漫画「ありがとう。」の一場面=まめちー(@chipi3333)さん提供

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 一人の女性の出産を描いた漫画「ありがとう。」がSNS上で話題となっています。出産3日目のお祝い膳として、テーブルには豪華な料理が並んでいますが、女性は「ごめんね」「元気に産んであげられなくてごめんね…」と涙を流して…という場面から始まります。SNS上では「泣けた」「素敵な話」「胸が温かくなった」などの声が上がっています。

同じような境遇の女性にエール

 この漫画を描いたのは、まめちーさん(ペンネーム)。子育てをしながら漫画を描いています。子どもの頃から絵と言葉で自分の気持ちを表現するのが好きだったそうです。

Q.この漫画を描いた理由は。

まめちーさん「最近、妊娠報告を受けることや、知り合いで出産された方が多かったのがきっかけです。ふと、自分が初めて出産した時のことを思い出し、自分の経験を元に漫画を描いてみようと考えました。

私は150センチに満たない体で4000グラムの赤ちゃんを産みました。陣痛は来たものの、お産が止まってしまい、帝王切開による出産でした。出産後、子どもがNICUに入ったので親子離れ離れの状態でした。

私は経験していませんが、『帝王切開はお産ではない』『母子同室やカンガルーケアができなかったことでその後の母子の絆(きずな)が薄くなってしまう』など、心無いことを言われるという話を聞くことがあります。私と同じようなママたちに、『こんな出産だったけど、今とても幸せ。みんな大丈夫』とエールを送りたかったのも理由の一つです」

Q.お子さんに何があったのでしょうか。

まめちーさん「詳細は言えませんが、生まれたばかりの子どもに少し問題がありました。母子同室が当たり前である産科病棟にもかかわらず、抱っこできるはずの産んだ子どもが同じ部屋にいませんでした。赤ちゃんの泣き声で起きるのではなく、自分でセットした3時間おきのアラームで起き、痛む傷を抑えながら搾乳したり、面会のためにNICUへ歩いていったりする日々でした。

赤ちゃんに触れることはできても、抱っこはできません。医療機器の中で顔もよく見えません。無機質な病室で一人ポツンとした状態で、『ご出産おめでとうございます』と書かれた、いかにもおめでたいごちそうを食べる。『NICUからすぐに退院できる』という話はされていましたが、当時はいろいろ考えて涙が止まりませんでした」

Q.読者からはどのような声が寄せられていますか。

まめちーさん「知り合いだけでなく、見ず知らずの人からもコメントを頂きました。ほんわか温かな一体感が感じられて、とてもうれしかったです。子育て中のママからは、『感動しました』『お産はみんなドラマだね』『私も育児頑張ります』などの温かな言葉を、若い人からは『母の愛って大きいね』などの感想をもらいました。日ごろ『育児は育自』とつぶやきながら格闘している狭量な母のつもりでしたが、『私はこれでも全力で子どもを愛しているのか』と、ハッとしたこともありました」

Q.今後の目標は。

まめちーさん「子育て中ですので、子どもや家族と過ごしていて面白かったことや誰かと共有したいことを発信していけたらと考えています。漫画ではありませんが、ハンドクラフトが好きなので、ミニチュア制作やワックスモデリングによるアクセサリー作りに挑戦してみたいです」