5月ももう終盤、そろそろ梅雨の季節が始まろうとしています。
雨はとても大切ですが、降雨が続くと出かけるのも億劫になりがちなので、本格的な入梅前に正しい使い方を含めた「てるてる坊主」の“あれこれ”をご紹介しましょう。
「てるてる坊主」といえば、幼いころにティッシュペーパーを丸めて作った記憶をもつ方も多いはず。でも見た目はかわいいけれど、てるてる坊主には天気を変えてしまうパワーが秘められていることになります。てるてる坊主をつるすことはある意味、ものすごい儀式なのかもしれません。

江戸時代から伝わる「てるてる坊主」。入梅雨前に「てるてる坊主」のあれこれをご紹介!


晴れを乞うための紙人形・てるてる坊主

「てるてる坊主」とは晴天を乞うための人形で、紙で作った簡単な人形を軒先につるすと、その願いが天に通じて雨がやむといわれています。もともとは中国から伝わったおまじないが日本風にアレンジされて、今日に至っているようです。
私たちがイメージする「てるてる坊主」は真っ白ですが、反対に降雨を願う時には逆さにつるしたり、黒い布で作る、とも。根拠は定かではありませんが、どちらも呪術的であり神秘的。さらに降雨を願う場合は、「てるてる坊主」ではなく「ふれふれ坊主」というそうです。

晴れを乞う儀式がルーツのてるてる坊主。そう考えるとなんだか神秘的です……


「てるてる坊主」の目、鼻、口はどのタイミングで描けばよい?

江戸時代の国学者・喜多村節信が著した『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』。この著作物は江戸の風俗や習慣などを記した随筆なのですが、その中に「てるてる坊主」についての記述があります。このことから江戸時代にはも「てるてる坊主」をつるすのおまじないが存在していたことがわかります。
面白い点は、江戸時代の「てるてる坊主」には、目、鼻、口がないこと。今と違って黒のマジックや輪ゴムはなかったため作り方もかなり違ったはずですが、顕著な違いは次の段取りです。
●まず「のっぺらぼう」の「てるてる坊主」を軒先につるす(ここは現在と同じ)
●めでたく雨が降らなかった暁には「てるてる坊主」に目・鼻・口をお礼に描く
つまり、現在の「てるてる坊主」を作る時は最初から目・鼻・口描いてつるす……という流れが一般的ですが、江戸時代は最初に顔を描くことなく、成果をあげたら顔を描いてあげる……という成果報酬型(!)だったよう。おそらく顔は墨などを使って描いていたのでしょう。
●そして最後に、めでたく目・鼻・口が描かれた「てるてる坊主」は、成果へのお礼と供養を兼ねて、お酒をかけて川に流したともいわれています。

晴れたら顔を描いてもらえる。江戸時代のてるてる坊主は成果報酬型だった!?


「てるてる坊主」は女性だった?中国に伝わる掃晴娘伝説

「てるてる坊主」の起源は、中国の掃晴娘(そうせいじょう/サオチンニャン)といわれています。
【ふるさとを襲った豪雨と洪水をとめた掃晴娘伝説】
中国のとある村が激しい豪雨と洪水に見舞われた際、少女・掃晴娘が雨の神(龍神)に雨がやむよう祈ったところ、天上から「望みを叶えてほしければ、雨の神の妃になるか?」という声が……。
掃晴娘は「はい。水害をとめてくださるのであれば、私は故郷と家族を捨てて天に昇ります」と答えたところ、降り続いていた雨は無事やんだのです。さらに、村人たちがホッと胸をなでおろしたのもつかの間、掃晴娘の姿はもうどこにもなく、目の前には晴れ渡る空だけが広がっていた……。
この「掃晴娘伝説」は、箒(ほうき)を持って空を掃く(雨雲を掃き清める)晴れ娘で、切り絵や紙人形などのさまざまなカタチで、今も中国で継承されているようです。実際に大雨が続いた時は、掃晴娘伝説の「雲掃人形」を作って軒下に吊るす地域もあるようですが、ちなみに、比較的雨が多く、大陸と向き合う日本の山陰地方にのみ「掃晴娘伝説」が伝来している天も興味深い事実のひとつでしょう。
先ほど、喜多村節信の『嬉遊笑覧』に「てるてる坊主」の記述があったことをご紹介しましたが、江戸の儒学者・榊原篁洲(さかきばらこうしゅう)が記した『榊巷談苑(しんこうだんえん)』にも、掃晴娘の記述があり、そこに「てるてる坊主」と似ていることが指摘されています。

箒で雨雲を掃いて晴れにする。イメージするとこんな感じ?


てるてる坊主をつるすのにふさわしいのは、どこ?

さて、「てるてる坊主」というと軒下につるすイメージがありますが(最近ではマンションが多いので軒下がないことも多いのですが)、実はもっとふさわしい木があるそうです。それは南天の木。
のど飴で有名な南天は、その読み方が「なんてん」= すなわち「難を転ずる」という語呂合わせから、縁起のよい木としても知られています。
火除けのまじないとして庭や玄関先に植えられたり、鬼門に植えるとよいともいわれ、少し前までは多くの家で植えられていたなじみの深い木です。また、南天の葉には殺菌効果もあるようで、ちょうど梅雨の時季に、体調を崩さず元気に過ごせることへの祈りの意味も込められて植樹しているケースが多いようです。こうした点から、いろいろな意味で「てるてる坊主」をつるすのに適した木といえそうです。
晴れたら顔を描いてあげる点は、願いが叶ったら目を入れるだるまさんに似ていますし、最後は川に流すあたりは雛人形の流し雛を連想させます。庶民的すぎて気がつきませんでしたが、「てるてる坊主」ってすごい人形なのかもしれません。今度雨が降った日には、久しぶりに作ってみようかな?と思いましたので、みなさんもお出かけ前にtenki.jpで天候確認時、降水確率が高かったら、「てるてる坊主」を作ってみては。
── 日本では雨乞いをはじめ、晴天を乞う儀式をお坊さんなどが行っていたことから「てるてる坊主」の名になった説もありますが、そういえば、だるまさんも雛人形も工芸品。プロの職人さんが手がけた芸術的な「てるてる坊主」って存在するのでしょうか? 今度、調べてみますね。

初夏には白い花が咲く南天。実はてるてる坊主をつるすのにふさわしい?