見てもしかり。そもそも、公器を自認し、官庁や他の業界に情報公開を迫る新聞社ならば、自らの財務諸表の情報公開などは当然ではないのだろうか。国民は新聞社が独立して権力を監視できるかどうかの財務基盤を知りたいのだ。
次に、なぜ新聞価格の自由競争を促すことが、宅配制度の崩壊と直結するのだろうか、という疑問だ。販売店が自ら自由に価格を設定できないことは自由主義・民主主義の原理に反するばかりか、販売店同士の競争を阻害することで、国民に不利益を与えていないのだろうか。そもそも、新聞販売は厳重なテリトリー制が敷かれており、販売店間の実質的な競争は無いといわれる。現場では、洗剤を配布したりするなどの拡販競争といった「非価格競争」が実在する。この問題の本質は「価格競争」の問題ではなく、横並び記事が氾濫する「新聞紙面の質」の問題ではなかろうか。
日米の新聞価格を比較すると、日本の新聞価格が高いことが知られている。米国の地方紙は25セント(約30円)からあり、一般的には50セント(約60円)から1ドル(約120円)だ。長期契約による割引制度もあれば、大都市部では宅配制度も発達している。こんな価格設定でも黒字を出している新聞社は多い。その主因は固定費の低さだ。つまり、記者の人件費と取材費の無駄遣いをなくしているということである。新聞価格の自由競争の中で、宅配制度も共存している。なぜ、日本国内でそれができないのだろう。
最後に、なぜ新聞だけが独禁法に守られる特別な商品なのだろうか。極度に新鮮さが求められる情報を伝達するメディアが新聞だけしかなかった時代ならば、うなずける。だが、テレビが一般化し、インターネットが出現した現在、紙媒体のその役目はとっくに終わっている。はたしてホントウに「多くの国民は毎日決められた時間に新聞が届けられること、誰もがどこでも同じ価格で、容易に入手できることを望んでいる」のだろうか。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康
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